GCMグロブナーはプライベート・クレジットの各セクターについて、様々な貸出形態やアプローチ手法を駆使しながら柔軟かつ機動的な投資を実践している。日本法人GCMインベストメンツの駒田智彦氏は2025年9月26日に東京都内で開催されたJ-MONEYカンファレンス(主催:J-MONEY)で、プライベート・クレジット市場の近況や魅力、注意点を解説した。そのサマリーを紹介する。

投資セクターを3つに大別

駒田 智彦氏
GCMインベストメンツ
代表取締役社長
駒田 智彦

GCMグロブナーのオルタナティブ資産運用において、残高が最も大きいのはプライベート・エクイティ戦略で、2番目に大きいのはヘッジファンド戦略である。クレジット投資については元来、流動性の低いものはプライベート・エクイティ戦略として、高いものはヘッジファンド戦略として、それぞれ取り組むケースが多かった。

現在では両戦略を統一した形のクレジット運用チームを構築し、低流動性から高流動性まで一貫してカバーする体制を整えている。250以上のクレジット運用者とリレーションを築き、年間1000件以上の投資案件をレビューしており、クレジットの運用資産残高は161億ドルにのぼる。クレジット投資のプラットフォームとしては世界でもトップクラスだ。

我々はプライベート・クレジットの投資セクターを3つに大別している(図表)。1つは、企業の信用力に依拠する「プライベート・コーポレート・クレジット」。2つ目はプライベート・コーポレート・クレジットの一部ではあるが、経営破綻しているなど特殊な条件下で投資を実行する「スペシャル・シチュエーションズ」。3つ目が企業の信用力に依拠せず、資産の価値に着目する「資産担保型クレジット」である。

■プライベート・クレジット投資における3つのセクター

■プライベート・クレジット投資における3つのセクター

プライベート・コーポレート・クレジットではここ数年、ダイレクト・レンディングの存在感が大きくなり、一部ではバブルを危惧する声も聞かれるが、我々はそうは考えていない。企業向けの直接融資はもともと銀行が中心的な役割を担っていたが、規制などの関係上、縮小を余儀なくされた。それに代わり台頭してきたのがダイレクト・レンディングであり、主たるプレイヤーが銀行からファンドへ変わったというのが我々の認識だ。

もちろん注意すべき点はある。米国のデフォルト発生率は、コロナ禍の収束に伴って減少傾向が続いていたが、ここにきて再び高まってきた。デフォルトの半数以上は「ライアビリティ・マネジメント・エクササイズ(LMEs)」によるものだ。法的な手続きを経ずに、借入人と貸出人の相対交渉を通じて返済期限を延ばすわけだが、その延命期間中に企業が再生できなかった場合には、デフォルトがさらに増える可能性がある。

プライベート・コーポレート・クレジットでは、ダイレクト・レンディングに加えて「キャピタル・ソリューション」にも注目している。これはクレジットファンドのマネジャーが借入人と相対で交渉し、企業の信用度に見合った貸出を行うもの。例えば昨今、LBOローンなどでは借入人に対する制限条項を緩和した「コベナンツ・ライト」と呼ばれる案件が増加しているが、キャピタル・ソリューションでは貸出人の債権保全を十分に効かせた形でファイナンスを実行できる。

多様な投資機会の使い分けが重要に

スペシャル・シチュエーションズでは「ディストレスト債」に最も多く投資している。ディストレスト債とは、借入過多などの理由により、債券価格が簿価から20%以上のディスカウントで取引されているものを指す。それを購入した後に企業の再生を果たし、適正な価格で売却するわけだ。中には60~80%のディスカウントで取引されるケースもあり、ディスカウント差益だけでも大きなリターンを期待できる。さらには債権者集会などの公的な手続きを通じて、債券を株式に転換することにより、株式のキャピタルゲインも期待できることになる。

資産担保型クレジットでは、たとえ借入企業が破綻しても、その企業が保有する資産の担保を処分することでリターン獲得が可能になる。特に建物などの償却資産には、返済スケジュールが設定されることが多い。すなわちEXIT(資金回収)まで待たなくても、運用期間中に担保返済を通じて分配金に相当するリターンが得られるわけで、その点もメリットと言える。

担保としては住宅ローンや商業用不動産が主流だが、航空機ファイナンスや船舶ファイナンスといった流動性の低いもの、さらには棚卸資産や売掛債権、特許などのロイヤリティを担保に取るケースもある。そのため、例えば鑑定会社の出身者が棚卸資産の価値に着目したり、中古エンジン販売会社の出身者が老朽化した航空機の部品の転売価値に着目するなど、様々なバックグラウンドを持つマネジャーが登場してきている。

プライベート・クレジットの市場環境には不透明さが残る。そのため、今後はダイレクト・レンディングやキャピタル・ソリューション、ディストレスト債、資産担保型クレジットなどを機動的に使い分けることが重要になってくる。どのような貸出形態にも対応できるオポチュニスティック(機会主義的)な投資能力を有したマネジャーを、運用ポートフォリオに加えておくと安心である。

セカンダリー投資、共同投資の活用が有効

プライベート・クレジットの各セクターについて、我々は「プライマリー投資」「セカンダリー投資」「共同投資」という多様なアプローチを通じて適宜、柔軟な投資を実践している。2024年にレビューしたプライマリー・ファンドは400件以上にのぼる。小規模あるいは新興のマネジャーについては、当社の規模とスケールを活かして優遇条件の獲得も目指している。

プライベート・クレジットのセカンダリー取引規模は、過去5年間で年率46%の高成長を遂げている。ただし、プライマリー・ファンドの運用残高から見れば0.5%にすぎない。プライベート・エクイティではプライマリー・ファンド運用残高の4%超がセカンダリーであることを考えると、この市場にはまだ大きな成長余地が期待できる。セカンダリー投資のメリットの1つに「Jカーブ効果の軽減」があるが、クレジットは運用期間中に金利収入が得られるため、そもそもJカーブが短い。投資効率的な観点からは非常に有効なアプローチであると考えられる。

我々は4年以上前からプライベート・クレジットの共同投資に取り組んでおり、発掘した投資アイデアは1050件以上、投資済み金額は35億ドルに達している。共同投資のメリットは、相対的にコストが低い点だ。通常のプライマリー・ファンドでは運用固定報酬が1.0%~1.5%で、成功報酬が15%~20%というのが一般的な水準だが、過去の実績では我々の手掛ける共同投資では運用固定報酬が1%以下で、成功報酬が10%程度となるケースが多い。

その結果、同じ案件に投資する場合でも、当社を通じて共同投資を行うと、プライマリー・ファンドより概ね200bps(ベーシスポイント)程度ほどネットリターン向上が期待できる。運用ポートフォリオの一部に共同投資も組み込むことを、機関投資家の皆様にはぜひご検討いただきたい。

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