日本株市場の好調ぶりが目立つなか、企業分析やエンゲージメントに大きな特色を持つM&G Investmentsの『M&G日本株式戦略』が世界中の機関投資家から注目を浴びている。M&G Investments日本株ポートフォリオマネージャーのカール・ヴァイン氏、同インベストメント・ディレクターのサニー・ロモ氏、早稲田大学客員教授 M&G Investments Japan副社長の柳良平氏に、さまざまな角度から同戦略の魅力を語ってもらった。

優れた投資視点の追求が質の高いリターンを創出する

カール・ヴァイン氏
カール・ヴァイン
M&G Investments
アジアパシフィック株式運用共同統括
日本株ポートフォリオマネージャー

『M&G日本株式戦略』の特徴について教えてください。

ヴァイン 日本株のアクティブ運用は、ともするとグロースやバリューに二極化する傾向が見られますが、我々はそのようなファクターに基づくポートフォリオ構築は行いません。ボトムアップによる企業分析を通じて、投資の「視点」を追求することに力点を置いています。

各企業に固有のリスクを規律に則って吟味することにより、日本株市場で頻繁に生じるグロース・バリュー間の大きな“ぶれ”からポートフォリオを保護しながら、銘柄選択能力を活かして超過リターンを創出します。これは知的かつ誠実な運用プロセスであり、そこで創出されるリターンは質の高いものであると考えられます。

質の高いリターンは、優れた予測ではなく、優れた視点から生まれてきます。我々はさまざまなビジネスに内在するリスクについて優れた視点を得るために、「銘柄保有のリスク」が「銘柄保有の対価」と乖離している状況に着目します。さらには、なぜそれが投資機会となり得るのか、なぜ我々が市場とは異なる見方をしているのかなど、視点の裏付けを詰めていきます。

リサーチの対象は、我々が精通している企業と産業に限定しています。一貫した企業ユニバースを対象に、きわめて長期にわたる観察データを積み上げることにより、リスクの視点について他の市場参加者とは異なる見解を持つことが可能になります。

サニー・ロモ氏
サニー・ロモ
M&G Investments
インベストメント・ディレクター

銘柄選択にあたって採用している「メンタルモデリング」とは、どのようなものですか。

ロモ 株主としてリスクを理解し、付加価値を創出するためには、当該ビジネスへの理解度を高めることが不可欠です。そこでは企業が実際にどのように機能しているのか、実際に何に依拠しているのかを把握することが重要になります。ビジネスの原動力を理解するだけでなく、原動力の原動力を追求するわけです。

企業が公表するKP(I重要業績評価指標)だけに依存せず、企業が「何を言っているか」について考えますが、同時にまた企業が「何を言っていないか」や「言わない理由」についても深く考えます。それによって例えば競合他社や消費者の視点、規制リスクに関する見通しなど、ある面では企業のCEO以上に優れた展望を得ることが可能です。こうした取り組みは、入手可能なデータの範囲内で将来を予測する伝統的な財務モデリングとは対照的なものです。

日本企業の事業環境をより的確に把握する運用体制

機関投資家を中心に『M&G日本株式戦略』への引き合いが増えているようですね。

ヴァイン モーニングスター・ダイレクトによると、2023年1月~7月末の期間中、資金流入額が大きい日本株ファンドの第3位が『M&G日本株式戦略』に基づいて運用するファンドでした。特に海外投資家の間で日本株への関心が再浮上している背景のひとつとして、コーポレート・ガバナンスの改善が挙げられます。

ただし、日本企業の改革自体は目新しいトピックではなく、25年ほど前から始まっていました。今日の状況が当時と違うのは、日本企業の行動が実際に変化し、それが結実することによって、株主と企業経営陣との間でアライメントが高まっていることです。

国内の機関投資家向け資産運用業界にも変化の兆しがうかがえます。最近の第一生命によるベネフィット・ワン買収劇を見てください。こうした事例は、5年前には考えられませんでした。日本の機関投資家が株主価値の創造と保護に動き始めたのは、非常に興味深いことです。

日本の個人投資家については、自国の株式市場への投資が不足していると言えます。慢性的な低金利のなか、2桁台のリターンが期待できる市場は魅力的です。家計の資産配分が変化すれば、家計金融資産の長期的な増大を通じて、マクロ経済にも大きな影響をもたらします。日本政府がそうした変化を促していることを喜ばしく感じます。

