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「分散」と「アグノスティック」がキーに浮上

J-MONEY2016年夏号 注目記事

Portfolio strategy

「動」の金融法人と「静」の年金基金
「分散」と「アグノスティック」がキーに浮上

マイナス金利の導入決定から間もなく半年。国内債券の利回り低下で、機関投資家の投資環境は厳しさを増すが、運用見直しのスタンスは金融法人と年金基金によって大きく異なる。マイナス金利時代に有効な運用戦略とは──。(工藤晋也、山岡靖宗)

積極的に動く地方銀行

 機関投資家のなかで素早く運用見直しに動いたのは金融法人である。「とくに日本国債の償還を控える地方銀行が積極的に動いている」と日興アセットマネジメント 機関投資家営業第一部長の吉田義幸氏は実情を語る。

 対する年金基金は静観の構えを見せる。近年の恵まれた運用環境によって剰余金が積み上がり、余力があるのが大きな理由だ。「しかし、金利がゼロからマイナスになったことで、日本の年金基金もこれから半年~ 1年ほどの間に手を打ってくるだろう」とタワーズワトソン・インベストメント・サービス代表取締役社長 兼 コンサルティング部長の五藤智也氏は予想する。

 マイナス金利時代の有効な運用戦略は何か。五藤氏は、「円金利資産外への分散」か「円金利資産内での分散」を挙げる。同社では今後5年間程度でダウンサイド・イベントが発生する確率を40%と見込んでおり、「不確実性の高い時代こそダイバーシティ(分散)アプローチが重要になる」(五藤氏)からだ。

  野村アセットマネジメント Co-CIOの川原淳次氏は、「アグノスティック(とらわれない)」をこれからのテーマとして考える。同社では「低金利」「低成長」「高ボラティリティ」という三重苦の厳しい市場環境を危惧しており、「このような環境を乗り越えるには、国内債券といった既存の資産クラスからの脱却を図る『アセットクラス・アグノスティック』、国内債券運用の代表的指標であるNomura-BPIなどのベンチマークからの脱却を進める『ベンチマーク・アグノスティック』が欠かせない」(川原氏)と主張する。

 マイナス金利、低金利時代に適したプロダクトは何なのか。各運用会社のプロダクトを紹介する。

投資妙味がある北欧債券に着目

 日興アセットマネジメントが、国内債券に代わる投資先としてフォーカスしているのが欧州債券。なかでもスウェーデンやデンマークなどトリプルAの格付けを持つ国がいくつもあり、ヘッジコストの上昇懸念が小さい北欧債券に着目する。

 スウェーデン国債は、ヘッジコストを加えた10年国債利回りの比較で、米国債を上回る。「為替ヘッジプレミアムが受け取れるうえに、財務状況が健全で、英国のEU離脱の影響も限定的とみられる」と同社商品開発第二部長の竹本好克氏は語る。

 もう1つは『デンマーク・カバード・ボンド』。金融機関保有の住宅ローンや地方公共団体向け債権などを担保にするカバード・ボンドは、欧州を中心に導入されているが、デンマークのカバード・ボンド市場はドイツ並みの規模を持つ。トリプルAの格付けを有しながら2%前半の利回りが期待でき、円との金利差があまりないのでヘッジコストも低い。「米国のジニーメイ(米連邦政府抵当金庫)と同じ感覚で投資できる。保有している投資家も少ないので分散投資にもなる」(竹本氏)

 他にはバンクローンも有力候補だ。欧州のバンクローン市場は、エネルギーセクターの比率が低く、商品市況の影響を受けにくいのが特徴である。長期投資志向が強い機関投資家の資金が大部分を占め、英国のEU離脱の影響も受けにくい。2016年6月末のスプレッドは590bpsと米国バンクローンの581bpsとそれほど差はないのも魅力だ。

 一方で現在のトレンドは、利回りの高いところに順に投資する状況だ。「利回りばかりにフォーカスせず、ポートフォリオ全体のバランスも考えるべき」と吉田氏は警鐘を鳴らす。とはいえ、機動的なポートフォリオ管理は難しい面もあることから、吉田氏は「マルチアセットで運用のプロにアセットアロケーションを委ねるのも一つの方法だ」と語る。

