市場の不透明感が高まり、多様なリスクが意識される中、さらなる分散投資の拡張を探求する機関投資家のポートフォリオの新たな投資先として注目されるのが、ローワー・ミドル・ダイレクト・レンディング(DL)戦略と、アセットベース・ファイナンス領域の航空機投資戦略だ。前者は低レバレッジかつ高スプレッドで堅実な収益性を確保することが期待でき、後者は航空機担保付融資とリースを組み合わせた独自の複合戦略で元本保全と安定利回りを両立。従来のプライベート資産への投資をさらに拡張し、より幅広い分散効果が期待できる。

「ローワー・ミドルDL戦略」と 「航空機投資戦略」で分散投資を拡張|ミューズニッチ・ジャパン

破綻懸念が相次ぐもののDL市場は健全性を維持

玉田 隆氏
ミューズニッチ・アンド・カンパニー・ジャパン
マーケティング&クライアント・リレーションズ
クライアント・リレーション事業部長
玉田 隆

最近、米国クレジット市場でやや不安を感じさせるニュースが相次いでいる。2025年9月、自動車部品大手ファースト・ブランズが経営破綻し、サブプライム自動車ローン会社トライカラー・ホールディングスが連邦破産法第7章の適用を申請した。さらに10月には、米地方銀行のザイオンズ・バンコープやウエスタン・アライアンス・バンコープなどが商業ローンの貸倒引当金を積み増すなど、融資リスクへの備えを強化している。

ミューズニッチ・アンド・カンパニー・ジャパン 在日代表の林晃裕氏は、「このような動きがDL市場にも波及するのではないかと懸念する声もあるが、同市場のファンダメンタルズに明確な悪化の兆候は見られない」と語る。

ミューズニッチ社は、非上場企業や中堅企業に融資・出資を行う上場BDC(事業開発会社)に投資するファンド(日次流動性を有す)を日本の投資家に提供している。ポートフォリオ・マネージャーは、代表的な上場BDCの中で、日本でも馴染みのあるブラックストーン・セキュアード・レンディングやアレス・キャピタルなど約15社にヒアリングを実施した結果、90日以上利払いが止まっている「ノンアクルーアル銘柄」や、財務体質が悪化している中堅企業の増加の傾向は確認されなかったという。

「実際、米国・欧州ともに企業業績は概ね堅調で、DL市場の投資先企業も健全な財務体質を維持している。ニュースで耳にする破綻案件は、あくまでも個別事由の問題であり、DL市場全体に波及するシステミック・リスクとしては捉えていない」(同社 マーケティング&クライアント・リレーションズ クライアント・リレーション事業部長の玉田隆氏)

コア/アッパー・ミドルDL市場はスプレッドが縮小傾向

もっとも、投資マネーの集中が進むコア/アッパー・ミドルDL市場では、過熱感を不安視する動きがある。図表1の通り、コア/アッパー・ミドルDL市場のレバレッジ水準はEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)の5~6倍前後と過去から大きな変化はないものの、スプレッドは500bps前後まで縮小している。

■図表1 ローワー・ミドル市場とコア/アッパー・ミドル市場の比較(欧州)
図表1 ローワー・ミドル市場とコア/アッパー・ミドル市場の比較(欧州)
出所:ミューズニッチ社。ミューズニッチ社の見解及び意見は2025年6月30日時点のものであり、説明のみを目的としています。入手可能な最新の情報に基づきます。
林 晃裕氏
ミューズニッチ・アンド・カンパニー・ジャパン在日代表
林 晃裕

林氏は、「2022~2023年頃のFRB(米連邦準備理事会)やECB(欧州中央銀行)による利上げの影響などから、資金調達コストの高まりを受け、プライベート・エクイティ主導のM&A(合併・買収)の活動量が低下した。中でもコア/アッパー・ミドルDL市場はDLマネージャー間の競争が激しく、投資案件の奪い合いになり、スプレッドのタイト化が進んでいった」と説明する。

