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日本投資・運用フォーラム2018 講演レポート

ETF市場34兆円の内実

佐々木 康平

三菱UFJ国際投信株式会社
法人投資家営業部 シニアマネジャー

金融機関の預貸ギャップ対応で進む有価証券運用

佐々木 康平氏

2018年5月末時点のETF市場は、約34兆円まで拡大しています。このうち、日本銀行の買い入れ額は約24.4兆円あり、残りの10兆円程度がそれ以外の投資家からの資金です。

日銀の買入を除くと、ETFの市場規模が拡大した最大の理由は、マイナス金利政策に伴う、日本国債の利回り低下です。この影響を最も強く受けている金融機関では、預金残高が増加する一方で貸出残高が伸び悩む”預貸ギャップ”の拡大に歯止めがかからず、2018年4月にはこの金額が327兆円にまで増えています。金融機関の貸出金利も低下しており、貸出による収益環境は非常に厳しい状況です。

金融機関は、この預貸ギャップを埋めるため、有価証券による運用に乗り出しています。地方銀行のポートフォリオの推移を見ると、リーマン・ショック以降は、日本国債の買入れによって有価証券の投資残高を増加させてきました。その後、外国債券の比率が増し、近年では、より利回りの高い株式やREIT(不動産投資信託)商品へのシフトが進んでいます。

2017年7月時点のETF残高の投資家別比率は、日銀の買い入れ額が多くを占めると考えられる信託銀行を除くと、「都銀・地銀」が33.6%で最も多く、信用金庫などの「その他の金融機関」が18.5%、「個人その他」は14.3%となっており、都銀、地銀、その他の金融機関を含めると、4兆円程度の保有があります。ETF残高の商品別比率を見ると、日経225とTOPIXが全体の約9割を占める状態は変わらないものの、JPX日経インデックス400や国内REIT、レバレッジ型などへ資金が流入しています。

ETFの流動性向上が期待されるマーケットメイク制度

こうしたなか、東京証券取引所は、2018年7月からマーケットメイク制度を導入しました。この制度は、東証がETFの銘柄ごとにマーケットメイカーを指定し、指定を受けたマーケットメイカーが気配提示義務を履行することで、彼らがインセンティブを得ることができる制度です。マーケットメイカーの参入によって流動性が高くなる銘柄は、投資家が売買したいタイミングで、より良い価格の取引ができるようになるため、市場を活発化させる制度として注目されています。

三菱UFJ国際投信株式会社

機関投資家のニーズに沿った新商品開発

当社は、MAXISシリーズとして現在、16本のETFを運用しています。商品開発においては、機関投資家のニーズ動向を重視しています。

インカム商品として、REIT指数に連動する3本のETFをご紹介します。『MAXIS Jリート上場投信(1597)』は、東証REIT指数に連動する成果を目指して運用するETFで、J‐REIT全59銘柄に分散投資が可能です。これまでは、REITのETFと言えば、この東証REIT指数に連動する成果を目指す商品のみでした。そこで、時価総額上位銘柄を組み入れる『MAXIS Jリート・コア上場投信(2517)』や、予想分配金利回りの高い銘柄にフォーカスする『MAXIS高利回りJリート上場投信(1660)』など、各指数ベンダーと協力しながら商品の幅を広げています。

また、マーケットニュートラル型の『MAXIS日本株高配当70マーケットニュートラル上場投信(1499)』を組成しています。昨年、私募での売れ筋の一つがマーケットニュートラル型であったこともあり、ETFでも組成しました。上場オプションを活用することで、商品性に工夫を持たせています。

一方、キャピタル狙いとして捉えられる『MAXIS JPX日経中小型株指数上場投信(1492)』は、上場企業3,600社程度のなかから、時価総額や売買代金、ROE(自己資本利益率)などが高い銘柄を200社選んで算出される株価指数に連動するETFです。大型株式に比べて相対的にパフォーマンスの良い中小型株式に分散投資できるETFとして、純資産総額を増やしています。

金融機関の運用難が続いており、これに寄与する商品が増えきたことで、ETFの市場規模が拡大したという側面があります。マーケットメイク制度による流動性の向上や、金融機関の運用ニーズをくみ取る資産運用会社の商品開発力によって、さらなる、市場の拡大が期待できると考えています。

講演一覧

新芝 宏之氏
環境変化の中でのアナリストの役割

新芝 宏之氏

日本証券アナリスト協会

松元 浩氏
適温相場後のポートフォリオ運用

松元 浩氏

ピクテ投信投資顧問

高橋 庸介氏
欧州で拡大する株式厳選投資とESG

高橋 庸介氏

コムジェスト・アセットマネジメント

横谷 宏史氏
「汎アジア債券」と「中国債券」による投資ソリューション

横谷 宏史氏

ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ

佐々木 康平氏
ETF市場34兆円の内実

佐々木 康平氏

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