国内外の企業年金などアセット・オーナーの間で、資産運用の高度化への「伴走者」として活用が広がっているのがブラックロックのOCIO（Outsourced CIO）サービスだ。顧客の運用目標に沿った最適なポートフォリオを提案できる理由を、日本拠点のキーマンの2人に聞いた。

顧客の限られた人的リソースを外部の専門家としてカバー

日本の企業年金の間でOCIOが注目を集めている。「多くの企業年金では限られた人的リソースをやりくりして各種業務にあたっています。一方、株価の乱高下や『金利ある世界』の復活など市場環境は先行きが不透明です。今後は運用の高度化が一層求められることから、投資運用サービスを外部の専門家に委託するOCIOのニーズが高まっています」（ブラックロック・ジャパン 取締役 クライアント・ビジネス部門長 三浦英二氏）

ブラックロックのOCIOはおよそ20年の実績があり、特に盛んな英国では資産規模が数百億円の企業年金から数兆円規模の年金基金まで多くの投資家が積極的に導入している。日本では2008年の金融危機の前後から提供しており、大手年金基金や地方銀行などが活用している。

「我々のOCIOは資産規模の大きなアセットオーナー限定のサービスではありません。また、単なる運用業務の外部委託とも異なります。多様な資産クラスにわたる運用とポートフォリオ分析に精通したプロを運用スタッフに加えるイメージといえるでしょう」（ブラックロック・ジャパン マネージング ディレクター チーフ・インベストメント・ストラテジスト 運用部門マルチアセット運用部長の地口祐一氏）

ブラックロックのOCIOの特徴は「多様な資産クラス」を扱えることにある。ブラックロックでは、株式や債券など市場流動性の高い資産からプライベートアセット（非公開資産）まで幅広い資産の運用を行っている。約11.48兆ドル（約1750兆円。1ドル＝153円換算）を運用する世界最大級の資産運用会社ならではのカバー範囲の広さといえるだろう。

ブラックロックのOCIOは「予定利率2.5%の達成」など、顧客ごとに異なるニーズに応じて、複数の資産クラスを組み合わせ、機動的な運用を行うことで目標達成を狙うカスタマイズ運用を得意とする。

様々なリスクシナリオにおける運用戦略ごとの価格変動を把握

2つ目の特徴がブラックロック独自のリスク分析システム『アラディン』を用いた「ポートフォリオ分析」だ。

『アラディン』は、金利や為替、株価など3000超のファクターに基づき将来リスクを予測する。株式や債券、デリバティブなどの通常の資産クラスに加え、オルタナティブ、ファンド・オブ・ファンズ、カスタマイズ・ベンチマークなど複雑な商品やストラクチャーの分析にも対応している。「長期金利の急上昇」「ドル円相場の大幅下落」「紛争発生」など様々なリスクシナリオを用いて、ポートフォリオで保有する金融商品や運用戦略などの価値がイベント発生時にどのように変化するか把握することも可能だ。

「複数の資産を組み合わせたマルチアセット戦略を単純に組み入れるだけでは、政治、経済、社会、地政学などのリスクを内包した現実のマーケット変動に対処するのは難しいと言わざるをえません。ブラックロックのOCIOでは『アラディン』を使ってポートフォリオのリスクの所在を要因分解します。ポートフォリオの持つリスクを数値として可視化し、運用目的に合った理想的なポートフォリオを提案します」（三浦氏）

東京オフィスの運用担当者が状況報告や改善提案に従事

このような運用戦略の選択肢の多さと精緻なリスク分析ツールの活用は、ブラックロックのOCIOにおける2つの大きなポイントといえるだろう。加えて、日本の企業年金などから高い信頼を得ている理由は、東京を本拠とするブラックロック・ジャパン在籍の運用担当者が直接投資判断に携わり、必要に応じて顧客への説明を行う点だ。

「ブラックロック東京オフィスの、マルチアセット運用チームには、私を含めて13名が在籍しています。お客様の資産全体に目配りし、円建て投資家の目線で運用を行っています。OCIO顧客の目的に合ったポートフォリオの提供、リスク分析、運用状況の報告と改善提案まで日本で完結している体制は、お客様から『いつでも相談できて安心』とご評価いただいています。市場急変時における投資行動の背景や運用成果については、実際に運用に携わっている担当者が直接発信するものであるからこそ、リアルに、かつ分かりやすくお伝えすることができていると自負しています」（地口氏）

グローバルに事業展開しているブラックロックには国・地域ごとにマルチアセット部門があり、OCIOは各地域の運用担当者がエリア特性に合わせたサービス内容で提供している。日本のマルチアセット運用部門では、欧州、米国、アジアパシフィックなど各国・地域のマルチアセット部門の運用担当者と毎週ミーティングを行い、最先端の知見を日本のOCIO顧客に提供している。

例えば、海外の紛争激化がポートフォリオにどのような影響を及ぼすか調べる場合、すべての組入商品を各運用機関に問い合わせなければならない。中には返信が遅いところもあるだろう。ブラックロックのOCIOであれば、東京オフィスの担当者がワンストップで他社商品も含めた今後の見通しを提供してくれる。

外資系資産運用会社の日本拠点では最大級の陣容を誇るマルチアセット運用チームが、世界最大級の資産運用会社にふさわしいグローバルネットワークと最先端のリスク分析ツールを用いてそれぞれの顧客に最適なポートフォリオを提案する──。ブラックロックのオンリーワンのOCIOこそ、変革期にある日本のアセットオーナーの期待に応えるソリューションだ。