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投資教育でリスクマネーの供給増やす

J-MONEY2014年春号 注目記事

野村アセットマネジメント CEO 兼 執行役社長 渡邊 国夫氏

個人マネー取り込みへ台湾進出
投資教育でリスクマネーの供給増やす

国内公募投信シェアでトップに位置し、日本を代表する資産運用会社としていち早くグローバル展開を本格化した野村アセットマネジメント。2014年1月にINGグループの台湾運用拠点買収を発表するなど、国内外でのビジネス拡大を加速させている。4月1日より野村アセットマネジメントを率いる渡邊国夫新社長に今後の目指すべき方向性や抱負などを聞いた。 (工藤晋也)

投資顧問ビジネスの3分の1以上が海外顧客資産

──アセットマネジメント業界に日本株の上昇基調やNISA(少額投資非課税制度)といった追い風が吹いています。野村アセットマネジメントの事業環境はいかがでしょうか。
渡邊
 現在、当社では国内外の個人投資家や機関投資家から36兆円(2013年12月末)の運用資産をお預かりしています。このうち個人投資家ビジネスは、安倍晋三首相が打ち出したアベノミクスによる市場環境の好転と、新たな証券優遇税制NISAの存在で事業環境は上向いています。2013年12月の運用資産残高は19.2兆円と、前年同月比34%伸びました。

 対する機関投資家ビジネスは年金基金と金融法人で明暗が分かれています。前者は多くの年金基金が改正厚生年金保険法の施行を受けて解散をするか否かを検討しており、運用受託の落ち込みは避けられない状況にあります。

 後者の銀行や保険会社などの金融法人ビジネスは好調です。変額年金保険や確定拠出年金に組み入れる商品の提供や私募投信の組成など多様なニーズが寄せられています。

──海外機関投資家からの運用受託が増えています。
渡邊
 世界的に日本の株式市場が注目されていることもあり、主に欧米の金融機関やアジアのソブリンウェルスファンドなどからの問い合わせが増えています。ユニークな分野では“シャリア” と呼ばれるイスラム法に適合したシャリア運用も手がけており、アジアのなかでも有数の運用規模を誇ります。いまや投資顧問での運用資産の約40%が海外顧客の資産です。

800名を超える組織力 M&Aも条件次第で検討

──2014年1月にINGグループの台湾拠点買収を発表しました。今後のグローバル戦略の方向性は。
渡邊
 国内公募投信シェアは23.6%と国内トップに立っていますが、少子高齢化と人口減少によって国内市場のさらなる成長は難しいでしょう。国内で一層のシェア拡大を図るとともに、成長余地のある海外への展開を加速していく考えです。とくに高いポテンシャルを秘めるアジア地域への進出に力点を置いています。

 アジア進出の狙いの1つは、個人マネーの取り込みです。INGグループの台湾拠点の買収によって、同地域の個人投資家にアクセスできるインフラを確保できたと思います。

 当社は台湾以外にもシンガポールや香港、マレーシアなどに拠点を構えています。アジア地域でのさらなるプレゼンスを向上していくために条件次第では、M&Aも検討したいと考えています。

──国内外の機関投資家や個人投資家の幅広いニーズに応えられる要因は何でしょうか。
渡邊
 36兆円もの運用資産を預かるということは、それだけの体制が整っているからにほかなりません。当社は運用を司るフロントからリスク管理や売買執行を行うミドルバック、さらに営業や管理部門まで800名超の人材を擁しています。この業界随一といえる厚みのある組織力をもとに個人投資家、機関投資家双方の多様なニーズへの対応を実現しています。

スマートベータやオルタナティブ資産の開発強化

──投資顧問ビジネスでは今後どのような事業戦略を考えていますか。
渡邊
 国内の年金基金の多くは、少子高齢化の進展などによってキャッシュイン(掛け金)とキャッシュアウト(給付)のバランスが崩れ、財源の確保が苦しくなっています。それに伴って運用会社に求めるニーズも厳しさを増しているものの、これまで以上に投資家が望む運用商品を提供することができれば評価は得られます。

