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年金基金の一部業務を運用会社が代行も

J-MONEY2015年冬号 注目記事

機関投資家のポートフォリオ戦略

広がる「トータルポートフォリオアプローチ」
年金基金の一部業務を運用会社が代行も

2014年は株高・円安と良好な運用環境で推移したが、2015年半ばともいわれる米国の政策金利引き上げなどで流れが変わる可能性もある。今後の先行きが見通しにくいなか、機関投資家はどのようなポートフォリオ戦略を志向しているだろうか。(工藤晋也、津田恒平)

債券

アンコンストレインド債券

資産やリスクにバイアスかけず
安定したパフォーマンス目指す

 スマートベータと双璧をなす注目のプロダクトになっているのがアンコンストレインド債券だ。ベンチマークに追随せず、デュレーションや資産配分を柔軟に調整できるなど運用に制約がないことから、各運用会社によって商品性が大きく異なる。

 UBSグローバル・アセット・マネジメントのアンコンストレインド債券は、さまざまな債券に投資し、デュレーションを0-10年の間で変えていくタイプと、ロングとショートを駆使してデュレーションを変えていくヘッジファンドに近いタイプがある。前者は運用開始から1年半程度のトラックレコードだが、後者は2006年から運用を開始している。

 「ヘッジファンドに近いタイプの戦略はバイアスをかけていないのが強み」と口にするのは同社年金営業部長の徳竹明士氏だ。アンコンストレインド債券は制約にとらわれず、柔軟に運用できるのが持ち味だが、実際にはハイイールド債券やクレジットなど、単一の債券に比重がかかっていたり、一部のリスクを過度に取っているケースが多々あるという。

 「当該戦略は、クレジットと金利、通貨のリスクをほぼ均等にしている。組み入れる資産も偏っておらず、ボラティリティの高い局面でも安定したパフォーマンスを目指している。リスクを抑えた運用を好む機関投資家の目的に合致しているのではないか」(徳竹氏)

機動的なアロケーション変更で市場環境の変化に対応

 マニュライフ・アセット・マネジメントの「ストラテジック・インカム戦略」は、市場環境によって魅力ある債券は変わっていくという考えにもとづいて運用するアンコンストレインド債券である。エマージング債券やハイイールド債券など、さまざまな債券に分散投資してリスクの軽減を図るとともに、環境変化に応じて各債券のアロケーションを機動的に変更することで付加価値の獲得を目指していく。

 債券先物を使ってデュレーションをコントロールするのではなく、「その時々の市場環境に合った債券を組み入れていくので透明性が高い」と答えるのは同社代表取締役社長、チーフ・インベストメント・オフィサーの石田成氏だ。

 機動的に各債券のアロケーションを変えるだけでなく、銘柄選定も重視している。「グローバルの社債投資においては、発行国、発行体、発行形態、需給など、付加価値の源泉が豊富だ」(石田氏)からだ。同社では充実したリサーチ体制を整えており、ボストンや東京、香港などの拠点に多くのアナリストを抱えている。これらのアナリストが集めた情報をもとにファンドマネージャーが銘柄選定を行う。

 トラックレコードは25年を超す。パフォーマンスは優れており、1986年の運用開始来のリターンは10%超、直近5年でも7.99%の実績を残している(いずれも年率、米ドルベース、2014年11月末時点)。

クレジットの影響を排除
3つのシナリオで安定感高める

 アンコンストレインド債券といえば、あらゆる債券に投資するマルチセクタータイプが主流だが、あえてハイイールド債券やバンクローンなどのクレジットものを外したのがベアリング投信投資顧問の「ベアリング・グローバル・ターゲット・リターン債券戦略」だ。

 クレジットの影響を排除したことで、他社のアンコンストレインド債券との分散効果が狙える。「国債や地方債などの公的な債券が投資対象なので、ある程度流動性もしっかりしている」と同社取締役、機関投資家営業部長の岡村和宏氏はいう。