また、コア/アッパー・ミドルDL市場ではローンの利息の支払いが満期まで繰り延べられ元本に加算されていく「ペイメント・イン・カインド(PIK)」融資契約が増加し、加えて、コベナンツ・ライトやコベナンツ・ルースといった借り手優位の融資契約が一般化するなど、実質的にバンクローンと大差ない条件で資金が供給されるケースも目立つようになってきた。

世界金融危機に伴う金融規制強化を受け拡大したDL市場は、同危機以降、大規模な金融イベントがなく、新型コロナウイルス禍でも影響は限定的だった。そのため、日本の機関投資家の間では特にコア/アッパー・ミドルDL市場を主戦場とするDLファンドは、比較的安心できる投資領域という認識が定着し、オルタナティブ投資枠の中核として継続投資する動きが見られる。

林氏は、「現在のように比較的安定した経済環境下では、レバレッジ水準の高さやコベナンツ緩和の進行といった潜在的なリスクは表面化しにくい。しかし、景気後退局面などを通じ、業績不振企業の再建交渉が長期化し、債務回収や分配の遅れを通じて機関投資家のリスク調整後リターンを押し下げる要因となり得るリスクを有している」と注意を促す。

「高スプレッド×低レバレッジ」なローワー・ミドル企業向け融資

一方で、老舗グローバル・クレジット・ファームであるミューズニッチ社は、コア/アッパー・ミドルDL市場ではなくローワー・ミドルDL市場を投資領域としている。同社は1988年にニューヨークで創業して以来、クレジット投資に特化してきた。ハイイールド債からスタートし、現在はパブリック・クレジットとDLを含むプライベート・アセット領域において、幅広い投資ソリューションをグローバルに提供している(図表2)。

■図表2 ミューズニッチ社のグローバル運用プラットフォーム
図表2 ミューズニッチ社のグローバル運用プラットフォーム
出所:ミューズニッチ社、運用残高及び従業員数は、ミューズニッチ社及びその子会社及び関連会社を含む2025年7月31日時点のデータに基づく。説明のみを目的として使用。上記目的が達成されるという保証はありません。リスク管理は、リスクをモニターし管理することを含みますが、リスクを下げる、あるいはリスクが無いことを暗示するものではありません。*投資期間中のプライベート・デット戦略について、これは投資家からの総グロス・コミットメント額を反映したものです。運用残高は一任運用残高(151百万ドル)と運用助言残高(AUA、555百万ドル)の両方を含みます。AUAは、ミューズニッチ社が選定や推奨を行う継続的な責任を有するものですが、一任権限を有するものではありません。資本拠出額は、アビエーション・ファイナンス・チームが完了した取引において、運用残高、運用助言残高、共同投資を含む。最初の取引は2020年9月21日。

2025年7月末時点の運用資産残高は約401億ドル(約5兆8960億円)。同社は欧州の生命保険会社向けにハイイールド債券運用からスタートしたが、安定的かつ長期的な資産の保全を重視する運用スタイルが根付く。この姿勢は同社の投資哲学である「キャピタル・プリザベーション(元本保全)」の思想にも繋がっている。

ローワー・ミドルDL市場のスプレッドは650~700bps(ベーシスポイント)台を維持しており、足元で500bps前後までタイト化しているコア/アッパー・ミドルDL市場と比べてリターンは相対的に魅力的だ。

一方で、ローワー・ミドル企業は事業規模が相対的に小規模ゆえに、リスクが高いのではないかと見られることがある。しかし、デフォルトを決定・けん引する要因として最も大きいのはレバレッジ水準であり、企業規模要因は実は小さい(図表3)。つまり、融資対象企業の規模の小ささにリスクがあるのではなく、借入比率が高くて経営の柔軟性が低い状態こそがリスクといえるだろう。ミューズニッチ社のローワー・ミドルDL戦略は、レバレッジ水準が足元3倍程度と財務の健全性の高い企業に特にフォーカスしている。

