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J-MONEY2015年春号 注目記事

ディール・オブ・ザ・イヤー2014

M&A、株式、債券部門の受賞ディールを発表

2014年のベストディールを表彰する「ディール・オブ・ザ・イヤー」。金額規模や執行業務の鮮やかさ、資本市場に与えた影響、執行後のパフォーマンスといった点を基準に、9部門からベストディールを選定した。(J-MONEY編集部 ※データはディールロジック提供)

M&A部門

ベストM&Aディール(OUT-IN)
シナプティクスによるルネサスエスピードライバの買収

 米電子部品メーカー、シナプティクスによるルネサスエスピードライ(RSP)の買収は、業界をけん引する企業同士のM&Aであり、その注目度や市場からの期待の高さにおいてベストディールにふさわしい案件だった。

 RSPは半導体大手ルネサスエレクトロニクスの子会社でスマートフォン(スマホ)など中小型液晶パネルを駆動する半導体に強みを持つ。同分野で世界第3位のシェアを誇り、米アップルのiPhoneの液晶を動かす半導体も同社製だ。

 一方、シナプティクスはノートパソコンのタッチパッドやスマホ用のタッチパネル向けの半導体で世界的なシェアを持つ。2013年には指紋センサーの企業を買収したことで、同市場でも圧倒的なシェアを確保するに至った。過去には、PC用のタッチパッドなどでアップルと取引があったが、iPhone発売以降は関係が途絶えていた。今回の買収をきっかけに関係が復活すると期待される。

 液晶とタッチパネルの調整には本来、莫大なコストと時間がかかる。今回のM&Aにより、生産のコストと時間を大幅に削減するとともに、低価格化が進む今後のスマホ市場において、大きな強みを発揮すると期待を寄せる市場関係者は少なくない。

 経営再建中のルネサスエレクトロニクスは、2013年からRSPを売却する方針を固めていたという。最終合意は2014年6月。RSPの工藤郁夫社長は「ルネサスとは目指す方向性が違っていた」と語り、シナプティクスとのシナジーに期待を寄せた。

 シナプティクスが今回の買収のために投じる資金は485億円。発表直前の時価総額が2400億円だったことを考えると、決して安くない買い物といえる。ルネサス以外にもシャープや台湾の半導体メーカーなどが保有するRSPの全株を保有することになる。

 RSPの買収発表後、市場はシナプティクスの決断を好感し、米国では翌11日に株価が3割近く上昇した。

 今回のM&Aをきっかけに同社は、ディスプレイ市場のあらゆるニーズに応える製品ポートフォリオを持つことになる。

ベストM&Aディール(IN-OUT)
サントリーホールディングスによるビームの買収

 日本企業による海外企業の買収が活発だ。近年は、為替の円安トレンドを生かす「短期勝負型」よりも、持続的成長を視野に入れた「長期投資型」が目につく。その象徴といえるのが、サントリーホールディングスによる米国のビーム買収である。

 本件は、日本企業のクロス・ボーダー案件としてJTによる英ギャラハーの買収、ソフトバンクによる米スプリント・ネクステルの買収に次ぐ過去3番目の買収額だった。

国内の酒類市場は人口減少などで今後縮小が見込まれる。一方、世界全体では、アジアの経済発展による中間層の増加などから、蒸留酒の消費は一層拡大すると予想される。ビームは世界最大のバーボンブランド「ジムビーム」のほか、コニャックやテキーラなど蒸留酒ビジネスを展開している。サントリーホールディングスは今回の買収で、ビーム・ブランドと米国をはじめ世界的な販売網を手に入れた。

 世間の関心が高いビック・ディールであったことと、内需型企業の代表格の食品・飲料メーカーが、M&Aをテコに世界市場でさらなる成長ストーリーを描くという、多くの日本企業にとって示唆に富む案件だったことからベストディールに選出した。

