プロのための金融誌|J-MONEY[ジェイマネー

日本投資・運用フォーラム2018 講演レポート

欧州で拡大する株式厳選投資とESG

高橋 庸介

コムジェスト・アセットマネジメント株式会社
代表取締役

持続的な成長を促す・モニタリングする手段

高橋 庸介氏

現在、世界のESGに関する運用資産額とPRI(責任投資原則)の署名機関の数を見ると、ともに大きく拡大しています。内訳を詳しく見ると、地域間の格差の開きが目に付きます。ESGの取り組みでは、欧州が先行しており、その後を米国が猛追をする状況です。日本は、2012年の段階で投資残高はゼロ、2014年に1兆円、2016年に57兆円、2017年に136兆円と、ここ数年で急速な広がりを見せています。

一般的に、国連で提唱されたPRIがESG投資拡大の契機として語られることが多いですが、それ以前からESG投資の原型は存在しています。欧州では、90年代頃から環境に対する負荷、社会問題、児童労働などの社会問題のほか、コーポレート・ガバナンス(企業統治)に対する投資家の意識は高まっており、その集大成がPRIという訳です。

PRIでは、ESG課題への取り組みについてさまざまな行動指針が示されていますが、重要な点はESGが企業の持続的な成長を促し、それをモニタリングするためのツールであるということです。ESG投資が企業の持続的な成長と株価の上昇につながり、長期的なパフォーマンスが向上するという循環こそ、ESG投資の意義となります。

ESG投資で遅れをとる日本には、過去に「エコファンド」ブームがありました。規模の大きいファンドで4000億円ほどの残高を積み上げるファンドも存在しましたが、その後勢いは衰え、現在では影を潜めています。当時、環境配慮を前面に押し出し、パフォーマンスを二の次としてしまったことで、投資家がESG投資から離れてしまった経緯があります。ESG投資とパフォーマンンスの関係は重要であり、国内でESG投資が浸透していくためにも必要な考え方なのです。

コムジェスト・アセットマネジメント株式会社

「長期投資」と「高いアクティブ・シェア」に着目

2009年、ノートルダム大学のマーティン・クレマーズ教授が発表した論文の中では、パフォーマンスが優れたファンドに共通する要素として、「高いアクティブ・シェア」と「長期投資」を挙げています。このアクティブ・シェアは、株式を厳選して確信度の高い銘柄に絞り込めば数値は高くなります。また、確信度が高い銘柄は、自然と保有期間が長くなり、それに伴い売買コストも低減されます。「高いアクティブ・シェア」と「長期投資」は、まさに厳選投資やESG投資との相性がよく、当社の運用スタイルに通じる要素と言えます。

1985年にパリで設立した当社は、ESG投資においてパフォーマンスを重視する観点から株式の厳選投資のみを実践してきた独立系の運用会社です。当社が、厳選投資にたどり着いた背景には、創業者の運用経験があります。当時、某大手銀行でベンチマーク運用を行っていた創業者は、「なぜ、投資したくない企業にも投資をするのか。確信度の高い銘柄を厳選し、その銘柄を運用することで信託報酬を受け取るべきなのではないか」と強く感じたそうです。こうした創業者の想いが、当社の運用哲学に反映されています。

実際に投資対象とするのは「クオリティグロース」企業になります。クオリティグロースとは、長期間高い成長を遂げる企業の特性のことです。具体的には、最低5年間、EPS(1株当たり利益)の二桁成長が可能だと考えられる企業を指します。このような基準から厳選した企業に長期間投資することで、優れたパフォーマンスの創出を目指す運用スタイルです。

二桁以上の成長を遂げる企業を見極めるうえで、参入障壁を判断材料として重視しています。これは、ブランド力や特許件数などを基に盤石な顧客基盤を築けているかを図るうえで効果的です。そのほか、成長の持続性を測る指標として、長期の事業ビジョンや経営陣の誠実性を見ています。運用チームの投資判断は、キーマンリスクを排除するため「意志決定は全員一致」としています。時間はかかりますが、多数決ではなく全員一致による投資プロセスを徹底してきたことが、当社のパフォーマンスの実績につながっていると考えます。

当社の「グローバル株式戦略」の1991年から約26年間の年平均リターンを見ると、11.9%となっています。この二桁以上のパフォーマンスの成果は、当社が投資対象の基準とするEPSの二桁成長に連動していることがわかります。株式投資の前提「株価は短期的には需給の影響によって動くが長期的には企業の利益に収斂する」という話があります。この投資の考え方を、当社の運用成果は体現しているのです。

講演一覧

新芝 宏之氏
環境変化の中でのアナリストの役割

新芝 宏之氏

日本証券アナリスト協会

松元 浩氏
適温相場後のポートフォリオ運用

松元 浩氏

ピクテ投信投資顧問

高橋 庸介氏
欧州で拡大する株式厳選投資とESG

高橋 庸介氏

コムジェスト・アセットマネジメント

横谷 宏史氏
「汎アジア債券」と「中国債券」による投資ソリューション

横谷 宏史氏

ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ

佐々木 康平氏
ETF市場34兆円の内実

佐々木 康平氏

三菱UFJ国際投信

日本投資・運用フォーラム 開催概要 »