アクサ・インベストメント・マネージャーズAdvertisement
アクサ・インベストメント・マネージャーズの気候戦略

気温上昇を1.5℃に抑える世界に向けて 戦略的アセットアロケーションを提案

気温上昇を1.5℃に抑える世界に向けて 戦略的アセットアロケーションを提案

長期投資家にとって、地球温暖化をはじめとした気候変動の問題は避けて通れない課題となっている。気候変動に伴うリスクに対応しつつ、リスク調整後リターンの最適化を図るために、どのようなアプローチが効果的なのか。アクサ・インベストメント・マネージャーズ(アクサIM)が提案する戦略的アセットアロケーションについて、担当者に話を聞いた。
リーズ・モレット 気候変動ストラテジー統括責任者

リーズ・モレット
気候変動ストラテジー統括責任者

トーマス・ルーランド 責任投資ソリューション、モデル、ツール統括責任者

トーマス・ルーランド
責任投資ソリューション、モデル、
ツール統括責任者

モハメド・マーレジ 金融エンジニアリング統括責任者

モハメド・マーレジ
金融エンジニアリング統括責任者

長期投資家は気候変動問題への考慮が欠かせない

──気候変動リスクは長期投資家にどのような課題をもたらしているか。

気候科学や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、今世紀末までの気温上昇を産業革命以前と比べて1.5℃以内に抑えるために、世界でどの程度の炭素効率性の向上が必要かを明らかにしている。パリ協定によれば、世界の年間CO2排出量を2030年までに半減させ、2050年までにネット・ゼロ(排出量と除去量が均衡する水準)にしなければならない。

コンサルティング会社マーサーの調査によれば、世界の気温上昇を2℃未満に抑えるシナリオ(2℃シナリオ)が、3℃シナリオ(現在のパリ協定での公約)や4℃シナリオ(現状維持)と比べて、長期投資家にとって最善の結果になりうるとされている。

2050年までを見据えた場合、4℃シナリオは2℃シナリオと比較して先進国株式ポートフォリオのリターンを5.6%押し下げ、分散型ポートフォリオのリターンを2100年まで毎年0.10%超押し下げるとみられている。

地球温暖化は、気候変動に伴う長期的リスクと、エネルギーセクターによる化石燃料から低炭素代替燃料への移行に伴う短期的リスクをもたらす。長期投資家にとって、アセットアロケーションの決定に気候変動問題を考慮することが欠かせない時代といえる。

リーズ・モレット 気候変動ストラテジー統括責任者

リーズ・モレット
気候変動ストラテジー統括責任者

トーマス・ルーランド 責任投資ソリューション、モデル、ツール統括責任者

トーマス・ルーランド
責任投資ソリューション、モデル、
ツール統括責任者

モハメド・マーレジ 金融エンジニアリング統括責任者

モハメド・マーレジ
金融エンジニアリング統括責任者

図表1.2℃シナリオの期待年間リターンへの影響
図表1.2℃シナリオの期待年間リターンへの影響図表1.2℃シナリオの期待年間リターンへの影響

──アクサIMは、気候変動を考慮したアセットアロケーションをどう構築するか。

気温上昇を1.5℃以下に抑える排出経路に沿った戦略的アセットアロケーションを実践できるように、現在の炭素強度(エネルギーの単位当たりのCO2排出量)データと気候関連の資産類型に基づいたアプローチを提示する。1.5℃目標と整合した戦略的アセットアロケーションの構築に向けて、次のような段階的アプローチを実践している。

  • 1.ベースとなるマルチアセット・ポートフォリオ(上場株式と債券)を構築する
  • 2.炭素強度と地球温暖化への影響に応じて資産クラスを再調整する
  • 3.炭素目標を最適化させるように戦略的アセットアロケーションを実施する
  • 4.手法を精緻化し、調整する

当社のシミュレーションでは、リスク調整後リターンを悪化させることなく、2030年までに炭素排出量を半減させる1.5℃目標を戦略的アセットアロケーションに組み込むことが可能だ。

炭素強度を半減しつつも、シャープレシオは維持される

──4つのステップについて具体的に教えてほしい。

1.ベースとなるマルチアセット・ポートフォリオ(上場株式と債券)を構築する

ステップ1の「ベースとなるマルチアセット・ポートフォリオを構築する」では、従来の基本マルチアセット・ポートフォリオからスタートする。


これはグローバル株式44%、グローバル投資適格社債30%、ハイイールド債6%、国債20%で構成されるものだ。上場資産のみを利用し、不動産やインフラ、プライベートエクイティなどの流動性の低いオルタナティブ資産への投資は避ける。

2.炭素強度と地球温暖化への影響に応じて資産クラスを再調整する

続いて、ステップ2として「炭素強度と地球温暖化への影響に応じて資産クラスを再調整する」。1.5℃目標との整合性を確保するには、投資資産のカーボンインパクトを半減させる必要がある。その実現のために設定するのが、セクター別・国別配分を調整した気候変動関連インデックスだ。これを一般的な従来の資産クラスのインデックスに代わる、当社の戦略的アセットアロケーションツールとする。


