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アクティブマネージャーの運用戦略

ネット独自・先行記事

GAM証券投資顧問

新たなリターンの源泉を探る
アクティブマネージャーの運用戦略

2018年02月21日

世界の運用資産に占めるパッシブ運用の割合が相対的に高まるなかで、アクティブマネージャーには何が求められるのか。アクティブ運用に特化した資産運用会社のGAM証券投資顧問は、都内で機関投資家に向けたセミナーを開催。4人の運用担当者がそれぞれの運用戦略について語った。(取材日:2018年1月23日)

GAMキャットボンド戦略/ILS戦略

先駆者としての経験と最先端のリスク評価モデル

ジョン・セオ氏 キャットボンドは「大災害債券」とも呼ばれる、自然災害を対象とする保険を証券化した保険リンク証券(ILS)の一種である。ILS戦略のテクノロジーをいち早く確立し、同戦略では世界最大級の運用資産残高を持つFermat Capital Managementは、2004年にGAMと提携を開始し、ILS戦略に特化したプロダクトを投資家に提供している。

 Fermatの共同創業者のジョン・セオ氏は、2017年はキャットボンドにとって歴史的な1年だったと振り返る。「年後半に米国で大型のハリケーンが立て続けに上陸したほか、メキシコ地震の発生、さらには米国カリフォルニア州の山火事と大規模な災害が続いた。キャットボンドの年間の新規発行額は史上初めて100億ドルを超え、翌2018年には総発行残高が300億ドルの規模に達する見込みだ」(セオ氏)

 キャットボンドの運用の成否は、災害の進展とその影響をいかに的確に予測できるかが重要となる。2017年9月に米国のフロリダ半島に上陸したハリケーン「イルマ」に対して、政府やメディアは壊滅的規模の被害を予想し、被害額は400億ドルに達するとしていた。セオ氏は当時をこう振り返る。「予想される被害の大きさから損失の拡大を恐れて、多くの投資家がキャットボンドを投げ売ってしまった。しかし我々は、ハリケーンに関するさまざまなデータを分析した結果、ハリケーンが上陸する前の時点で被害額は200億ドルを下回ると予測した。そもそも、政府機関は最悪の可能性を考え、保守的な予測を立てることが多い。我々は現実のデータのみに基づいて予測する。実際の被害額は、予測通り150億ドル程度にとどまる見込みだ。我々は値下がりしたキャットボンドを買うことができ、それが額面まで戻ったことで大きなリターンを手にすることができた」

 Fermatのキャットボンド戦略の特徴は「マーケットの先駆者としての深い知識や経験に基づく運用力と、最先端のリスク評価モデルによる投資判断」とセオ氏は語る。「GAMキャットボンド戦略」のパフォーマンスは、2004年12月1日を起点として2017年末までの期間で年率7.1%に達する(手数料控除後。例証を目的とする同戦略のパフォーマンス)。

 今後のILS市場の展望についてセオ氏は、「再保険がカバーしていないリスクの量は10年で倍増する見込みであり、リスクの新たな引き受け手としてILS市場の拡大が期待される。ILS戦略やキャットボンドへの投資機会は、今後も拡大を続けるだろう」と述べた。

GAM絶対収益型債券戦略

マイナスを最小限に抑える戦略、金利上昇局面で強みを発揮

ティム・ヘイウッド氏「GAM絶対収益型債券戦略」は、投資適格債や転換社債、ハイ・イールド債など、世界の幅広い債券とさまざまなデリバティブ(金融派生商品)を対象として、ロングとショートの双方で収益を狙う運用戦略である。同戦略を統括するGAMのインベストメント・ディレクター兼債券部門ビジネス・ユニット・ヘッドのティム・ヘイウッド氏は、債券市場の特徴を「高いリターンを上げるセクターが毎年のように変化する難しい市場であり、収益を上げ続けるためには資産配分を絶えず変え続けなければならない」と評価する。

 今後の債券市場の動向について、ヘイウッド氏は先進国のインフレ率が上昇している点をポイントとして挙げた。「先進国の経済成長が要因でインフレ率は上昇傾向にある。期待インフレ率が1bp上がると、債券の利回りは3bp上がることが知られている。2018年は、主に先進国で金利の上昇を予想している。一方で、新興国はインフレ率が下がっており、当面は安定的な推移を見せると考えられる」

 量的緩和の縮小の影響については、「国債の買い手が減っており、また国債のイールドカーブがフラット化している。投資家が利回りを求めて社債やエマージング債に向かった結果として、買われ過ぎが懸念される」とヘイウッド氏は語った。

 「GAM絶対収益型債券戦略」の投資方針についてヘイウッド氏は「先進国債券はデュレーションをショートとし、新興国はこれまでは強気な姿勢だったが、今後はポジションを縮小する。転換社債に対しては慎重なスタンスであるが、全体的なポジションは減らさない。為替についてはドル安傾向を見込んで米ドルはショート、英ポンドも割高との判断からショートとする」などと述べた。

