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~大量データ時代の新潮流~

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ブルームバーグ

世界で台頭する「CDO」が導く成功
~大量データ時代の新潮流~

2018年06月25日

ジェラルド・フランシス
ブルームバーグ LP、エンタープライズデータ グローバル責任者

インドのBirla Institute of Technology and Scienceで情報工学の学位と経済学の修士を取得。金融技術とデータ管理分野で20年以上の経験を持つ。ブルームバーグ設立者の1人であるトム・セクンダとともに、同社でテクノロジー戦略の実施のサポートや太平洋地域の責任者を務めた。現在はエンタープライズソリューション事業の責任者として、金融機関や事業法人にデータ、ニュース、分析機能、最新のテクノロジーを駆使する統合型リスク、トレーディングソリューションを提供する業務を統括している。


ブルームバーグ LP
エンタープライズデータ
グローバル責任者
ジェラルド・フランシス氏

 サプライチェーン管理に必要な情報の分散は、あらゆる業界において数十年にわたる課題であった。複数のデータソース、情報の質のばらつき、広範にわたる検証が必要な不揃いなデータが、非効率な作業とリスクを生み出してきた。

 金融機関においても、データ調達・供給におけるソースや質の分散は、近年、強化されている規制などが追い風となり、すぐにでも見直されるべき喫緊の課題の1つという認識が広まっている。同時に、データ管理の最高責任者であるCDOという役職を設け、データソースの質と信頼性の向上に注力することで、分散の解決のみならず、ビジネスを次の段階に成長させるインサイトを導く流れが多く観測される。これまで取り扱いが困難であった膨大なデータが、人工知能などの活用により、新たな価値を創造する宝の山になりつつあるいま、その流れはさらに加速しているように見える。

 データの収集、管理、分配のプロセスは、下流における質、一貫性、コスト、価値に大きな影響を及ぼす。より多くのデータと大量のコンテンツを送り込むためのシステムが溢れる今日、データ収集の初期過程における効率化が企業の将来の成功に不可欠になっている。

 ドッド・フランク法、MiFID II、一般データ保護規則(GDPR)、BCBS239といった規制が導入されるなかで、アジアにおいてCDO職はいまだ新しく、形成期にある。ブルームバーグがグローバル規模で実施したCDOを対象とした定性的調査によると、アジアのCDOが現在取り組んでいるのは、データ品質、ガバナンス、コンプライアンスの重要性についての社内主要ステークホルダーによる理解促進といった内容であることがわかった。

 また、CDOという役職がアジアでも確立し、企業が規制要件を把握し適切に対応するようになるにつれ、欧米で見られるように、CDOの焦点がデータから価値、ビジネスインサイトを見出すことへ移行するようになることが明らかになった。結果、データの分散により、源流から発生する問題への取り組みがより注目されるようになってきている。

 一方で、データのサプライチェーンを統括するCDOは、分散されたデータ特有の課題があると指摘している。

 例えば、データソースによって記号と識別子が異なる。基本的なデータ構造およびデータセットが異なるため、それらを統一するために多大な時間と労力、分析的計算能力を必要とする。

 データに一貫性がない、あるいはそれぞれのデータセットが異なる頻度で組み込まれている場合、金融機関の資産評価やリスク計算には矛盾や不一致が発生しうる。もしトレーダーとリスクオフィサーが異なるリスク値を持っていた場合、両者は効果的に機能することはできないばかりか、本当のリスクが見過ごされてしまう可能性がある。

 複数のデータソースによる矛盾に対処する過程で、フロント、ミドル、バックオフィス間の業務フローの断絶を引き起こす可能性がある。複数のソースによるデータは、結果として経営リスクとコストの増加へとつながる。

規制環境や市場慣習が多岐にわたるアジアの特徴

 金融サービスセクター全体に通じて言えることは、データソースが複数にわたるため、より複雑さが増し、データ整理のためにより多くの人的・技術的資本を投資しなくてはならないということだ。複数のデータ提供システムはデータの統合やメンテナンスの際の重複につながり、結果としてコスト効率の低下を招く。

