為替 維新との連立と片山財務大臣のドル円相場への影響
さらなる円安・インフレ誘発の可能性
高市早苗新政権が高い支持率を伴う順調な滑り出しとなる中、株高・円安の「高市トレード」が勢いづいている。
高市首相の経済政策、いわゆる『サナエノミクス』の柱は、①利上げに慎重、②責任ある積極財政、③外交・安全保障・経済面での総合的な国力の強化、の3点だ。まさに「アベノミクス」の3本の矢(大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略)の流れをくんでいる。
気がかりなのは、「アベノミクス」が掲げられた2012年12月時点のドル円は1ドル=85円台、消費者物価指数(CPI)は前年比マイナス0.1%と、足元のドル円(1ドル=152円台)、CPI(前年比2.7%)とは、全く異なる点である。
安倍晋三政権下では、円高・デフレの負のスパイラルを断ち切ることを企図していたため、大胆な金融緩和や財政政策が必要だった点は一定程度理解できる。しかし、足元の経済環境でアベノミクスさながら①と②を推進すれば、さらなる円安とインフレを招くリスクは高まるだろう。
ドル円相場は、2025年4月の「米相互関税ショック」後の安値139円台後半から緩やかな上昇トレンドを描いており、2025年10月10日高値の153円27銭を上抜ければ、テクニカル上は155円台が視野に入る。円安は、米国の関税引き上げの影響を直接的に受ける日本の輸出企業にとっては助けになる一方で、物価高が家計を圧迫し、個人消費の足かせとなる。
日銀の全国企業短期経済観測調査(短観)が示す企業の景況感は好調が続く一方で、家計の景況感は悪化しており、ドル円が160円台を試した2024年6月以来、本来連動するはずの企業と家計の景況感の乖離(かいり)は続いている(図表)。しかし、ドル円の円安は徐々に勢いが落ち着くだろう。理由は、自民党と日本維新の会の連立政権発足と、片山さつき氏の財務大臣就任だ。

出所:日本銀行、ソニーフィナンシャルグループ
バランスの良い政策推進力に期待
片山財務大臣は2025年3月に行われたインタビューで、「ドル円は120円台が実力との見方が多い」としたうえで、物価高の沈静化に向け円高進行が望ましいとの見解を示した。また、日銀の金融政策については、2025年10月22日の財務大臣就任会見で、「政府と日銀の連携は必要不可欠である」としながらも、「具体的な政策(金利の上げ下げなど)の運用は日銀に任せられている」と述べており、緩和維持姿勢を示す高市首相とはややスタンスが異なる。
一方維新の会は、為替についての直接的な言及はないが、物価高対策を重視しており、円安による物価高が家計にとって負担であるという認識はあるものと推察される。仮に今後、インフレ上振れのリスクが高まれば、日銀の利上げに対しても、是々非々で理解を示すのではないか。
また、財政については、維新の会は財源の議論を重視しており、歳出削減も謳っていることから、「経済成長による税収の拡大」頼みの積極財政には一定程度ブレーキとなる公算が大きい。
片山財務大臣も「責任のある、きちっと財政規律を定めた積極財政をやっていく」と明言している。「高市トレード」に沸く金融市場だが、維新の会や片山財務大臣の存在が良いバランスを生めば、今後は円安やインフレの勢いも徐々に落ち着くのではないか。
ソニーフィナンシャルグループは、日銀の次回利上げは2026年1月とみており、2025年末のドル円予想は150円、2026年末は154円に置いている。なお、上述した「サナエノミクス」の③「総合的な国力の強化」は、主にAI(人工知能)や半導体などの先端技術分野への成長投資を通じて、生産性の向上や産業競争力強化を目指すもので、長期的には日本の潜在成長率を高め、将来円の価値を高める重要な政策だ。今後の政策推進力に期待したい。















