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年金基金の一部業務を運用会社が代行も

J-MONEY2015年冬号 注目記事

機関投資家のポートフォリオ戦略

広がる「トータルポートフォリオアプローチ」
年金基金の一部業務を運用会社が代行も

2014年は株高・円安と良好な運用環境で推移したが、2015年半ばともいわれる米国の政策金利引き上げなどで流れが変わる可能性もある。今後の先行きが見通しにくいなか、機関投資家はどのようなポートフォリオ戦略を志向しているだろうか。(工藤晋也、津田恒平)

スマートベータ

国内企業の成長性に着目したスマートベータを開発

 あらゆるアセットクラスで運用の多様化が進むなか、スマートベータの選択肢も広がっている。2014年8月にはDIAMアセットマネジメントと第一生命保険が新たなスマートベータ型運用手法「Japan Smart Growth 200(JSG200)」を開発した。

 従来のスマートベータはバリュー型や低ボラティリティ型が中心だったが、JSG200は国内企業の成長性に着目した点に特徴がある。過去10年のデータを用いたシミュレーションでは、TOPIXに対し年平均2%程度の超過収益が出ているという。

 開発の狙いについて、DIAMアセットマネジメント運用ソリューション本部本部長の星野元伸氏は、「これまでにないグロースに特化したスマートベータを加えることで、全体の投資効率を改善できると考えた。既存のポートフォリオに追加するポジションの1つとして検討してほしい」と語っている。

オルタナティブ

マルチアセット運用戦略

リスクファクターを均等に配分
真の分散化を実現するGRiPS

 昨今の機関投資家は、どのような局面でも安定的に収益を得られる運用戦略を求めており、特定の資産や運用手法に偏ることなく、環境の変化に応じてあらゆる投資要素を活用するマルチアセット運用の人気が高まっている。

 このマルチアセット運用の1つに組み入れ資産クラスごとにリスクを均等配分する「リスク・パリティ戦略」があるが、「期待通りの分散効果を得るためには、各資産の相関にも留意する必要がある」とDIAMアセットマネジメントの由良氏は話す。「例えば近年における米国株式と日本株式の値動きは似ており、とくに下落時にその傾向が顕著だ。それらのリスク量を均等にしても分散効果は薄い」

 DIAMアセットマネジメントの「グローバル・リスクファクター・パリティ戦略(GRiPS)」は、資産ごとのリスク量ではなく、インフレ期待や経済成長といったリスクファクターを均等に配分する点に特徴がある。

 星野氏は、「そのときどきの環境によって資産の価格を動かす要因は変わるため、どのファクターが資産の値動きを生んでいるのかをつねに分析している。リスクファクターをもとに資産配分を機動的に調整することで、見せかけでない真の分散化を実現することができる」という。

定評あるアセットアロケーション
100名規模の専門人材抱える

 「マーケット環境に合わせて資産配分を臨機応変に変えていくアセットアロケーションには定評がある」と力を込めるのはUBSグローバル・アセット・マネジメントの徳竹氏だ。

 同社のマルチアセット運用を担うグローバル・インベストメント・ソリューションズ(GIS)部門には、100名ほどのアセットアロケーションのスペシャリストが属し、30年以上の実績を有する。「今後の先行きが見通しにくいことから、マルチアセット運用に対するニーズは高い。運用の肝になるアセットアロケーションの専門人材には限りがあり、当社のように100名規模でスペシャリストを抱えている運用会社はグローバルに見ても数少ないだろう」と徳竹氏は自負する。

海外私募REIT

私募REITは株式との相関低い高い分散効果と
インカムが魅力

 これまでの海外不動産投資は、海外上場REITが主流だった。しかし、上場REITは株式市場の影響を少なからず受けるため、株式との相関が高いことが問題点として指摘される。それに対し、「私募REITは株式市場との相関が低く、オルタナティブ投資の分散効果が期待できる」とUBSグローバル・アセット・マネジメントの徳竹氏は説明する。