安定的なキャリー収益が源泉

 「当社のプロダクトでは、『キャリーエンハンスト・グローバル債券運用』が脚光を集めている」と打ち明けるのは、大和住銀投信投資顧問 年金部長の尾﨑秀臣氏だ。シティ世界国債インデックスの構成銘柄である高流動性・高格付の国債を投資対象にしていることと、ロールダウン効果を利用し、キャリー効率を最大化する運用を行うことなどが特徴の戦略である。

 「債券運用のなかで安定的なキャリー収益を源泉にしており、さらに定量的なルールに基づいて投資判断を行うクオンツ運用なのでコストを抑制できるという点が評価されている」(尾﨑氏)

 マイナス金利の導入以降、不動産やインフラを投資の選択肢に入れる年金基金が増えていることから、同社では「海外不動産」と「海外インフラ」も候補に挙げる。このうち海外不動産は、米不動産投資大手ラサール・インベストメント・マネージメントの「ラサール プロパティ ファンド」だ。ファンド・オブ・ファンズよりコストの安いシングルファンドで、稼働率の高い米国コア不動産に投資することで、安定的な賃料収入を確保する。

 「このファンドの同一コンポジットのパフォーマンスは、1981年の運用開始来の年率平均リターンが10.4%と、ODCE Indexの7.9%を大きく上回っている。不況時にも安定した賃料収入が見込める都市部の賃貸住宅やメディカルオフィスを入れるなど、長期運用に適した物件を選んでいる」と尾﨑氏は言う。

 後者の海外インフラでは、豪コモンウェルス銀行傘下のファーストステート・インベストメンツが運用する「グローバル・インフラ投資戦略」を提案している。海外インフラファンドで一般的なのは投資期限のあるクローズエンド型だが、「この商品は希少なオープンエンド型の海外インフラファンドなので、償還のために売却する必要がない。運用会社は21年のインフラ投資経験がある。パフォーンマンスは運用開始来で11.9%の年率平均リターンとなっている」(尾﨑氏)という。

魅力的な地域、債券セクターを選別

 日欧のマイナス金利政策で、シティ世界国債インデックスなどの従来型ベンチマーク運用のヘッジ付外債は、ヘッジコスト控除後で年率1%未満の最低利回りしか得られない状況にある。

 マニュライフ・アセット・マネジメント機関投資家営業部 マネージャーの八十歩(やそぶ)憲作氏は、「安定した利回りの確保には、ヘッジコストを考慮したうえで、リスク対比期待リターンが相対的に高いと考えられる国・地域や債券セクターに選別・分散投資することが重要。それにはアンコンストレインド債券の『ストラテジック・インカム戦略』が有効」と言う。同戦略の2016年5月末時点の直近5年間のパフォーマンスは、バークレイズ・キャピタル・グローバル総合指数を2.99%上回っている(コンポジット・データ、年率、米ドルベース)。

 もう1つの候補は「米国地方公共債戦略」である。2016年5月末時点の最終利回りは3.4%で、ヘッジコストを差し引いても2%程度の高い利回りとなっている。

 ディレクターの筋野智氏は「米国地方債は課税債、非課税債合わせて銘柄数が5万以上あり、米国内の主要ファンドを比較すると、ファンド間での重複銘柄数が非常に少ない。各ポートフォリオ・マネージャーの目利き力に加え、ブローカーとの関係性も運用成果を左右するので、トラックレコードの長い複数の米国地方債ファンドに投資し、マネージャー分散を図るのも有効だろう。とくに、目利きが必須となるレベニュー債の魅力度は高い」と語る。

アクティブとスマートベータ提案

 野村アセットマネジメントは、アグノスティックな運用を実現する方法として「アクティブ運用」と「スマートベータ」を挙げる。このうちアクティブ運用では「世界債券アクティブ為替ヘッジ型運用(絶対収益型)」を提案する。

 主な投資対象はシングルA以上の先進国の国債で、市場ベンチマークを運用目標とせず、為替ヘッジ後の利回り水準と市場の方向感を考慮して絶対収益を意識した運用を行う。

 「米国金利が急上昇した場合、債券ファンドは価格下落に見舞われてしまう。その緩和策として為替ヘッジをある程度外せるようにすることで、米国の金利上昇局面での円安メリットを享受するという投資判断も可能な仕組みを備えている」とシニア・プロダクト・マネージャーの石田雄士氏は解説する。

