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復権の可能性を探る

アセットマネジャーズVol.3 注目記事

特別座談会

アクティブ運用の進むべき道は?
復権の可能性を探る

指数に連動したリターンを目指すパッシブ運用の拡大により、市場平均を上回るアルファ(超過収益)を狙うアクティブ運用に逆風が吹き荒れる。アクティブの逆境はこのまま続くのか。それとも復権の可能性はあるのか─。アクティブの存在意義や今後の行く末などをアクティブハウスのトップが語り合った。(取材日:2018年3月30日)


〈左から〉
■出席者
GAM証券投資顧問 代表取締役社長 岸本 志津
コムジェスト・アセットマネジメント 代表取締役 高橋 庸介
ベイビュー・アセット・マネジメント 代表取締役 兼 CEO 八木 健
■モデレーター
マーサー ジャパン 資産運用コンサルティング部門代表 取締役 大塚 修生

パッシブの偏重は株価形成に悪影響を与える

大塚 パッシブ運用の存在感が増すなかでアクティブ運用を取り巻く環境はどうか。

八木 運用の本場である米国では、パッシブの広がりを受けて、アクティブに対するフィーの引き下げ圧力が高まっている。しかし、エッジの効いたアクティブ投資をしている運用チームは、フィーの引き下げ競争に巻き込まれることなく、これまでの水準を保っている。フィーが高くてもパフォーマンスが伴っていれば、引き下げの圧力がかからないのだろう。

岸本 2017年の欧州ファンド市場の資金流入量は前年比9%増で、ETFを含むパッシブファンドは18%の資金流入となった。

 資金流入の増加率だけを見るとパッシブファンドが優勢に見えるが、パッシブファンドが欧州ファンド市場全体に占める規模は16%程度に過ぎず、アクティブファンドが優勢であることに変わりはない。ただし、株式型のパッシブファンドのシェアは、2017年の1年間で24%から26%に伸びている。株式型ではパッシブファンドのシェア拡大は顕著といえる。

高橋 アクティブハウスの一社として、アクティブに対する誤った認識が広がっていることに懸念を持つ。その一例が「アクティブのパフォーマンスは、パッシブに劣後する」というものだ。アクティブのパフォーマンスがパッシブより高いことを示すデータもあり、欧州には安定的に超過収益を創出しているアクティブマネジャーも少なからず存在している。

大塚 パッシブの拡大は、資産運用業界にどのような影響をおよぼすだろうか。

岸本 欧州ではMiFID2(第2次金融商品市場指令)の影響もあり、コスト開示の透明性とコスト水準に対する投資家の目が厳しさを増している。仮にアクティブファンドの手数料を差し引いたネットのパフォーマンスがパッシブファンドより低ければ、当然フィーの値下げを強いる動きは加速するだろう。だが、ネットのパフォーマンスがインデックスを上回るアクティブファンドもある。アクティブそのものが否定されているわけではなく、期待通りのパフォーマンスを出しているアクティブマネジャーと、そうではないアクティブマネジャーとの選別が進んでいる。

八木 パッシブの偏重は、株価形成に悪影響を与える。決算の中身ではなく、見た目に反応して株価が動くようになり、ファンダメンタルズを踏まえた分析結果が株価に反映されるまでに数日間、場合によっては次の決算まで待たないとならないこともある。加えて、株価が動き出すと止まらなくなる弊害もある。

 ただし、株価のミスプライスが多くなるのは、アクティブマネジャーにとっては逆にチャンスともいえる。自分たちの銘柄選定能力を信じ、我慢する胆力さえあれば、中長期的には超過収益獲得の機会が増えるからだ。このような胆力は投資家にも求められる。アクティブファンドに運用を任せる以上は、少なくとも1年、できれば3年はパフォーマンスのクオリティを見極めてほしい。

高橋 パッシブは、投資家のニーズや流動性の観点から必要な運用スタイルであることは間違いがない。パッシブマネジャーがあらゆる銘柄を買ってくれるから、我々が手放したい銘柄を売却することもできる。とはいえ、経営上問題がある企業、あるいはマーケットから淘汰されるべき企業にも資金が供給されるのは、健全な価格形成機能の観点からは問題が大きいといえる。