 当社では運用商品のパフォーマンス向上はもとより、パッシブ運用のニーズの高まりを踏まえ、時価総額加重インデックスに代わる「スマートベータ」と呼ばれるインデックスをはじめ、従来のパッシブ運用にプラスアルファした商品の開発を進めています。

 その1つが米リサーチ・アフィリエイツ社の「ファンダメンタル・インデックスR」の手法を用いた商品です。割高な銘柄を購入するケースもある時価総額加重インデックスの問題点を解消するプロダクトとして多くの機関投資家から評価されています。

 ほかにも伝統的資産に代わるオルタナティブ資産へのニーズも依然として強く、ヘッジファンドやバンクローン、ハイ・イールド債券などの開発も引き続き注力していきます。

──「特色あるアジアの運用会社」を目指して力を入れていることは。
渡邊
 運用会社として常に優秀なポートフォリオマネージャーの確保は欠かせません。当社では社外から見込みのあるポートフォリオマネージャーを採用するだけでなく、社内人材の育成にも積極的に努めています。

 人材育成の試みとして2010年よりポートフォリオマネージャーの社内公募を始めました。社内にいる運用希望者は、当制度を活用することでポートフォリオマネージャーとして活躍する機会を得ることができます。また、運用部では若手社員の運用能力向上にも注力しています。各々の運用アイデアをバーチャルポートフォリオに反映し、運用パフォーマンス・プロセスなどの厳正な審査を経て評価が高い場合には、実際にパイロットファンド(自己資金による研究開発を目的としたファンド)として運用します。さらにパイロットファンドでも実績を残すことができた場合には、商品化を検討します。

 もう1つは個人投資家向けの投資教育です。1990年の投資信託残高を見ると、日本が約46兆円で米国が約1.1兆ドルでしたが、2013年末には日本が約82兆円と1.8倍の拡大にとどまった一方で、米国は約14.3兆ドルと13倍にまで膨らんでいます。

 なぜ約20年の間にこれほどの差が広がったのか。マーケット環境の影響もありますが、大きな理由は投資への関心の高さです。

 米国では約14.3兆ドルの投資信託残高のうち、およそ4割が401k(確定拠出年金)とIRA(個人型確定拠出年金)に流れ込み、企業の成長に欠かせないリスクマネーの供給へとつながっています。それが投資収益となり、さらなる投資活動を促すという好循環を生み出しています。

 対する日本では2001年に401kが導入されたものの、運用資産残高はわずか7兆円です。しかも、年金目的の運用であるにもかかわらず、元本確保型の商品が6割を占めています。リスクマネーの供給量でも米国とこれほどの開きがあります。

 折りしも政府の有識者会議の提言によってGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)などの公的年金では株式の投資比率の引き上げなどが検討され、機関投資家からのリスクマネー供給の増加が期待されています。

 個人投資家に関しても投資知識の普及を図り、株式などのリスク資産への投資が広がっていけば、機関投資家からのリスクマネーの供給とあいまってさらなる経済活性化をもたらす好循環がつくれるのではないでしょうか。

──新社長として今後の抱負を聞かせてください。
渡邊
 運用会社として、投資家の皆様が望むパフォーマンスを提供することが何よりも重要です。投資家のニーズに合わせてアクティブ運用であれば超過収益の獲得を目指し、パッシブ運用であればインデックスへの追随を目指す――。こうした姿勢が投資家から真に信頼される資産運用会社へとつながっていきます。

 これからも世界中の投資家から評価される資産運用会社のリーディングカンパニーとしてグローバルベースのリサーチと運用能力のさらなる強化を図っていきたい。そして多様化している投資家のニーズに応えられるよう、幅広い運用戦略を有する当社の強みを活かしたソリューション提供力も高めていきたいと考えています。