■図表3 ローンのデフォルト要因
図表3 ローンのデフォルト要因
2012年のムーディーズ・アナリティクスの調査によると、レバレッジ要因がローンのデフォルトに寄与する最大の要因であり、企業規模は最も小さい要因である。このムーディーズの調査は、2008年の金融危機を含む27年間(1994年~2021年)の大規模な債務者データのデフォルト履歴の詳細な定量的調査に基づいており、133,000社以上の個々の債務者を網羅し、規模別に9,000件以上のデフォルトが発生している出所:2025年3月31日時点のミューズニッチ社の見解及び意見。最新の情報に基づきます。

さらに林氏は、「市場金利が高止まりする中、レバレッジ水準以外に、ICR(インタレスト・カバレッジ・レシオ)の水準にも目を配っており、現在のポートフォリオは約4倍を確保している。これは、コア/アッパー・ミドルDL市場のICRの水準よりかなり高いのではないかと見ている。加えて、PIK案件は原則取り組まないことや、全投資案件にメンテナンス・コベナンツを設定するなど、元本保全のため厳格さを維持している」と話す。

同社は欧州のローワー・ミドルDL市場に特化した『ミューズニッチ汎欧州プライベート・デット戦略』を通じて中堅企業への直接融資を積み上げてきた。2013年の運用開始以降、80件超の案件に総額18億ユーロを融資し、このうち投資が実現した22案件の加重平均グロスIRR(内部収益率)は約10.0%に達する。この実績は、同社が重視する「リスクを抑えながらスプレッドを確保する」アプローチの有効性を示す裏付けといえる。

例えば、DL市場全体のネット・レバレッジ(対EBITDA)が5.1倍、1レバレッジ当たりのスプレッド(株式運用でいうところのシャープレシオ)が117bpsに対して、『ミューズニッチ汎欧州プライベート・デット戦略』のネット・レバレッジは2.8倍、1レバレッジ当たりのスプレッドは237bpsと、レバレッジは市場平均の約半分に抑制されている一方、リターンは市場平均の約2倍を確保している(2023年1月~2025年6月末)。堅実な財務体質を有すローワー・ミドル企業に投資する『ミューズニッチ汎欧州プライベート・デット戦略』は、ポートフォリオのさらなる分散度を高める選択肢として機関投資家の注目を集めている。

玉田氏は、「地域分散としての欧州という選択肢に加え、DL市場におけるセグメント分散が有効と考えている。大型株中心のポートフォリオに中小型株を加えるのと同じように、企業規模をコア/アッパー・ミドルだけでなくローワー・ミドルにも拡大することで、ポートフォリオ全体のリスクを抑えつつ、発行体分散を図ることが期待できる」との見方を示す。

ローワー・ミドルDL市場への関心は、運用業界の中で確実に高まっている。世界各国のPD(プライベート・デット)関係者が集う「PDI Tokyo Forum」でも、2023年まではコア/アッパー・ミドルDL市場のマネージャーが中心だったが、2024年以降はローワー・ミドルを手がけるプレーヤーの出席が目立っている。こうした動きを受け、機関投資家にとっても投資対象の幅が広がり、より実質的な分散投資を実現できる環境が整い始めている。

ちなみに、ミューズニッチ社では、日本の機関投資家の要請で、エバーグリーン戦略(円ヘッジ可)を設定している。

融資とリースを組み合わせた複合型航空機投資戦略

世界的にDL市場への資金流入が継続する一方、DL戦略の『次』を探求する機関投資家も少なくない。こうした投資家の動向に対し、ミューズニッチ社ではABF(アセットベース・ファイナンス)への分散も提唱している。中でも注目しているのは航空機投資戦略だ。

航空機投資戦略には主に二つの投資手法があり、一つは航空会社が航空機を購入する際に航空機を担保に融資する航空機担保付融資、もう一つは取得した航空機をリースする航空機リース戦略がある。いずれも航空機が裏付け資産であることに変わりはない。さらに、実物資産を裏付けとするクレジット投資で、特に航空機担保融資は、万一航空会社がデフォルトしても担保資産の換価によって元本のほぼ全額を回収することが期待できる。この特徴から、近年はコーポレート・クレジットからの分散投資の受け皿としてのニーズが高まっている。

航空機需要はコロナ禍で一時期落ち込んだものの、新興国の中間所得層の所得水準拡大に伴う旅客需要の急増などを背景に、世界の航空旅客数は年率3.6%で成長すると予想されている。