市場に潜む「非効率性」
局面問わず超過収益を狙う

大塚 アクティブの存在意義は何か。

高橋 アクティブの存在意義は、個々の運用哲学や投資スタイルによって大きく異なる。当社は、今後5年間で安定的に2ケタ成長が見込める企業に集中投資するスタイルで、需給的要素のある「トランプラリー」のような局面には弱い。しかし、グローバル株式戦略の場合、このような局面を含めても直近5年は、年率リターンで5%程度オーバーパフォームしている。5年の時間軸を受け入れてくれる投資家であれば、我々の運用哲学、投資プロセスを理解してくれるだろう。

岸本 アクティブマネジャーには、市場のボラティリティが高まったり、市場の成長が見込めないなかでも、株式や債券といった伝統的資産に投資しつつ、ベータとの相関性を大幅に下げるような運用戦略の提供も求められる。

 アクティブのなかには20銘柄だけに投資する“どアクティブ”な戦略もある。パッシブと異なって運用に制約がないため、自分たちの運用哲学や投資プロセスに基づいて超過収益を狙うこともアクティブマネジャーの役目といえよう。

八木 アクティブは、需給相場をはじめ、ファンダメンタルズが株価に反映されない局面が苦手だ。しかし、マーケットには常に非効率性が潜んでいる。いかなる市場環境でも非効率性をとらえ、超過収益を出すことがアクティブの役割になる。

 また、パッシブにはないアクティブの強みは、銘柄選択機能だ。例えばイノベーション(技術などの革新)投資でこの強みを発揮できる。イノベーションを起こす企業は常に存在する。そうした企業は多くの場合、時価総額が小さく、パッシブではそもそも投資対象にすらならず、成長の恩恵を受けられない。しかし、アクティブは成長初期段階から株価上昇を捉えることができる。

誤った認識を生み出す「クローゼット・トラッカー」

岸本 志津氏
「New Actives」という
カテゴリーをつくり、
新しいアクティブマネジャーとしての
存在意義を訴える ──岸本氏

大塚 アクティブが勢いを取り戻すために期待している新しい技術や運用戦略は。

岸本 投資家はパッシブやアクティブという運用スタイルではなく、コスト控除後のパフォーマンスが高い運用商品を求めていることから、今後はパッシブとアクティブの中間に属する運用商品が増えていくだろう。一例がクオンツを使って、ヘッジファンドと同程度のリターンをより低い手数料で実現する「リスクプレミア戦略」だ。さらに従来なかった資産クラスで、いわゆるインデックス運用が存在しない「CATボンド戦略」など、我々は投資家のニーズに応えた「New Actives」というカテゴリーをつくり、新しいアクティブマネジャーとしての存在意義を訴えていく。

 もう1つは、AI(人工知能)やビッグデータといった新技術の活用だ。一般に、アクティブのパフォーマンスはマーケット全体が緩やかに上昇する局面ではパッシブに劣後するが、AIやビッグデータを用いることで不得意な局面でも超過収益の獲得を目指す。

八木 我々がいま、とくに注力したいと考えていることが2つある。1つ目は中小型株投資だ。しかも、20~40銘柄に投資先を絞り込む集中投資戦略になる。市場参加者に知られていない成長性やカタリストを有する企業を誰よりも早く発見することで、大きなリターンが期待できる。

 2つ目がAIとアクティブの融合だ。弊社は昨年シリコンバレーにあるAI専門の資産運用会社と提携し、市場環境の変化にも自動対応するAIによるアクティブ投資を2018年度に日本向けに提供する予定だ。モデルの生成から選択・変更まですべてをAIが行う戦略で、米国では2017年春より運用をスタートしている。

高橋 長期的な視点でアクティブの活性化を促すには、いくつかの論点がある。まずはフィーだ。製造業であれば、さまざまな角度から見たうえで適切な価格が決定されるが、日本の資産運用業界ではフィーに関する議論があまり盛り上がっていない。フィーをめぐる議論では米国が先行しているが、それに追随するのではなく、日本の資産運用業界が決めたフィー体系を世界標準にするつもりで検討すべきである。