東京の運用チームを増強しているようですが、それは日本におけるプレゼンス強化の表れでしょうか。

ロモ 当戦略を運用するアジア太平洋株式チームは、12名の運用プロフェッショナルで構成されています。リサーチ対象はエクスポージャーに基づいてグループ化し、スタートアップ企業も対象に含めることで、日本企業の事業環境をより的確に把握することが可能となっています。

2022年に、早稲田大学客員教授の柳をM&G Investments Japanの副社長(非常勤)として招聘しました。柳はポートフォリオマネージャーであるヴァインのアドバイザーとして、組入企業に関する専門知識と洞察を提供します。最近では東京でシニア・アナリストを増員し、投資先企業との関わりがさらに強化されることとなりました。

2024年の日本株についてはどのような見通しを持っていますか。

ヴァイン 主として日本企業の自助努力から生じる構造的な収益の伸びが、市場リターンの力強い原動力になると考えています。業績拡大に加えて増配や自社株買いの増加シナリオも考慮すると、バリュエーションがまったく変わらなくても、今後10年にわたって日本株に年率10%台半ばのトータルリターンを期待することも非現実的ではありません。

2023年は、こうしたミクロ改革の仮説を裏付ける多くの証拠がもたらされました。日本株のバリュエーションは直近12カ月間で上昇しているものの、株価の過熱感やバリュエーションの行き過ぎは見られません。2024年も日本企業の改革は加速し、日本株の好調は当面継続すると見ています。

企業にも投資家にも付加価値をもたらすバリューアップ・エンゲージメント

柳 良平氏
柳 良平氏
早稲田大学客員教授
M&G Investments Japan 副社長

我々は「選ばれる株主」になることを目指しています。それは長期資本を提供するだけでなく、資本以外の面でも経営に付加価値をもたらす株主として望まれることを意味します。

いわば企業を「支援」しようとするバリューアップ・エンゲージメントは、比較的近年まで日本企業の経営陣を混乱させたり、脅威と捉えられたりすることもありました。しかしながら年月を重ねたいま、投資先企業は我々に信頼を寄せ、経営陣が求めるリソースとなり得る長期投資家として認めてくれるようになってきました。日本企業のガバナンス体制が大きく変化するなかで、我々のアプローチに対する理解はいっそう進みつつあると実感しています。

株主である我々が発する声の価値が高まっており、その声を投資先企業のさまざまな向上に役立てることに注力しています。例えば事業戦略の点検を行うほか、世界に広がる我々のネットワークを活用して投資先企業に新規の顧客やサプライヤー、研究・開発提携先などを紹介するといった貢献が考えられます。投資先企業とともに、さまざまなシナリオをブレインストームし、取締役会レベルの意思決定に我々の展望を提供していきます。

企業文化まで考慮したエンゲージメントのノウハウを持つ株主は、企業に多くの付加価値をもたらすとともに、投資家に超過リターンをもたらす可能性も高まります。それはファンドのパフォーマンスに直接寄与するのみならず、投資先企業の保有リスクに対する理解を促すことにもつながります。

本資料は、現在の市場動向におけるM&Gの見解を述べたものです。これらの見解は今後、予告なしに変更される可能性があり、有効であると実証されない可能性のある前提条件が含まれています。本資料の配布は、いかなる有価証券の売買の推奨や勧誘には該当せず、投資助言又は投資運用サービスの提供を行うものでもありません。本資料は、いかなる場合においても、いかなる有価証券の宣伝、公募、又は取得の申し込みの勧誘と解されるものではありません。本資料は情報提供と教育的目的のみのために作成したものであり、投資に関する助言・将来予想の提供・パフォーマンスの保証、又は特定の有価証券・投資戦略・投資商品の推奨を行うものではありません。本資料において言及される個別ファンド又は個別企業に関する記述は例示のみを目的としており、売買の推奨を行うものではありません。本資料が提供する情報は、M&Gが信頼性が高いと判断する情報源から得た情報で作成していますが、独自の検証は行われておらず、M&Gは、情報の正確性、完全性及び信頼性について保証せず、その責任を負いません。将来の見解、見通し、予測及び将来予想に関する記述は、現時点において入手可能な情報に基づいたものです。したがって、それらは既知及び未知のリスクと不確実性を伴う前提に基づいており本質的に推測的なものです。実際の結果、パフォーマンス又は事象が、本資料において明示的又は黙示的に示された記載事項と大きく異なることがあります。あらゆる投資はリスクを伴います。当該投資はすべての投資家に適切であるとは限りません。

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