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日本投資・運用フォーラム2018 講演レポート

適温相場後のポートフォリオ運用
~創業213年の運用会社から見える世界~

松元 浩

ピクテ投信投資顧問株式会社
常務執行役員 グローバル資産運用部長

プライベート・バンク業務で培われたピクテの資産配分戦略

松元 浩氏

ピクテはスイスのジュネーブに本拠を構える資産運用を中心とした金融グループで、創業は213年前の1805年です。プライベート・バンクが母体であることから、今も多くの王侯貴族やファミリーオフィスのお客様の資産管理を担っています。グループの歩みを振り返ると、1830年頃から既にスイス内外の株式や債券に投資していました。1850年当時は新興国だった米国の鉄道債券や金鉱株の保有を記録した帳簿も残っています。このようにピクテは、実に150年以上も前から国際分散投資や新興国投資を実践しており、分散投資を通じてお客様の資産を安定的に運用してきた歴史を有しています。

現在のピクテの資産運用に関する最高意思決定機関が、ピクテ・ストラテジー・ユニット(PSU)です。PSUは、株式や債券の最高運用責任者(CIO)やリサーチ部門、現場の運用部門のインベストメント・マネージャーなど様々な立場のスタッフで構成。戦略的資産配分の基礎となる今後5年間の長期投資戦略と、戦術的資産配分の基礎となる短期の投資戦略をそれぞれ策定し、グループの各マルチ・アセット戦略のポートフォリオ運用に活かしています。

ベータではなくアルファを追求する時代

2008年のリーマン・ショック後の世界経済では、主要国の中央銀行の大規模量的金融緩和に支えられた「適温相場」が続いてきました。しかし今後、米国のフェデラル・ファンドレート(FF金利)が3%まで、先進国国債の利回りも現状より1.5%程度上昇すれば、ボラティリティの上昇や流動性の低下によって金融市場が不安定化するリスクに警戒が必要です。特に長く続いた低金利環境下で民間債務残高が積み上っている点は懸念材料で、ピクテではクレジット投資に関して注意するようお客様に呼びかけています。

さらに今後5年間のグローバル投資環境を考えると、世界の経済成長率は3%程度へと低下する一方、インフレ率は次第に上昇に向かうと思われます。成長鈍化とインフレ上昇というマクロ経済環境は金融資産にとって好ましくない組み合わせで、株式50%、債券50%の標準的なバランス型ポートフォリオでは、今後5年間で実質的なリターンを殆ど生み出すことが出来ないとピクテは想定しています。その反面、新興国の株式・債券は相対的に高いリターンが見込まれ、米国の貿易問題を巡る思惑からドル安圧力が強まればゴールドにも投資妙味があると考えています。

このように難しい環境下にあって、投資家はどのような投資行動をとるべきでしょうか。まずは期待収益率の低下を補うため、一層のリスクテイクは不可避となるでしょう。ただし収益機会の多様化という観点から、新興国を含めた国際分散投資を徹底するだけでなく、プライベートエクイティや不動産、ヘッジファンドといったオルタナティブ資産にも目を向けて頂きたいと思います。債券運用においても、絶対収益型の戦略を採用するなどして金利上昇局面に備えることが肝要です。このように今後5年間は右肩上がりの相場が見込みづらいことから、ベータではなくアルファを追求する投資戦略が求められます。

ピクテ投信投資顧問株式会社

4つの柱に基づく規律ある運用プロセス

リスクを高めないとリターンの獲得が困難な適温相場後のマーケット環境下では、様々な資産へと分散投資を行うと同時に、市場環境の急な変化に迅速に対応する機動性も必要になってきます。ピクテは戦術的な資産配分戦略においても豊富な経験と実績を有しており、資産配分戦略レポート「バロメーター」は、日本のお客様にも月次で配信して好評を博しております。

ピクテの戦術的資産配分は「マクロ経済」「流動性」「バリュエーション」「センチメント」の4つの柱に注目して意思決定されます。この4つの柱はまずピクテの各分野の専門家によって分析され、その後PSUメンバーによって様々な角度から検討が加えられます。こうした規律ある運用プロセスを踏まえれば、時代やマーケット環境が変わろうとも、アセット・アロケーションの取捨選択で大きく外すことはない――。1805年の創業以来、213年の歳月によって培われたピクテならではの投資哲学といえるでしょう。今後5年間のマクロや資産価格の見通しを根拠とした戦略的資産配分と、月次ベースの戦術的資産配分を基本に規律あるプロセスで高い再現性を目指すピクテのマルチ・アセット戦略は、日本の投資家の皆様にとっても有意義なアプローチであると確信しています。

講演一覧

新芝 宏之氏
環境変化の中でのアナリストの役割

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日本証券アナリスト協会

松元 浩氏
適温相場後のポートフォリオ運用

松元 浩氏

ピクテ投信投資顧問

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欧州で拡大する株式厳選投資とESG

高橋 庸介氏

コムジェスト・アセットマネジメント

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ETF市場34兆円の内実

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