 資産運用業界を取り巻く状況が大きく変わっているのにもかかわらず、投資家とのコミュニケーションにもあまり変化が見られない。資産運用業界の“ぬるま湯体質”にしっかりメスを入れ、真摯に反省していかないと、アクティブの活性化は難しい。

 個人的に最も問題視しているのは、アクティブを標榜して高いフィーを要求しながら、実際にはパッシブに近い運用を行う“クローゼット・トラッカー”だ。クローゼット・トラッカーがアクティブに分類されるから、「高いフィーをもらっている割にパフォーマンスが良くない」という誤った認識が生まれる。

 インデックスとほぼ同じ運用をやりながら、アクティブ並みのフィーをとって勝てるわけがない。ノルウェーやデンマークなど北欧では大きな問題にまで発展しているが、日本でもしっかりと熟議すべきだ。

欧州では10%以上が導入するパフォーマンス・フィー

高橋 庸介氏
我々の持ち味である
“どアクティブ”な運用の“ど”を
どこまで濃くしていくかが
重要だ ──高橋氏

大塚 アクティブの今後はどうなっていくか。

高橋 フィーをはじめ、業界として取り組まなければならない問題は山積している。例えばスチュワードシップ・コード(機関投資家の行動指針)だ。多くの機関投資家が受け入れを表明したものの、当社も含めて取り組みは不十分といえる。企業が守るべき行動規範を示したコーポレートガバナンス・コードも広がりを見せているものの、表面的な取り組みにとどまっているケースが少なくない。

 アクティブの勢いを取り戻すうえで人材の育成も欠かせない。資産運用業は人が核だが、業界では「人を育てる」という意識があまりにも薄い。投資家への情報提供の強化から、質の高いサービスを提供できるような人材を育成しないとならないだろう。

八木 パッシブ化の流れはいずれ止まる。その後、手数料の値下げ競争に巻き込まれて苦境に陥るアクティブハウスと、エッジのある運用とパフォーマンスを武器に生き残るアクティブハウスの二極化が進むと見る。我々は後者のタイプとして、パッシブ化の進展で頻発する市場のミスプライスをとらえ、高いパフォーマンスを上げていきたい。

 スマートベータのような低コスト運用で超過収益の提供を目指す、アクティブとパッシブの中間的なスタイルも増えていくだろう。当社が提供するボラティリティ・ウェイトに基づくスマートベータ戦略は、各組入銘柄のリスク寄与度が均等となるようにウェイト調整することで、時価総額加重のパッシブ運用を上回るパフォーマンスを実現している。

岸本 MiFID2によるコスト意識の高まりは、当然日本にも波及してくる。これからはコストに見合ったパフォーマンスがアクティブの課題として注目されるだろう。

 みなさんと同様に、今後は中長期的に良好なパフォーマンスを実現するアクティブハウスが残っていく見立てから、運用成績に応じた報酬体系にするパフォーマンス・フィーが広がると見る。すでに欧州ではファンドベースで10%以上がパフォーマンス・フィーを導入している。そういったなかでGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が実績連動型の報酬体系にかじを切ったのは、大きな転換点になるだろう。

 ただし、実績連動型の報酬体系には賛同するが、運用目標を下回っている限りはパッシブ運用と同水準の報酬になってしまうのは賛同しかねる。仮に最初の1、2年はマーケット環境と運用スタイルなどが合わず、パッシブ並みの報酬しか得られなかった場合、資金的な面で人材育成やディスクロージャーが十分にできなくなってしまう可能性がある。アクティブはパッシブより運用コストがかかるため、ある程度の報酬をもらわないと機能しなくなる。