 買収価格の1株当たり83.50米ドルは、直近株価に対して24.7%、過去1カ月平均株価に対して25.0%のプレミアムだった。三菱UFJモルガン・スタンレー証券が買収側の単独ファイナンシャル・アドバイザーを務め、買収資金は三菱東京UFJ銀行が単独でブリッジ・ファイナンスを提供した。案件成立までにはモルガン・スタンレーとMUFGの連携が光った。

買収の効果は早速現れた。サントリーホールディングスの2014年12月期の連結売上高は前年同期比20%増の2兆4552億円。ライバルのキリンホールディングスを抜き、初めて国内食品メーカーの首位に立った。ビーム買収などで海外売上高を一気に7割伸ばしたことが悲願達成につながった。

 北米や新興国のウイスキー事業を伸ばし、巨額買収でかかえた負債の返済を進めるサントリーホールディングス。次の一手に注目が集まる。

ベストM&Aディール(IN-IN)
三菱ケミカルホールディングスによる大陽日酸の買収

 2014年の国内企業同士のM&Aで本誌が最も注目したのが、三菱ケミカルホールディングス(以下、三菱ケミカルHD)による大陽日酸の買収だ。

 そもそも三菱ケミカルHDは、産業ガス分野で国内最大手である大陽日酸とは2013年に資本業務提携を結び、特定の第三者に対して新株を発行する第三者割当増資で株式の保有比率を15.12%から26.97%に高めたばかり。この比率を50%以上に引き上げ、連結子会社化へと踏み切らせたのは、大陽日酸が取り扱う産業用ガスという分野が秘めるポテンシャルに三菱ケミカルHDが魅力を感じたからだ。

 産業用ガスは鉄鋼業などの基幹産業から、半導体といった最先端の産業まで幅広い分野で使われる貴重な原料。近年では成長著しいシェールガスの採掘に窒素などが利用されていることもあり、産業用ガス分野のさらなる発展が期待されている。

 こうした将来性に加え、約5000億円もの売上高を持つ大陽日酸の産業ガス事業を取り込むことで、三菱ケミカルHDの規模拡大や事業シナジーの強化が連結子会社化の狙いと見られる。

 三菱ケミカルHDは株式保有比率を引き上げるにあたって、前回は第三者割当増資を使ったものの、今回はTOB(株式公開買い付け)の手法を選択した。TOBの買い付け期間は9月30日から11月5日までの25営業日、1株当たりの買い付け価格は1030円と設定。約1000億円を投じたTOBにより、三菱ケミカルの株式保有比率は26.97%から50.57%となった。

 三菱ケミカルHDによる大陽日酸の買収はマーケットにも好感された。三菱ケミカルHDは連結子会社化後も大陽日酸の上場維持を表明しており、買収を発表した5月13日の大陽日酸の株価は889円と前日の終値の802円から約10%上昇。2015年3月31日時点で1639円まで伸びている。

 大陽日酸の連結子会社化は、業績面でもプラスになっている。2015年第3四半期決算の売上高は、前年同期比8%増の2兆6803億円、経常利益は同51.1%増の1275億円と、スマートフォン向けのフィルムやシートが好調という押し上げ要因もあり、増収増益を達成した。現時点では大陽日酸の買収は三菱ケミカルHDにとって目論見通りの効果をあげているといえそうだ。

株式部門

ベストIPOディール
リクルートホールディングスのグローバルIPO

 2014年度最大のIPOとなったリクルートホールディングス。販促メディアや人材メディア、人材派遣を軸として国内で確固たる事業基盤を築いた同社は、グローバル展開への足掛かりとしてグローバルIPOを決定。上場時の時価総額は1兆7795億円と、本邦で行われた過去10年間のIPOでは最大級の規模となった。

 今回のIPOでは、株式の約30%がロックアップ(一定期間、持株の売却を制限する制度)の対象外であったため、旧役員や従業員の持株売却による上場直後の需要悪化が懸念された。加えて、事業が多岐にわたり、自ら市場を創出した領域が多かったため、比較対象となる企業がなく、投資家の業績予想の元となる市場データの不足も不安材料となった。

