銀行に対する資本規制強化を背景に、足元では、銀行のバランスシートを最適化する「キャピタル・リリーフ」への投資機会が広がっているという。キャピタル・リリーフのフロントランナーであるマニュライフ|CQSインベストメント・マネジメントが運用する戦略について、仕組みや特徴を聞いた。

拡大が見込まれる貸付債権の取引市場

マニュライフ・インベストメント・マネジメント機関投資家営業部プロダクトチームマネージャー野村 聖淳氏

キャピタル・リリーフとはどのような投資対象か。

キャピタル・リリーフは、銀行のローン債権の信用リスクの一部を外部の投資家に移転する取引で、一般にSRT(Significant Risk Transfer:合成リスク移転)とも呼ばれる。

銀行は、実行した与信を束ねたローンポートフォリオのうち、弁済順位が劣後する「ジュニア・トランシェ」リスクを外部の投資家に移転することでリスクアセットを削減できる。他方、投資家は参照クレジット(銀行の融資先企業)リスクを負う代わりに、保証料のようなかたちでクーポンを受け取る仕組みだ(図表1)。

■図表1 キャピタル・リリーフ取引の仕組み(取引例)
キャピタル・リリーフ取引の仕組み(取引例)
出所:マニュライフ|CQS インベストメント・マネジメント、2024年9月30日時点。例示のみを目的としています。

世界金融危機以降、規制当局は銀行の自己資本規制を厳格化し、融資に対して適切な自己資本を備えるよう求めてきた。銀行は増資により財務基盤を強化したり、ローン債権の売却などを通じてバランスシート上の資産規模を圧縮したりすることで資本規制に対応してきた。ただ、これらの手法では株式の希薄化を招く懸念や、貸出シェア喪失の恐れがあった。

一方、キャピタル・リリーフならばローン債権を売却しないので、実際の与信自体は銀行のバランスシートに残り続ける。銀行は融資先企業とのリレーションを戦略的に維持し、伝統的な融資ビジネスに注力しながらリスクを低減することが可能となる。

欧州ソブリン債務危機後の2012~2013年ごろから、欧州銀行の間で自己資本比率の改善が強く意識され始め、キャピタル・リリーフの取引件数およびオリジネーター(発行銀行)の数は年々増加していった。足元ではFRB(米連邦準備理事会)の規制緩和で、キャピタル・リリーフ取引に新規参入する米銀行も増えており、今後、市場は一層拡大していくと予想される。

過去12~15%の利回り実績。デフォルト率は0.1%以下

機関投資家の関心が高まる中で、ABS(資産担保証券)戦略のサブ戦略の一つだったキャピタル・リリーフに特化した『マニュライフ|CQSキャピタル・リリーフ戦略』が登場した。どのような戦略なのか。

当戦略は、グローバルにビジネスを展開する大手銀行が発行する案件を主な投資対象とする。銀行の厳格な与信審査を経たローンポートフォリオにアクセスし、各行が持つ与信精査のノウハウを活用しながら、内部格付けが低い案件を除外するなど投資家が一定程度裁量を持って柔軟にポートフォリオを構築できる点がポイントだ。

例えば、コミングルファンドだと15~20程度の案件に投資するが、1案件につき多いものでは4000件程度のローンが含まれる。信用リスクが広く分散され、ほかのクレジット戦略との相関が低い点も強調したい。例えば、ハイイールド債と対比した当戦略の過去1年間のベータ(連動性)は0.14と低水準だ(2024年9月30日時点)。

また、担保資産の加重平均格付けはBBB-と投資適格級の高い信用を持ちながら、戦略全体では12~15%の利回り水準が安定的に期待できる。

戦略を運用するのは、オルタナティブクレジット運用に特化した強みを持つマニュライフ|CQSインベストメント・マネジメントだと聞いている。

マニュライフ|CQSインベストメント・マネジメントの運用チームは、ABSやバンクローン、AT1債の各市場における長年の実績を有することから、発行体銀行との強固なリレーションに基づいた高いソーシング能力に優位性がある。

当戦略では、銀行が融資先企業の情報開示に積極的かどうかといった観点で、発行体自体の精査も非常に重要なポイントだ。積極的にキャピタル・リリーフ取引に参加する発行体銀行65~70行のうち、実際に取引実績があるのは19行のみとなっている(2024年9月30日時点)。

そして、当然ながら担保の分析能力もカギになる。年間50案件以上を精査し、実際に投資するのはその30%程度。結果として、当戦略の提供を開始した2014年以降、発生した累積信用損失は0.1%以下に抑えられている。

運用チームはABSやCLO(ローン担保証券)などのほかのクレジット運用も行っており、キャピタル・リリーフ案件を分析する上でクレジット戦略全般にわたる運用ケイパビリティを活用できる点も特徴と言える。

オルタナティブクレジットにおける分散先候補となり得る

オルタナティブクレジット分野では、ダイレクト・レンディング(DL)の拡大が目立つ。DL投資家がキャピタル・リリーフに注目する意義は。

図表2の通り、まず、原資産の違いとして、DLはミドルマーケット(中小・中堅企業)向け融資が中心なのに対して、キャピタル・リリーフは相対的に企業規模が大きい。前述のように、国・地域を代表する“トップティア”の銀行の与信能力や債権回収能力を活用できる点も差別化要因だ。

■図表2 キャピタル・リリーフ取引とダイレクト・レンディングの比較
キャピタル・リリーフ取引とダイレクト・レンディングの比較
出所:マニュライフ|CQS インベストメント・マネジメント、2024年9月30日時点。
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また、DLは大きな金融危機を経験していない資産クラスのため、デフォルト時の資金回収率が不透明な側面がある。一方、キャピタル・リリーフの場合、融資先企業の過去の内部格付けやデフォルト歴などを発行体銀行から入手できる余地がある。ほかにも、キャピタル・リリーフはコミットメントからフルインベストメントに至るまでの期間が比較的短く、投資資金を効率的に活用できるメリットも挙げられる。

オルタナティブ資産ポートフォリオの分散や投資効率を高めたい機関投資家の皆様に、『マニュライフ|CQS キャピタル・リリーフ戦略』をぜひ検討いただきたい。

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