規律ある資産管理でリターン低下を防ぐ

八木 健氏
若手社員にシードマネーを
提供することで、将来の優秀な
アクティブマネジャーを
育成している ──八木氏

大塚 これまでの話を踏まえて今後の事業戦略を聞かせてほしい。

岸本 GAMグループでは、「New Actives」と呼ぶカテゴリーの運用が事業の中核になる。2017年に資金流入が多かった10戦略のうち、6戦略は伝統的なアセットクラスを投資対象に、LIBOR(ロンドン銀行間取引金利)をベンチマークに絶対リターンを狙うタイプで大きくプラスのリターンをあげている。残りの4戦略もマーケットインデックスを大きく上回るパフォーマンスを実現しており、アクティブマネジャーとしての存在価値を十分発揮していると自負する。

 しかし、日本では当社の知名度は低い。他の資産運用会社に代わって運用するサブアドバイザーという位置づけが大きな理由だったことから、当社は2018年第2四半期中の投資一任業の免許取得を目指している。現在は欧州の機関投資家や富裕層を中心に支持を得ているGAMの戦略を、今後は日本の投資家のみなさまに積極的に紹介していきたい。

高橋 我々の持ち味は、“どアクティブ”な運用だ。どアクティブの“ど”をどこまで濃くしていくかが重要になる。創業者がコムジェストを設立したのは、ベンチマーク運用はしたくないから。ベンチマーク運用は自分たちが評価していない企業にも投資せざるを得ず、さらにその部分からも報酬をもらうということに納得がいかなかったのが一番の理由になる。

 そのため持続的な成長が期待できる企業、具体的には5年間の年率EPS(1株当たり当期純利益)成長率が10%以上と予想できる企業のみに投資。しかも、ほぼ40銘柄に集中投資している。そこまで投資先を絞り込む対価が報酬の一部だと考えるからだ。

 株価は短期的には政治的要因などに左右されるが、5~10年程度の期間で見ると企業の利益に収れんしていく。したがって短期的な変動要因の予測などに経営のリソースを振り向けるより、利益の予測に経営のリソースを集中させたほうが期待以上のパフォーマンスを届けられると考えている。当社のほぼ90%の運用戦略で過去20年の平均リターンが11%になっているが、ポートフォリオ全体の年率EPS成長率が11%程度であることから、我々は今後も利益の予測に力を入れていきたい。

八木 当社は日本で数少ない独立系の資産運用会社だ。マルチ・ブティックハウスを標榜し、自社の運用商品に加えて、提携する米国の独立系資産運用会社がベイビュー・アセット・マネジメントというプラットフォームを通じて他にない運用商品を提供している。このプラットフォーム経由の商品の選択肢が、ここ数年でかなり増えてきた。2018年度は、パッシブとさらなる差別化を図るため、中小型の中でも超小型(マイクロキャップ)株投資といった戦略も打ち出す予定だ。

 また、2011年から新卒採用を実施する当社では、キャリア採用も含む若手社員に会社のシードマネーを提供し、株式ロングショート戦略等でトラックレコードを積み上げている。

 日本最大の投資家は個人投資家だが、この層に銀行や証券会社などを介さず直接アプローチすることが、独立系資産運用会社として我々のゴールである。その際に忘れてならないのが、規律ある資産管理になる。アクティブファンドのリターン低下の要因の一つが、資金が集まり過ぎること。適切なファンド規模で新規資金の募集を停止(クローズ)するという、規律ある資産管理を今後も継続して行う。

マーサー ジャパン 資産運用コンサルティング部門代表 取締役 大塚 修生氏座談会を終えて ― モデレーター・大塚修生氏

アクティブ運用を追求する姿勢に感銘

 パッシブ運用で十分という意見が大半を占めるなか、アクティブ運用を追求するスタンスに感銘を受けた。単にアクティブ運用を推進するのではなく、自らの強みと弱みを冷静に分析したうえで、今後の対応や戦略を検討していこうとする姿勢は好ましく映った。

 当然のことながら、優れた運用機関や運用戦略を発掘する、あるいはAIを含め、これまで世の中に出ていなかった戦略の評価のあり方を考えるというのが、我々のようなコンサルティング会社に期待される役割だ。その責務を果たせるよう、我々の海外拠点のみならず、各運用機関からの情報も活用しつつ、顧客のパフォーマンス向上に貢献するとともに、資産運用業界の発展に努めていきたい。