 こうした背景のもと、国内外のロングオンリーを中心とした機関投資家の超過需要を獲得し、安定的なアフターマーケットを達成すべく、ロードショー(投資家向け説明会)は国内外を4チーム体制で計13日間実施。当初の仮条件の上限レンジである3100円での条件決定を実現した。最終的なオーダーでは、一般投資家から約8倍、国内機関投資家から約12倍、海外投資家から約20倍と、幅広い層から需要を喚起することに成功した。

 上場日の株価推移を見ても、日経平均株価が前日の終値対比でマイナス7.3%と大幅に下落するなか、初値は公開価格を2.3%上回る3170円と堅調な取引となった。国内の高い知名度によって一般投資家からのニーズも高く、新規の株式投資を活発化させた意味でも意義深いディールとなった。

ベスト株式公募・売り出しディール
三井不動産のグローバル公募増資

 三井不動産は1982年以来となる大規模なグローバル公募増資を行った。
 同社は「成長性と収益性に富んだ三井不動産グループ」実現のため、2012年4月に「イノベーション2017」を策定し、国内での競争力とグローバル化への対応に向けた取り組みを強化している。

 同計画を進めるなかで、日銀による金融緩和や2020年オリンピックの東京招致決定、国家戦略特区の策定などマクロ経済を取り巻く環境が一変。同社が手掛ける日本橋や八重洲、日比谷地区の都内開発案件などの着実な実現とともに、東京を中心に拡大が見込まれる新たな事業機会の獲得に備え、財務基盤を強化すべく、今回、公募増資が行われることとなった。

5月29日から6月12日にかけて実施されたロードショーでは国内30件弱、海外60件強の投資家に個別ミーティングを行った。日本を代表する企業が、成長に向けた資金獲得を意欲的に行ったことで市場の期待が高まる一方、低金利環境のなか、財務体質が良好な同社が借入や社債発行ではなく公募増資を行ったことに対する疑問の声も挙がった。

 市場関係者の反応は、おおむね歓迎と困惑の2つに分かれたものの、ロードショー後は将来的な借入余力を高めようとする姿勢や他社に先駆けてリスクを取った点など、発行体の意向が伝わってくるという評価に転じた。株式の希薄化率が11%だったのに対して、5月27日の決議から6月16日の条件決定までの株価下落率は3.11%に留まった。

ベスト株式リンク・ディール
東レのユーロ円建てCB

 ROE(自己資本利益率)を重視した経営を求める風潮が強まるなかで、CBの発行と自己株式の取得を組み合わせた「リキャップCB」と呼ばれる資金調達が増えている。この手法で、1000億円という大規模な調達を他社に先駆けて行ったのが東レだ。

 同社にとってCBの発行は約7年ぶり。年限が5年と7年のユーロ円CBを、それぞれ500億円発行した。同社では中期経営課題として、4000億円規模の設備投資と1800億円規模の研究開発を行うことを掲げている。CBで調達する1000億円のうち500億円を設備投資に、300億円を技術開発に充て、残りの200億円で自己株式を取得する。同社にとって自社株買いは初めて。転換制限条項も130%と高めに設定し、株価やROEに配慮した負債性の強いCBとなっている。

 世界的に知名度の高い発行体で、明確な成長戦略を打ち出していたこともあり、5年債には約2倍、7年債には3倍弱の需要が集まった。一方で、アップ率は仮条件レンジの下限で決定した。この時期には日本株のボラティリティが低下しており、ヘッジファンドが慎重な姿勢を見せたためだ。

 CBの決議直後の株価は、自社株買いが好感されて堅調に推移し、その後もおおむね上昇を続けている。2014年にリキャップCBを発行したものの、株価が伸び悩む企業があるなかで、成長戦略とファイナンスが噛み合い、国内のCB市場に弾みをつけた本案件をベストディールに選出した。

