MFSインベストメント・マネジメント アクティブなグローバル債券投資に日本の機関投資家が見逃せない好機が到来―MFSのインスティテューショナル・ポートフォリオ・マネジャーに聞く―
2025年を通じて波乱続きだったグローバル債券市場。しかし一部のアクティブ債券マネジャーは、むしろボラティリティをチャンスに変えながら、堅実なトラックレコードを残してきた。そうしたマネジャーの一人であるMFSインベストメント・マネジメント(MFS)債券運用部門 インスティテューショナル・ポートフォリオ・マネジャーのオーウェン・マーフィン氏がインタビューに応じ、MFSの優位性の根源や今後の債券運用の着眼点などを明かした。
キャリーが重要な市場環境へ
2025年初のトランプ政権発足以降、MFSのグローバル債券運用において主なポジション変更はあったか。

債券運用部門
インスティテューショナル・ポートフォリオ・マネジャー
オーウェン・マーフィン氏
マーフィン 2025年は債券市場にとって波乱の多い年となったが、当社はトランプ氏が米大統領選で勝利して以降、米ドルのショートポジションに対する確信度を高めた。また、相互関税を発表した「解放の日」を受けて急激にスプレッドが拡大した際には、特にワイド化したハイイールド債や金融の劣後債などを積み増した。加えて、継続的な関税リスクと中央銀行の緩和政策により、欧州コア地域や韓国などの市場で利益を確定し、アクティブデュレーションのポジションを引き下げた。
主要国ではイールドカーブのスティープ化が進んだ。MFSのグローバル債券運用ではどのような金利ポジションを取っているか。
マーフィン イールドカーブのスティープ化は、長期的にインフレが定着するリスクの高まりにより正当化できるだろう。西側諸国の政府は現時点で財政赤字を削減する意欲をほとんど示しておらず、財政リスクが高まっている。そのため、長期の年限を避けて中期債を選好するようにしている。
ただし、英国のように30年国債利回りが1998年以来の水準に達しているなど、割安感のある市場も一部で見受けられる。また、オーストラリアのように財政リスクが低い国では、長期債の相対的な魅力が高まっている。ほかにも、米国をはじめとする各国で債券発行が徐々に長期債から離れつつあり、長期債への供給圧力が緩和される傾向にあることにも目を配る必要があるだろう。
スプレッドが縮小する中で、魅力的な投資機会として注目する先はどこか。
マーフィン タイトなスプレッド環境は、とりわけ投資適格級の発行体の健全なファンダメンタルズを反映している側面がある。特に欧州において短期金利が低下したため、投資家は金利リスクとクレジットリスクを許容するようになり、需給面も非常に堅調だ。緩和的な金融政策の下での緩やかな経済成長は、スプレッド資産にとって歓迎すべきものであり、当社ではキャリーを重視している。
とはいえ、全体を見れば低格付けのハイイールド債はリスクに見合わないケースが多いと感じていることから、クオリティ重視の運用に集中している。例えば、足元では高格付けの米国証券化商品や、欧州周辺国の投資適格社債などが主なターゲットだ。
物価・財政・景気後退リスクに注目
債券運用でも無視できない“米ドル離れ”をどのように見ているか。
マーフィン 投資家や各国政府・企業の米ドル依存低下の動きは、当面続く可能性があるだろう。ユーロなどの通貨の上昇は、ドイツが連邦議会選挙後の2025年3月に決定した大規模な財政拡大を踏まえると妥当性がある。半面、米ドルは利下げに対する政治的圧力もあり、米ドルの潜在的なキャリーとFRB(米連邦準備理事会)の独立性の観点から弱含んでいる。米国当局には米ドル高を支持する様子は見られず、一方で財政懸念によって資本流入のために米ドル安が必要となる可能性がある。これらのリスクを相殺するのは、現在の相対的に魅力的な経済成長率と、パブリックおよびプライベートの資本市場の厚みだ。
今後の潜在的なリスク要因は。
マーフィン 主要なリスクが3つあるとみている。1つ目は、市場が期待する金融緩和を制限するインフレの長期化だ。これは株式市場と債券市場の双方で投資家の失望を招く可能性がある。2つ目は、日本、フランス、英国、米国などにおける継続的な財政赤字に起因する財政リスク上昇だ。急激に金利が上昇すれば、民間セクターの資金調達コストを増加させ、リスク選好度の低下に繋がる。特に米国の長期金利の動向は注視に値しよう。3つ目は、とりわけ米国の金融引き締め的な政策が続くことで、景気後退の可能性が上昇することだ。足元で企業業績は良好であるが、住宅市場、雇用市場、低所得世帯の支出といったデータに減速の兆候が現れ始めている。

過去の実績は将来の運用成果を示唆または保証するものではありません。すべての投資にはリスクがあります。投資価値は増大することも減少することもあるため、投資元本を割り込むことがあります。対円での為替変動の影響を除外して当運用戦略としての超過収益の特性を示すため、当運用戦略のベース通貨である米ドルベースで表示しています。基準となる通貨と異なる通貨建て資産への投資においては、為替変動によりリターンが下がるなどのリスクがあることにご留意ください。上記は当該運用のコンポジットのパフォーマンスを反映するものであり、個別ポートフォリオの運用実績は異なります。
分析・運用の一体化で狙うアルファ
図表の通り、MFSのアクティブ債券運用では、ボラティリティが高い環境でも安定的に超過収益を獲得してきた。今後はどのように優位性を発揮していくのか。
マーフィン 先ほどスプレッド縮小化での注目分野について説明したが、タイトなスプレッド環境では、何より個別銘柄とセクターの選択が重要になる。アナリストと連携し、関税リスクの影響を受けにくく、レジリエントなセクター・国・銘柄を厳選することが、アウトパフォーマンスに繋がる可能性が高まるためだ。加えて世界中で金融政策と財政政策が異なる方向性に動くことから、金利や為替市場での格差が大きくなることも、アクティブな投資判断を通じたアルファ獲得に追い風が吹く環境だ。
こうした中、精緻な分析に基づく投資判断が競争優位の源泉として重要性を増している。MFSはハイイールド債と投資適格社債でそれぞれ専任の調査チームを設けながら、当社がグローバルに展開するアナリストおよび株式チームと密に連携している。そしてファンダメンタルズだけでなく、バリュエーションやESG(環境・社会・企業統治)など様々な要因に基づいて国や銘柄を選択する際に、各分野の専門家であるアナリストの意見を投資判断に直結させている。知見と運用を二人三脚で運用する体制が強固であることが、これまでも、そしてこれからもMFSの債券運用の優位性となるだろう。
日本の投資家へメッセージを。
マーフィン 日本では、円債の利回りが魅力を増し、イールドカーブはスティープ化に向かっている。しかし、円金利の上昇が日本の財政、政治、供給リスクの上昇とバランスを取れるかはまだ不確実性が残る。債券エクスポージャーの分散化は引き続き重要な課題だ。一方で、いま日本銀行は主要国の中央銀行の中で唯一のタカ派スタンスを取っている。FRBの金融緩和サイクル再開などで内外金利差が縮小する可能性は高く、近年大きな悩みの種となってきた為替ヘッジコストがついに低下する兆しが見えてきたことは、グローバル債券への分散を進める絶好の機会の到来と言えるだろう。
しかも、地政学的および経済的リスクを考慮すると、いまはアクティブなグローバル債券マネジャーがアルファを生み出すには申し分ない環境である。日本の機関投資家はグローバル債券投資に吹くこうした追い風を余すことなく享受してほしい。当社はそのニーズに応えるソリューションを今後も提供していくつもりだ。
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