 2011年の運用開始来のリターンは約7%、リスクは4.13%となっている。運用を担当する運用本部部長の溜学氏は「ハイイールド債券などを入れずにこれほどのパフォーマンスを出せるのは、ダイナミックな国別配分とデュレーション戦略が源泉になっているからだ」と力強く語る。

 例えば時価総額加重であれば米国のウェイトは40%程度になるが、同戦略は2014年11月時点で5%しかない。経常収支の点で疑問の残るトルコや南アフリカに至ってはゼロだ。その一方で中央銀行がデフレ対応をしているスウェーデンは21.3%と、時価総額加重より多めに配分している。

 3つのシナリオに基づいて投資している点も同社ならではの優位性である。「1つのシナリオに絞って運用すると、万一外れた時のリスクが大きい。3つ以上のシナリオを用意することでリターンの安定性を高めている。シナリオも毎月見直し、その検証も別のチームが行うなど、運用の健全性を高めている」(溜氏)

外債型スマートベータ

国内機関投資家向けに既存RAFIをカスタマイズ

 GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がアクティブとパッシブの間の新しい領域として取り入れるなど、スマートベータが浸透しつつある。スマートベータといえば株式タイプが主流だが、債券タイプも開発され、提供され始めている。
 野村アセットマネジメントの「野村RAFI」シリーズにも債券タイプが追加された。それが「野村RAFI外国債券運用」だ。

 スマートベータの代表的な指数であるファンダメンタル・インデックスの考案者であるロバート・アーノット氏が2002年に設立したリサーチ・アフィリエイツ社の「RAFIソブリン債運用」は、「GDP(国内総生産)」「人口」「国土面積」「エネルギー消費量」という4つのファクターが国別ウェイトの決め手になっていた。

 野村RAFI外国債券運用はこのファクターをカスタマイズし、GDPのほかに「生産年齢人口」「国土面積+EEZ(排他的経済水域)」という3つのファクターで国別ウェイトを決める。

 「技術革新による資源効率の向上を踏まえて『エネルギー消費量』を外し、石油などの海洋資源の重要性やキャッシュフローの創出力という意味でアレンジを加え、『国土面積+EEZ』『生産年齢人口』にした」と話すのは同社シニア・ポートフォリオマネージャーの米嶋光敏氏だ。

 さらにはシティ世界国債インデックスより幅広いユニバースにするため、市場規模基準や信用基準、市場参入障壁基準も見直している。2004年1月-2014年9月までのパフォーマンスを見ると、シティ世界国債インデックス除く日本に対して、超過収益率は0.67%(年率)、トラッキングエラーは1.67%(年率)となっている。運用力を測る尺度となるIRは0.40と債券プロダクトとしては良好だ。

 「海外のスマートベータをそのまま輸入しても、国内の投資家固有の問題解決にはならないことが多く、なかなかしっくりこなかった。当社はリサーチ・アフィリエイト社とは10年以上の協働関係があり、国内機関投資家のニーズも把握している。その結果生まれたのが、既存のRAFIに手を加えた『野村RAFI外国債券運用』だ」と同社クオンツ・アクティブ、インデックス担当CIO(最高投資責任者)の奥山修氏は語る。

バイ・アンド・メインテインで
リターンを堅実に積み上げる

 債券インデックスの非合理性の是正につながり、債券を償還まで持ち切る「バイ・アンド・メインテイン」の運用手法にも合う社債タイプのスマートベータを開発したのがアクサ・インベストメント・マネージャーズである。

 「コスト・流動性フィルター」「構造的債券フィルター」「格付フィルター」という3つのフィルターと、独自のクレジット調査などで償還まで保有して再投資できると確信できる銘柄に絞り込んでいくことで、既存の債券インデックスが持つ債務の高い国や企業の投資ウェイトが大きくなる非合理性をなくす。そのうえで償還まで持ち切った債券を再投資するバイ・アンド・メインテインという運用手法により、リターンを堅実に積み上げていく。

 同社執行役員 投信・投資顧問部長の大津博道氏は「高いアルファを追求するのではなく、再投資という形でゆっくりとリターンを積み上げていくという手法なので、長期運用を志向する機関投資家からは評価を得ている」と胸を張る。

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