 とくにアジアでは、データの分散は雑多な地域、法域、規制環境間で起こるため、多次元的になる傾向がある。欧州や米国ではMiFID II、ドッド・フランク法といった統一された法規制があるが、アジア全体で統一された1つの規制は存在しない。さらにアジアでは政治、経済、市場、事業環境も国や地域で大きく異なることも、データ統合を非常に難しくしている。

 一方で、データそのものと金融サービスの提供がますますボーダーレス化していることに加え、アジアで事業を行う企業も欧米の規制を遵守、あるいは少なくとも適合している必要があるために、データ管理への理解と統合を求める傾向が強まっている。

 こういった難しい環境下にあるアジア企業だが、いくつかの点から、この課題に対応することはそれほど難しくないと考えている。

 例えば、昨今の機械学習や予測分析の発展により、企業はデータに関し複数の第三者機関に頼ることなく1つのデータソースで管理できるよう、自社でデータレイク(大規模なデータを収集し管理するための領域)を構築する流れが出てきている。その初期段階において正しいデータの選択をすることが、多くの企業の将来の命運を分けることになる。

 実際にブルームバーグでも、近年は金融サービス業界のデータに対する需要が幅広く、常に進化していることを目の当たりにしている。具体的には、全ての資産クラスと金融商品、信頼のおける出典元とマスターデータ、リアルタイムの市場データ、プライシングおよび評価データ、そしてビジネスに不可欠な分析およびリスク計算といった全てをカバーする、包括的なソリューションへのニーズが高まっている。とりわけリアルタイムのデータは市場の流動性の評価、ボラティリティの追跡、リスク管理を行う企業にとって不可欠であり、需要の高まりが顕著だ。

 これは広範な規制および会計要件により、複数の追跡可能なデータリンケージが必要とされ、データへのニーズがより複雑化している一方で、CDOに求められるものがデータへのアクセスや扱い、関連する技術的プロセスの単純化であることを裏付けている。

新興国の企業は単一のデータソースへ

 興味深い点は、新興市場における金融サービス企業は、長年にわたり組織として確立されたグローバルな企業よりも有利な立場になりうることだ。新興市場における企業は、コストにより敏感でリソースが限られていることなどから、逆にデータ分散の罠に陥らないよう手立てを打っている。

 そうした企業の多くは、より軽く、柔軟性と機敏性を備えたクラウドベースのプラットフォームを好む傾向にある。複数のデータソースを利用することで、芋づる式に発生するさまざまなコストが削減でき、コンプライアンス管理も効率的に行えるようになる。

データ管理コストを半分に

 長期的には、金融業界はいずれ必要な一次データを1つのデータソースから収集する方向へ向かい、単一のデータソースを提供する、信頼のおけるテクノロジーパートナーを求めるようになると見ている。

 データソースの単一化により、さまざまな部門間にデータの一貫性が生まれるほか、異なる事業のワークフローに潜むデータの断絶が防止でき、運営リスクと全般的なデータコストの削減につながる。

 ブルームバーグの顧客企業のCDOにとって、目下の最も大きな悩みの種はコストである。当社の調査では、回答者の60%が一次データ提供業者を1社に絞る計画があると回答しており、31%がデータ提供業者数を減らすことを検討しているという結果が出ている。

 実際、当社が提供するような包括的なデータセットと業界トップクラスのデータ配信、統一データモデルを活用することで、データ管理のコストを半分または3分の2にまで削減することができたという例もある。

 市場データや分析、インサイトがより重要となり、ビジネスを強化するための資源としてのデータニーズが拡大するにつれ、分散の少ないデータソースから質のよいデータを収集することは、アジア各国のCDOおよびグローバルデータリーダーにとって最優先の課題となることは間違いないと考えている。