炭素強度に応じたグループ分けでは、炭素強度が高いもしくは中程度とみなされる、気候変動と「関わりが深い」資産と、炭素強度が低く、地球温暖化への明確な影響がみられない、気候変動と「関わりがない」資産に分ける。


炭素強度が高いカテゴリーは、気候リスクが大きく、炭素集約型の事業活動に関わる資産であり、エネルギー、素材、発電に従事する企業が当てはまる。炭素強度が中程度のカテゴリーは、気候変動と関わりが深いセクターでありながら、炭素排出量がやや少ない資産。例えば、運輸、不動産、資本財、消費者関連のセクターに属する企業が該当する。気候への影響が少ないカテゴリーは、専門的なサービス、ヘルスケア、通信、金融サービスに関連する企業が対象となる。


なお、世界経済(および金融市場)における炭素強度の分布は、気候への影響が大きいカテゴリーの発行体にとりわけ偏っている。排出量が多い上位セクターは、エネルギー(電気・熱)、運輸、製造、農業で、排出量が多い上位地域は、中国、米国、欧州だ。

3.炭素目標を最適化させるように戦略的アセットアロケーションを実施

ステップ3では、「炭素目標を最適化させるように戦略的アセットアロケーションを実施する」。気候目標に整合したポートフォリオの最大の問題は、再調整後の資産クラス配分で、標準的な資産クラス配分と同等のベータ調整後リターンを達成できるかどうかだ。


当社のシミュレーションによれば、炭素排出量を半減させる気候目標を組み込んだ戦略的アセットアロケーションがリスク調整後リターンの悪化につながることはないとみられる。気候変動と「関わりがない」資産への投資を増やすことによって実現する最適化アロケーションは、炭素強度を半減させられると同時に、より高いリターンとより高いボラティリティによりシャープレシオは維持される。全体として、これらのアロケーションは、リスク・リターン評価の一般的手法である効率的フロンティアに沿って順調に推移する。

4.手法を精緻化し、調整する

上述の戦略的アセットアロケーション最適化プロセスによって、運用目標を維持しつつ、炭素強度を半減させる気候目標を達成することができる。しかし、気候変動と「関わりが深い」資産から、気候変動と「関わりがない」資産へと配分が大きくシフトすることで、ポートフォリオの分散性が乏しくなることは否めない。


この影響に対処するため、ステップ4として「手法を精緻化し調整する」ことが重要だ。気候変動と関わりが深いセクターの低炭素化に十分貢献しながら、投資先の分散も確保できる戦略的アセットアロケーション手法の可能性を探る必要がある。そこで、当社はさらにリサーチを進めるために2つのアプローチをとっている。


第一に、フォワードルッキング・アプローチを組み込むことにより、気候への影響に関する現在のデータを充実させていく。炭素排出量や炭素強度のほか、科学に基づく実績ベースおよびフォワードルッキングな指標を組み合わせて、気候目標との整合性と投資資産のグリーン度を測定すべきだ。この分析は、定量的尺度のみで行われるべきではなく、企業が自社の事業モデルを移行し、戦略的目標を達成する能力についての詳細な定性的評価も網羅する必要がある。こうした取り組みは、投資家による発行体企業経営陣との積極的なエンゲージメントプログラムによって支えられる。

図表2 アクサIMの内部グリーンタクソノミー:全資産にわたって投資資産のグリーン度を測るグリッド
図表2 アクサIMの内部グリーンタクソノミー:全資産にわたって投資資産のグリーン度を測るグリッド 図表2 アクサIMの内部グリーンタクソノミー:全資産にわたって投資資産のグリーン度を測るグリッド

第二に、移行における成熟度をより正確に反映するために資産クラスを再定義していくことも重要だ。気候戦略の一環としてまとめた10項目の投資原則において、当社はパリ協定の目標との整合度と「グリーン度」に応じて、投資ユニバースを3つのカテゴリーの発行体に分類している。

低炭素化の業界リーダー
気候変動と「関わりが深い」各セクター(気候に最も影響を与える業界)の中で、炭素パフォーマンスが最も優れている企業
移行期のリーダー
パリ協定の目標に整合した排出経路に移行中の企業
グリーンリーダー
中核的なグリーン企業(既に低炭素化を果たし、エネルギーの移行に十分貢献している企業)

この次の段階では、気候専門家と金融エンジニアリングチームが協力し、今回提案したフレームワークに沿って資産クラスを再定義しながら、戦略的アセットアロケーションを1.5℃目標の排出経路と整合させる方法を探っていくことが必要になる。図表3では、ポートフォリオ運用において気候目標に整合した投資原則に関する具体的な提案を説明している。

図表3 アクサIMの気候目標に整合した投資原則-整合性確保の目標をポートフォリオ運用に組み込むための提案
図表3 アクサIMの気候目標に整合した投資原則-整合性確保の目標をポートフォリオ運用に組み込むための提案 図表3 アクサIMの気候目標に整合した投資原則-整合性確保の目標をポートフォリオ運用に組み込むための提案