そのような中、「こうした旅客需要の増加に対応するために、約43,000機の新造機が必要とされているが、航空機大手のボーイングやエアバスは、コロナで生産を一時停止していた時期の受注分をいまだ納入しきれていない。供給不足は2030年まで続く見通しで、この需給ギャップが成長の源泉となり、航空機価値のサポート要因になると考えている(図表4、5)。当社は2020年にアビエーション運用チームを設立して以降、グローバルで投資を拡大している」と林氏は述べる。

■図表4 世界航空旅客成長率*
図表4 世界航空旅客成長率*
出所:ボーイング現行市場見通し(2024年12月31日時点)よりミューズニッチ社作成。
*各バブルは航空旅行市場を表し、バブルの大きさはRPK(有償旅客キロ)で測定された市場規模を示します。
■図表5 運航中の機材数(航空機数)
図表5 運航中の機材数(航空機数)
出所:エアバス グローバル市場予測(2025年6月時点)よりミューズニッチ社作成。

同社の航空機投資戦略の特徴は、他の運用会社が通常航空機リースなど単一のソリューションを提供しているのに対し、担保付融資(ストラクチャード・ファイナンス含む)とリースを組み合わせた複合的なソリューションを提供する点だ。リース戦略のみを提供するマネージャーが大半を占める中、融資戦略を提供できる運用会社は限られる。ミューズニッチ社は両者を併せ持ち、国内で投資家に紹介しているのは特筆すべき点だ。

同社が手掛けるストラクチャード・ファイナンスでは、航空機を担保とする優先担保付ローンを“A”トランシェと“B”トランシェに分け、銀行が“A”トランシェを引き受ける一方で、“B”トランシェを自社が運用するポートフォリオなどで保有するスキームになっている。これにより、“B”トランシェ部分では高いリスク調整後リターンの獲得が可能となる(図表6)。

■図表6 航空機シニアローン(優先担保付)の取引事例
図表6 航空機シニアローン(優先担保付)の取引事例
出所:ミューズニッチ社

同社が提供する『ミューズニッチ・アビエーション・オポチュニティーズ戦略』は、グロス10.5%(ネット9.0%)以上の現金利回り(年率)を目標としている。最新型航空機という強固な担保資産によってダウンサイド・プロテクションを確保しつつ、伝統的なアセットクラスとの低い相関性を活かして分散効果を高める。LTV(総資産に対する有利子負債の割合)の厳格な管理を通じて元本保全を重視し、安定的かつ魅力的なトータル・リターンの獲得を目指す。

同社のアビエーション運用チームは、英国および南アフリカを主要拠点とするインベステック銀行の航空機ファイナンス部門出身者によって立ち上げられた。玉田氏は、「豊富な融資経験を持つ専門人材による運用体制が整えられており、この専門性が評価され、業界大手のアポロ・グローバル・マネジメントやKKR社の融資残高規模に迫る水準にまで成長しており、オルタナティブ・レンディング市場の約20%を占めるトップクラスの貸し手の一社」という。

DLに代表されるプライベート・クレジット投資と航空機を担保とするアセットベース・ファイナンスの両軸で分散を図ることは、今後の金利動向や景気循環の変化にも強い耐性のあるポートフォリオを構築するうえで有効な手立てとなる。長期的な視野でリスクとリターンのバランスを追求する日本の機関投資家にとって、ミューズニッチ社のアプローチは新たな安定収益源として注目に値するだろう。

日本国内:現在、ミューズニッチ社の戦略及びサービスのすべてが日本で登録されているわけではありません。したがって、関係する日本政府及び規制当局により公布され、関連する時点で有効なすべての適用法令、規制及びガイドラインを遵守する結果となる場合を除き、日本国内または日本人のために直接的または間接的に、またはその利益のために、または再提供若しくは再販売することを目的として、ミューズニッチ社の戦略を提供または販売してはなりません。この目的のために、「日本人」とは、日本法に基づき組織された法人またはその他の事業体を含む、日本に居住するすべての者を意味します。
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