債券部門

ベスト円建てディール
ソフトバンクのリテール債・リテール劣後債

 超低金利環境のなか、比較的高い利回りが期待できる社債への購入意欲が衰えなかった2014年。前年に引き続き、市場に大きなインパクトを与えたのはソフトバンクだった。

 同社は5月に3000億円、8月に4000億円と相次いで大型リテール債を起債。8月発行の5年債は、同社として過去最大となった2013年6月の起債に並ぶ規模で、利率は1.26%とやや低下したものの、個人投資家の旺盛な需要を受けて即売した。

さらに、12月に起債した7年債は、同社として初めて劣後特約を付けた。劣後債は経営破たんなどがあった場合の弁済順位が低く、投資回収できなくなるというリスクがあるが、2.50%と高く設定された利率に魅力を感じる投資家の支持を集め、ネット証券では即日完売。2015年1月には、同じく年限が7年、利率2.50%の劣後債をさらに4500億円起債した。

 劣後債発行による調達資金は、2015年5月に償還を迎える子会社の優先出資証券の借り換えと通信・サービスなど事業拡大のための投融資に充当する予定だ。信用力の維持を図りつつ、将来的な投資資金も確保するという多面的な財務戦略といえるだろう。

ベスト・インターナショナル・ボンド・ディール
ユーロ建てDBJグリーンボンド

 グリーンボンドとは、調達した資金が地球温暖化対策や環境保護への投融資に使われることを前提として発行する債券のこと。世界銀行が2008年に初めて起債して以来、2015年3月までに総額80億ドルを発行した。他の行政機関や企業なども次々とグリーンボンド市場に参加するなかで、日本政策投資銀行(以下DBJ)は2014年10月、日本の発行体として初となるグリーンボンドをユーロ建てで発行した。DBJにとって、ユーロ建ての債券を発行するのは約7年ぶりとなる。

 背景には、欧州におけるSRI(社会的責任投資)の広がりとグリーンボンド市場の成長がある。DBJは国内で40年以上前から環境対策事業に投融資を行ってきた実績を有し、環境問題に関するファイナンスの豊富な経験を持つ。

 起債に先立ち、欧州でロードショーを実施したところ、SRIに関心の高い機関投資家や中央銀行などの需要を喚起し、最終的には発行額の3倍となる約7.5億ユーロのオーダーを集めた。表面利率は、ガイダンスの下限であるスワップ金利+12bpと、発行体に有利な条件で決定した。

 DBJが発行したグリーンボンドのうち、7割超がSRI投資家によって購入された。これまで日本の公的セクターによる外債を購入したことがなかった投資家も参加するなど、投資家層の多様化にも寄与した。

 この起債の成功は、日本国内におけるグリーンファイナンスの広がりを後押しする効果も期待できる。

ベスト・サムライ債・ディール
ルノー

 2014年のサムライ債発行額は2兆5000億円を上回り、1996年以来の高水準となった。背景にあるのは極めて低い日本の金利環境。発行体にとっては円を自国通貨に両替する手数料を差し引いても資金調達コストを抑えられるメリットがあり、少しでも利回りが高い債券を求める投資家との利害が一致している。

 仏自動車大手のルノーは6月に総額1500億円の起債に踏み切った。同発行体の前回債(2年債、496億円)の約3倍の発行額であり、フランス銘柄としては2013年のBPCE(1316億円)を超える過去最大案件となった。マーケティングでは定期的に来日してロードショーを行うなど、日本の投資家と積極的な対話を推進。年限は従来の2年債のほか、長い年限に対する関心の高さを反映して3年債を加えた。運用難にあえぐ投資家心理をしっかりととらえた起債により、最終的には100件を超える需要を創出した。

 結果、2年債の利率は円スワップ金利+ 85bpの1.09%。前回債対比27bpの縮小化を実現できた。3年債も前回の2年債スプレッドを下回る円スワップ金利+100bpまで誘導することに成功している。

 サムライ債起債が集中した6月の繁忙期前に発行したことなども奏功し、発行規模、金利水準、投資家需要ともに関係者の当初の予想を上回るディールとなった。

ストラクチャード・ファイナンス部門

ベスト・ストラクチャード・プロダクト
該当ディールなし