 スマートベータでは、非時価総額加重型の「世界国債ファクター・プレミアム戦略」を挙げる。デュレーション管理による金利リスクの調整と、A格以上の先進国国債で構成されるシティグループ世界国債インデックス(Citi WGBI)の採用国債を投資対象にし、ソブリンのクレジットリスク抑制が大きな特徴である。

 「収益源泉はマイナス金利国や低金利国を除いた長期金利差の高い国を選ぶこと。シミュレーション結果ではリターンは3.0%程度、リスクはCitiWGBIよりも低く、NOMURA‐BPIからの脱却を検討している年金基金に望まれるプロダクトとなっている」(川原氏)

 最後がマルチアセットの「ノムラスマートプレミアム」だ。先進国から新興国までの世界の株式や債券、REIT、コモディティなどに投資する。その比率を定量モデルによって長期的に安定したリスクファクターのトレンドを抽出し、定性判断によって短期的な市場変動などの影響を反映させる運用を行う。プロダクトは全部で高リスク型と中リスク型、低リスク型の3種類を用意している。

革新的な債券運用ソリューション提供

 年金基金のポートフォリオの中核を担う債券運用はマイナス金利導入以降、「安全性」「利回り」の両面において課題を抱えている。しかし、政策アセットミックスを前提とした運用を行う投資家の場合、「債券の枠内で解決したいというニーズも多い」とDIAMアセットマネジメント 業務開発グループリーダー 兼 年金営業グループ部長の由良宏明氏は語る。

 同社の「国内債券ダイレクション戦略」は、現物債券や債券先物の売買によりキャピタルゲインの獲得を目指すシンプルさが特長であり、「デュレーションを機動的に調整することで、金利の上昇・低下の両局面で収益の獲得を目指すことができる」(由良氏)

 インカムを物差しとするスマートな債券運用戦略として、「高格付グローバル債券スマートインカム戦略」も提供している。投資対象を高格付国債に絞り、信用リスクを極力抑えたうえで、独自の投資魅力度に基づきポートフォリオを構築。直近の金利動向も踏まえた国別配分と、金利上昇シグナルを用いたダウンサイドリスク抑制戦略で、中長期だけでなく短期の金利上昇リスクに備える仕組みを持つ。

 魅力的なインカムが期待できる株式や債券、為替をロングし、ショートポジションで市場の変動リスクを抑制することで、安定した利回りを獲得していく「マルチ・インカム・アロケーション戦略(MIRiA)」も提供している。「投資家のニーズ・課題が多様化するなか、戦略的パートナーとして、最良の運用ソリューションを提供していきたい」と由良氏は語った。

プライベートアセットで安定収益を

 マイナス金利導入によるプライベートアセットへのニーズの高まりを受け、ニューバーガー・バーマンでは3つのプロダクトを提案する。1つ目は「プライベート・デット/ダイレクト・レンディング戦略」。プライベート・エクイティ(PE)ファンドの投資先企業で、キャッシュフローが潤沢な中小企業が主な投資対象だ。同社取締役投資商品本部長マネージングディレクターの幾嶋崇氏は、「業界最大級のPE運用プラットフォームを通じた案件発掘能力に優位性があり、質の高い企業に厳選した投資が可能。2008年の投資開始以来、デフォルト案件はない」と、戦略の特徴を語る。

 2つ目は「ヘルスケア・インカム戦略」だ。医療品や医療機器の特許権を裏付けとした債券および特許権を有するヘルスケア企業の社債などを主な投資対象にする。「参入障壁が高い医療関連商品を有する企業は売上の変動が限定的で、また景気動向に左右されにくいため、安定したインカムをベースとした収益が期待できる」と機関投資家営業部ヴァイスプレジデントの藤島智佳子氏は説明する。

 セカンダリー市場を通じて分散したポートフォリオの構築を図る「セカンダリー・プライベート・エクイティ戦略」も、同社の広範なPE運用プラットフォーム等を通じて差別化された案件発掘を特徴としており、競合性の低い投資案件にフォーカスしている。過去の1 ~ 3号戦略では、いずれも各設定年のセカンダリー指数を上回る実績を収めており、本邦投資家からの需要も強いという。

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 国内債券の投資魅力が薄れたことで機関投資家の運用環境は悪化している。「分散」や「アグノスティック」なアプローチで最適解を模索する状況がしばらく続きそうだ。