 米国で5本の指に入る大型ファンドを運用するなど、UBSグローバル・アセット・マネジメントは不動産分野で世界トップクラスの運用規模を誇る。「海外不動産は長期的に見て、リターンに占めるインカムの比率が高く、収益の安定性が魅力。分散投資の一環として、徐々に国内の機関投資家にも浸透していくだろう」(徳竹氏)

森林投資戦略

付加価値高い森林を
育成20年を超える経験と実績が強み

 伝統資産との相関が低く、市場リスクにさらされにくい特徴を持つ実物資産。マニュライフ・アセット・マネジメントは、そのなかでもユニークな「森林」を投資対象とする戦略を提供している。

 石田氏は、「世界最大の森林運用会社として付加価値の高い森林を育成することで、安定したリターンを創出している。20年以上にわたる運用経験と高水準なリターン実績が強み」と胸を張る。

 投資期間が15年と長く、安定的なインカム収益と高い分散効果は、年金をはじめ長期の投資家のみが享受できる。

債券グローバルマクロ戦略

下方リスクに強いPARS
ベンチマークの制約ない柔軟な運用

 伝統的なベンチマークを用いずに絶対収益の獲得を目指す「PIMCOアブソルート・リターン戦略(PARS)」は、株式との相関性の低さが特徴だ。「株式のリスクを分散したいが全体のリターンは落としたくない」というニーズに応える商品として投資家の関心が寄せられている。

 PARSは債券中心の運用であり、レラティブバリュー(割安な資産のロングポジションと、割高な資産のショートポジションの組み合わせで利益を獲得する手法)やグローバルマクロ(マクロ経済や金融政策の見通しなどに基づいて取引する戦略)といった手法を活用する。

 「ピムコが抱える260名のポートフォリオマネージャーの投資アイデアや60名超のクレジットアナリストの分析を活かせる運用体制が強みだ。実際に投資判断を行うのは3名の運用チーム。柔軟で機動的な運用ができ、下方リスクに強い」(ピムコジャパンリミテッドの井上氏)

メザニンファンド

活発化するメザニンファイナンス
支店網を活かした情報力が強み

 日本の企業の90%以上は少数の親族関係者だけで株式の過半数を保有するオーナー企業であり、戦後設立された成熟企業の事業承継問題が今後表面化すると見られている。

 みずほキャピタルパートナーズのマネージング・ダイレクター兼エグゼクティブ インベストメント オフィサーの宮崎直氏は、「買収や成長資金の調達ニーズ拡大により、シニアローンとエクイティの中間に位置するメザニンファイナンスが日本でも活性化することは間違いない」との見立てを持つ。

 実際に、この1年で野村ICGや東京海上メザニンなどが相次いでメザニンファンドを立ち上げており、みずほキャピタルパートナーズも3号ファンドの設立を進めている。宮崎氏は、「地方銀行や年金基金など多くの機関投資家がすでに提案を受け、メザニン投資を検討している」と関心の高まりを肌で感じている。

 メザニンファイナンスは、買収資金の補助として使われる「バイアウトメザニン」と銀行からの提供が困難な資本性の成長資金を提供する「コーポレートメザニン」に大別されるが、とくに後者の資金調達ニーズは事業承継等の資本政策とも絡む可能性がある故に秘匿性の高い情報であり、一般的には市場には出回らない。

 「その点、当社は全国にあるみずほ銀行を含むグループの情報網を活用することで、豊富な投資候補案件のなかから確実性の高い案件を選別することができる。コーポレートメザニンにおける情報の優位性は、当社ならではの強みといえる」(宮崎氏)
 10%の利回りがメルクマールとされるメザニンファンドは、リスクを抑えたミドルリターンの商品として人気が高い。金利や配当といったインカム収入により、Jカーブ効果が生じにくいのも魅力だ。宮崎氏は、「ポートフォリオに組み入れることで投資収益の
安定性向上に寄与するだろう。とくに地方銀行にとっては馴染み深いファイナンスへの投資であり、取り組みやすいオルタナティブ資産といえる」と話した。

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