 同戦略はアップサイドに期待しつつ、ロスは最小限に抑えることを目指しており、これまでの実績では特に金利上昇局面で強みを発揮していた。「インフレ率が上昇し、金利も上がることが見込まれる2018年の当戦略のパフォーマンスを、私自身も期待している」とヘイウッド氏は結んだ。

GAMオルタナティブ・リスク・プレミア戦略

ロングオンリーとは異なる手法で
伝統的資産と低相関のリスクを取る

ラーズ・イェーガー氏 伝統的にアルファとみなされていた領域を切り分けて、従来のマーケット・ベータ以外のシステマティック運用によって得られる収益を「オルタナティブ・リスク・プレミア」と位置づけるのが、「GAMオルタナティブ・リスク・プレミア戦略」の基本的な考え方である。

 伝統的な運用手法との相関が低く、絶対収益を狙うための戦略は長らくヘッジファンドの役割とされていたが、現在では状況が変化していると語るのは、GAMでオルタナティブ・リスク・プレミア責任者を務めるラーズ・イェーガー氏だ。「2002年から2007年にかけて、ヘッジファンドの平均的なリターンは運用手数料の控除後で6%強だった。しかし、2009年から2017年までの平均は2.5~3%程度まで下がってしまった。もし同程度のパフォーマンスをより低い手数料で実現できれば、投資家の需要に合致したリターンを提供できるのではないか」

 オルタナティブ・リスク・プレミア戦略の基本は、相場変動リスクのみを取るロングオンリーの投資とは異なる手法でリスクを取ること。具体的には、「バリュー」「モメンタム」「キャリー」の3つのスタイルでの投資である。いずれも株式だけでなく、債券や為替、コモディティなどあらゆる資産クラスが対象となる。「バリュー」とは、過小評価されている資産に投資する戦略。「モメンタム」はトレンドが持続する傾向を利用した戦略。そして「キャリー」は資産ごとの利回り格差から収益を得る戦略だ。

 「この戦略の魅力は、伝統的資産との相関が低く、なおかつ同じスタイルでも資産クラス間の相関が低いので、分散の効いた投資が可能となることだ。複数のスタイルと資産クラスを適切に組み合わせることで、期待リターンを上げ、ボラティリティを低くすることができる」(イェーガー氏)

 こうした投資戦略をシステマティックに行うことで、運用の透明性を確保しながら低い手数料を実現する。運用実績は、2012年4月1日から2017年末まで年率4.2%(手数料控除前、コンポジット)のリターンとなった。2004年を起点とすると、2017年末までの年平均リターンは5.2%(例証を目的とする同戦略のパフォーマンス)となっている。

GAM日本株式集中投資戦略

銘柄選択のみを収益の源泉として
長期投資で超過リターンを狙う

三戸玲子氏 日本企業のなかから業界をリードする企業を厳選する「Japan Equity Leaders戦略」に基づいた運用を行う「GAM日本株式集中投資戦略」。その特徴は「集中投資」「長期投資」「等額投資」の3つの方針に集約される。

 投資する銘柄は、20~30程度まで絞り込む。2018年1月時点で保有しているのは23銘柄。一度投資した銘柄は基本的に5年以上保有し、現在のポートフォリオの大半は10年ほど保有する銘柄だ。各銘柄へ等額に配分(23銘柄の場合1銘柄4.35%程度)し、年1回のリバランスを行う。

 多くのアクティブマネージャーは、特定の銘柄についてオーバーウェイト、あるいはアンダーウェイトを行うことでより大きなリターンを狙うが、同戦略ではそうした手法を採用しない。同戦略のポートフォリオ・マネジャーを務める三戸玲子氏は、長期投資と等額投資を重視する理由について次のように説明する。

 「銘柄によっては季節要因や突発的な要因のため、一時的にパフォーマンスが弱まることがある。そのたびに銘柄を入れ替えたり、ウェイトを変更したりするのは、該当する銘柄だけでなく、他の銘柄とのバランスを考慮しながら売買しなければならず、大きな手間がかかってしまう。そうした手間をかけるより、当戦略では銘柄選択に運用チームのリソースを集中させ、銘柄選択のみを収益の源泉にしたいと考えている」

 銘柄選択においては、4つのフィルターを基準として優良企業を発掘する。1点目は売上と収益の安定的な成長。年平均5%以上の成長率を目安とする。2点目が資本効率。売上に対する固定資産の割合が低い企業が評価される。「アセットを使わずに売上を上げられるのは、その企業に技術などの裏付けがあるということ。市場環境が変化した際に、アセットの価値が毀損することによる影響が相対的に小さいのも重要だ」(三戸氏)

 3点目は収益性。平均ROEが10%以上を基準とするが、ROEの値だけでなく、その水準を長期的に維持できるかどうかを重視する。4点目が財務指標。ネットDEレシオ(自己資本に対する負債の割合)が100%未満の企業が投資ユニバースの対象となる。

 Japan Equity Leaders戦略は、2008年7月の運用開始から2017年末までのすべての年において、対TOPIXで超過収益を獲得した。株式市場全体が上昇した2017年においても、TOPIXを大幅に上回るリターンを実現している。