海外不動産への投資を行う場合、多くの機関投資家は、まず欧米不動産を投資対象として検討するだろう。しかし、地域分散の観点では欧米以外の国・地域にも目を向ける必要がある。英運用大手M&Gは、その有力な受け皿としてアジア太平洋(APAC)先進国の不動産市場に注目する。

欧米偏重の不動産投資戦略。地域分散を意識する必要がある

森岡 祐弥氏
M&G Investments Japan
営業部
森岡 祐弥

債券を上回るインカム期待やインフレヘッジの手段、長期・安定運用の受け皿など、伝統的資産とはリスク・リターン特性が異なる不動産は、機関投資家のポートフォリオに欠かせない資産クラスとなっている。そのような中、M&G InvestmentsJapanの森岡祐弥氏は、日本の機関投資家の不動産ポートフォリオの資産配分について「米国や欧州にやや偏重している傾向が見受けられる」と指摘する。特に米トランプ政権によって先行きの不透明感が高まっている現状は、「米国以外への地域分散を意識する必要がある」と強調する。

M&Gグループは欧州を代表する英金融大手で、傘下に保険会社と資産運用会社を持つ。資産運用を担うM&G Investmentsの運用資産残高は約4400億ドル(約66兆円)※1で、そのおよそ半分がグループの保険会社からの預かり資産だ。つまりアセットオーナーとアセットマネジャーという2つの側面を持つのがM&Gグループのユニークな点といえる。プライベートアセットにも注力しており、エクイティやクレジット、インフラなど幅広い戦略で長年の運用実績を持つ。150年以上の歴史を持つ不動産投資は、足元で約500億ドル(約7.5兆円)※1と、同社のプライベートアセット戦略の中で最大規模の資産残高を誇る。

そのM&Gが考える不動産における地域分散の選択肢が日本、韓国、シンガポールをはじめとするAPAC先進国への投資だ。シンガポールを拠点にアジア太平洋地域の不動産アセットマネジメント部門を統括するM&G Real Estate Asiaの平山逸三朗氏は、「世界の不動産市場の規模は、米国と欧州、アジア太平洋で約4:3:3の割合」と話す(図表①)。 

■図表① グローバル不動産市場の地域別配分
図表① グローバル不動産市場の地域別配分
出所:PMAのデータよりM&G作成。2025年6月現在。

「国内の機関投資家から見れば、ポートフォリオに占めるアジア太平洋の割合が大き過ぎると思われるかもしれません。一部には地域分散の選択肢としてオーストラリアの不動産の割合を増やす投資家もいらっしゃいますが、欧米不動産と高い相関関係にあるため分散効果は限定的である点は注意が必要です。一方で、日本、韓国、シンガポールの組み入れは、より高い分散効果が期待できます」と平山氏は語る。

地域分散の効果高めるAPAC先進国不動産。相対的に高いリターンも魅力

平山 逸三朗氏
M&G Real Estate Asia
アジア太平洋地域 運用部責任者
平山 逸三朗

それを表すのが図表②だ。これは不動産投資から得られるリターンの地域ごとの相関関係を示したもの。欧米は、オーストラリアと相関関係が高い一方、韓国、シンガポール、日本とは相対的に低相関であることがわかる。欧米を中心とした既存の不動産ポートフォリオにとって、APAC先進国は地域分散の効果を高めるうえで有効だ。

とはいえ、アジアの不動産に対し「高リターンが期待できる分、ボラティリティも高い」という印象を持つ投資家は少なくない。実はAPAC先進国不動産は過去数年不動産価格が大きく下落した欧米と比べてその変動幅は非常に少ない。リスク調整後のリターンが相対的に高いことは、図表③からも一目瞭然だ。

■図表② 地域別の不動産収益の相関関係(2015-2024年)
地域別の不動産収益の相関関係
出所:MSCI、PMAのデータよりM&G作成。2025年6月現在。上記は変更される可能性があります。また、将来の結果を保証するものではありません。
■図表③ 相対的に高いアジア太平洋地域のリスク調整後リターン
図表③ 相対的に高いアジア太平洋地域のリスク調整後リターン
MSCI年間不動産インデックスに基づく2024年までの15年間の時系列データ。円の大きさは投資可能な市場規模を表す。
出所: MSCI、PMAのデータよりM&G作成。2025年6月現在。上記は変更される可能性があります。また、将来の結果を保証するものではありません。

「APACの先進国は、今後も欧米と比較して高い経済成長率が見込まれる一方で、インフレ率は抑制的である点が特徴です。各国の賃料動向や資産価値を見ると、過去2~3年は国・セクターによってばらつきがありましたが、2025年上期には、賃料・資産価値共に力強い成長が確認できました」と平山氏は語る。またM&Gでは、日本以外の3カ国で仮に2025年に物件を購入し、2029年末に売却した場合をシミュレーションしている。それによるとレバレッジ後の年率リターンは、日本以外のほぼすべてのセクターで8~12%を見込む。いずれにせよAPAC先進国の不動産は、この先も債券を上回る魅力的な利回りが期待できそうだ。

アジアコア不動産投資で最大級、安定収益を生む物件に厳選投資

日本、オーストラリア、シンガポール、韓国の4カ国を主な投資対象国とし、戦略的な資産配分や銘柄選択などを通じて、受託資産の成長を目指すのがM&Gのアジア太平洋地域における不動産戦略だ。2002年の投資開始以来、資産残高は足元で約120億ドル(約1兆8000億円)に達する。

アジア全土に約80名を擁する運用チームが、オフィス、物流施設、住宅、商業施設を中心に、安定的な収益を生む物件に厳選投資を行う。代表的なコア戦略等ではアセット・アロケーションを2~3年ごとに見直しており、直近では4割程度だったオフィスの割合を約3割に下げる一方で、物流施設、住宅の割合を少しずつ増やしていく計画だ。「日本ではようやく賃料アップの機運が高まっていますが、海外不動産では、賃料上昇が見込めるのは当然のこと。ただし多くの国では、消費者物価指数(CPI)に連動して上昇します。その点、当戦略で投資する物件の賃貸契約のうち、実に6割近くが賃料を毎年上げることが契約に明記されており、その平均値は3.1%となっています※2」と平山氏。CPIとの連動ではなく、このような賃料アップを半数以上の契約で確約されている点は、成長著しいアジア太平洋不動産ならではの魅力といえそうだ。

森岡氏は、「コロナ危機や2022年以降の急速な利上げを受け、世界的に不動産の資産価値は大きく下落しました。しかし、利上げ局面の終息とともに回復途上にある現在は、不動産投資のエントリーポイントとして、絶好のタイミングだとみています」と話す。長期的に安定したインカム収入を期待できることに加えて、キャピタルの成長も追求できる投資機会として不動産投資、その中でも分散効果と成長性に優れたAPAC先進国不動産に注目してほしい。

※1 出所:M&G、2025年6月末現在。
※2 出所:M&G Real Estate。2025年6月末現在。
(注)本文中の為替レートは1ドル=150円で計算

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M&G Investments Japan株式会社

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