ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント マクロ環境の不確実性が高まるなか、さらに輝きを増す金(ゴールド)の魅力
金価格高騰を牽引した投資需要

ゴールド・ストラテジスト
アーロン・チャン氏
チャン 2024年末時点で、金の地上在庫総量は公式競技用プール4.5杯分程度、確認されている埋蔵量は同1.1杯分程度と言われている。供給量が限られているため、法定通貨のように無限に増える可能性がなく、そうした希少性が金の価値を長期的に支える要因となっている。
金の需要を見ると、過去10年間の平均値では「宝飾品」が49%、電子チップなどの「工業品」が7%を占めている。これら2つは世界の景気動向に左右されやすい需要分野である。一方、景気やマーケットと逆の動きする傾向があり、安全資産としての役割を果たす「投資需要」が29%、また、あまり景気に左右されない傾向があり、外貨準備のための構造的な保有としての役割をもつ「中央銀行」が15%を占めている。
森田 今チャンさんからお話があったように、需要すなわち購入目的が多様な点が金の大きな特徴だ。例えば宝飾品需要の半分を占めるインドおよび中国では、宗教用と婚礼用が金の主な購入目的である。宗教行事は年間スケジュールが決まっているし、婚礼も年間を通して行われる。その意味では、金の需要が経済指標に左右されない。株式や債券などの主要資産は、経済指標の影響を受けて売買されるが、金は各需要家が必要とするタイミングで購入が発生するため、主要資産とは値動きの相関が低いという特性がある。
金の国際価格は2年前と比べて95%、コロナ禍前の2019年と比べて140%上昇している。円ベースの国内価格も2019年と比べて230%上昇した(いずれも2025年9月25日時点)。こうした金価格の高騰を牽引したのは、投資需要である。最も大きく増えたのが中央銀行による金投資で、過去3年連続して1000トン超の純購入となっている。2024年は金額ベースでも過去最高を記録した。主に個人が投資する「地金・コイン」も伸びており、2024年は数量ベース・金額ベースともに過去最高を更新している。
中央銀行が金の保有意義を再認識

顧問
森田 隆大氏
森田 金の投資需要が拡大した背景には、マクロな政治・経済環境の不確実性がある。地政学リスクやインフレ懸念の高まり、グローバルな国家債務急増への警戒感、さらには2025年に入ってトランプ関税の影響も加わった。中央銀行が金の純購入に転じたのは、リーマン・ショックやユーロ危機などを通じて主要通貨の信認が低下した2010年からだが、ここ数年はマクロ環境の不確実性が増大したことで、金保有に対するいっそうのインセンティブが働いている。
いくつかの中央銀行が公表したコメントを要約すると、「過去5~6年にわたる不確実性の高い経済環境のなか、金を保有する意義を再認識し、外貨準備の安全性・安定性を高めるために金購入を増やした」ということになる。具体的には分散効果やインフレヘッジ効果、非常時におけるパフォーマンスの良さなどが金保有の意義として挙げられている。
金価格に及ぼす影響が大きいため、当然のことながら、中央銀行の今後の動向は気になるところである。当社では毎年、中央銀行を対象にアンケート調査を実施している。2025年の調査では「今後12カ月間で外貨準備における金の比率は増えるか」という質問に、95%が「増える」と回答した。
「今後5年間で外貨準備における各準備通貨の割合はどう変わるか」という質問に対しては、「ドルを減らす」が73%、「金を増やす」が76%となっている。すなわち短期的にも中期的にも、中央銀行がドルからの脱却を図り、金へのシフトを進めていく傾向が強まっているわけである。
地金・コインの需要が伸びた最大の理由の一つはインフレヘッジだが、他に、為替ヘッジという観点も見逃せない。FRB(米連邦準備理事会)がテーパリングに向かった関係で、ここ数年は米国の金利が上昇してドルが強くなった。多くの国では自国通貨の価値が毀損したが、反対に自国通貨ベースの金価格は上昇した。
このような体験を経て、多くの個人は金が「価値の保存」という役割を果たすことを実感し、金購入を大量に増やしたのだ。現在もインフレ率上昇や自国通貨安への懸念は解消されていないため、地金・コインの需要は堅調に推移している。
長期的なリターン水準は株式に近い
チャン 金に投資する意義は大きく分けて4つある。1つは、ポートフォリオの分散効果だ。過去30年間について、金と主要な株価指数および債券との相関を見ると、いずれにおいても相関係数は0に近く、伝統的な安全資産である米国債との相関も0.3未満となっている。こうした主要資産とは異なる金の値動きが、ポートフォリオ全体のリスク低減をもたらす。
2つ目は、危機時の備えである。金は投資家のリスク回避が進む局面で買われる傾向が強い。例えば2008年の世界金融危機時や2020年のコロナ・ショック時など、過去に米国S&P500種指数が15%以上の大幅下落を記録した際には、金価格は上昇するか、もしくはS&P500種指数よりも下落幅が小さくなっている。すなわち金には、ポートフォリオの一時的な最大損失を小さく抑える効果が期待できるわけだ。
3つ目は、長期的なリターンである。1971年に金の取引が自由化されて以降、ドル建て金価格の年平均成長率は約9.1%、円建て金価格の年平均成長率は約7.0%と*1、株式に近いパフォーマンスを示している。金は「守りの資産」というイメージが強いかもしれないが、実は長期的に良好なリターンと、市場の混乱期における資産分散効果の両方を期待できる、非常にユニークな資産と言える。
*1 出所:ブルームバーグ・ファイナンス L.P.、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント。データ期間:1971年8月13日~2025年10月31日。

過去のパフォーマンスは、将来のパフォーマンスの信頼できる指標ではありません。
4つ目が、インフレへの備えである。金は供給が限られているうえに、世界中で実物資産としての価値を認められているため、法定通貨に比べて価値の保存性が高い。1971年以降50年以上にわたって米国の物価上昇局面を見てみると、いずれにおいても金価格はインフレ率を上回って上昇していたことが確認できる。
「低インフレ(2%未満)」や「穏やかなインフレ(2~5%)」の局面では、金の年率平均リターンは米国株より低いものの、前者が4.9%、後者が7.7%とインフレ率を上回っている。一方で「高インフレ(5%以上)」の局面では18.8%を記録しており、そのリターン水準はインフレ率のみならず、0.8%の米国株も大きく上回る。
なお、当社ではロンドン市場の金現物価格に連動する2種類の金ETFを運用している。「SPDRゴールド・シェア」は、20年以上の運用実績と約20兆6000億円の資産残高を誇る世界最大の金ETFだ*2。「SPDRゴールド・ミニシェアーズ」は、米国の金ETFのなかでは最も低い総所有コスト*3(経費率+ビッド・アスク・スプレッド)が特徴である。いずれも金投資の機動的な手段として、ご利用を検討いただきたい。
*2 出所:ブルームバーグ・ファイナンス L.P.、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント。2025年10月31日時点。1米ドル=153.99円で換算。
*3 GLDMの平均ビッドアスクスプレッドは0.016%で、総所有コストは0.116%(0.10%+0.016%)と、米国上場の金ETFの中で最も低水準です。出所:ブルームバーグ・ファイナンス L.P.、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント、比較期間:2025年1月1日~10月31日。
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