Advertisementアクサ・インベストメント・マネージャーズ
TOP > 注目記事 > 敬遠される国内外株式や国内債券
伝統資産との「相関性」を見極める

J-MONEY2014年冬号 注目記事

機関投資家のポートフォリオ戦略

敬遠される国内外株式や国内債券
伝統資産との「相関性」を見極める

世界的な株高によって投資マネーが安全資産からリスク資産に向かうグレート・ローテーション(大転換)が本格化してきた。だが、年金基金をはじめとした国内の機関投資家の動きは逆行しており、値動きの激しい株式や金利上昇リスクにさらされている国内債券と距離を置く傾向にある。(工藤晋也)

新会計基準の導入や目標利回り低下で慎重姿勢を堅持

 2013年の株式市場を振り返ると、NYダウと独DAXが史上最高値を更新。日経平均株価も大納会の終値が1万6291円31銭と6年2カ月ぶりの高値を付けるなど、景況感の改善でリスクオフからリスクオンへの動きが加速している。

 しかし、年金基金をはじめとした国内機関投資家にはグレート・ローテーションの気配はあまり感じられない。リーマン・ショックに代表されるテールイベント(発生確率は低いが一度起こると非常に巨大な損失をもたらす出来事)に対する恐怖の記憶がいまだ鮮明であるからだ。ほかにも「企業年金では積立不足を母体企業のバランスシートに即時に反映する会計基準の導入などによって慎重姿勢を変えていない」とDIAMアセットマネジメント業務開発グループリーダーの由良宏明氏は指摘する。

 従来よりも目標利回りが低くなったことも守りの運用スタンスを崩さない大きな要因に挙げられる。ピムコジャパンリミテッド執行役員、アカウントマネージメントグループのプロダクト兼ソリューション統括シニア・バイス・プレジデントを務める城山太郎氏は「年金基金の一般的な目標利回りは2%後半-3%前半とかつてより低くなっている。わざわざ危険を冒してまで急落する可能性が高いアセットクラスに投資する必要性は薄い」という。

 日興アセットマネジメント機関投資家事業本部長の福永光宏氏がいう「企業が発行する株式は年金基金の母体企業との相関性が強い」ことも株式が敬遠されている理由にある。

政府の有識者会議でも国内債券偏向の運用に危惧

 とはいえ、一時期のように株式の保有比率を減らす動きは少ない。むしろかつて安定的な収益源として重宝されてきた国内債券の比率を減らす動きの方が顕著だ。

 世界最大級の機関投資家であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)も2013年6月に基本ポートフォリオを変更し、これまで67%の国内債券を60%まで引き下げた。政府による公的年金・準公的年金の運用やリスク管理について検討する有識者会議の最終報告書においても、「国内債券を中心とするポートフォリオの見直しが必要」と国内債券偏向の運用に警鐘を鳴らす。

 “脱”国内債券の背景には、金利低下の余地が限られるなかで金利上昇によって保有債券の価格が下落する「キャピタルロス」が懸念されているからだ。

 「デフォルトさえなければ原則、償還時において元本は確保されるものの、新会計基準の導入による母体財務への影響を考えて、単年度でも運用成績のマイナスを一定水準まで抑えたいという年金基金は多い」とDIAMアセットマネジメントの由良氏は明かす。

 一方で「運用において金利上昇はあながち悪いことではない」という見方もある。ピムコジャパンリミテッドの城山氏は「金利上昇には『良い金利上昇』と『悪い金利上昇』がある。このうち景気回復を伴う前者の金利上昇であれば、金利の上昇分を株式のキャピタルゲインでカバーできる。インカムゲインの魅力が薄まるという意味では低金利状況が常態化している方がパフォーマンスにはマイナスだ」と語る。

 日興アセットマネジメントの福永氏も「金利上昇は短期的には保有債券の価格下落をもたらすものの、良い金利上昇の場合には株価も上昇するのでポートフォリオ全体ではプラスに働く。問題は悪い金利上昇の場合。名目金利で2%を達成しても実質金利がゼロのままではインフレに負けてしまう。金利上昇に備える動きも引き続き強い」と話す。

 ただし、年金ALM(資産・負債の総合管理)の観点からすると金利上昇は負債レベルの低下にもなることから決してマイナスの側面だけではない。

インフレに強いインフラ投資 アルファは下落局面に抵抗力

 金利上昇リスクのある日本債券に代わる投資対象は何か。日興アセットマネジメントの機関投資家営業部長の絵面功二氏は、金利が上昇するということは同時にインフレも進行することが多いため、インフレ連動債などのインフレヘッジのあるプロダクトを提唱する。

 「とくにインフレのヘッジ効果が高いインフラ投資が有効だ。投資先は主に海外の鉄道や上下水道、港湾といった公共事業。インフレが進行した際には鉄道料金や水道料金の値上げでカバーできる。長期にわたって安定的なインカムゲインが確保できるのもインフラ投資の魅力といえる」(絵面氏)

 もう1つはアジア債券だ。近年、アジア債券市場は規模が拡大しており、投資適格級の債券も増加傾向にある一方で、スプレッド(金利差)は高い。

 「例えばシンガポールのトリプルAの社債と、米国のシングルA+の社債が同じぐらいのスプレッドになっている。高いリスクプレミアムが織り込まれているが、デフォルトリスクはそれほど高くない。当社ではデュレーション(償還までの平均残存期間・債券価格の金利感応度を示す指標)の短いアジア社債や、変動金利のあるバンクローンといったプロダクトを提供している」と絵面氏はいう。

 DIAMアセットマネジメントの由良氏は、現在の日本債券が超低金利下にあることから、為替ヘッジのある欧米債券やハイ・イールド債券、エマージング債券などをポートフォリオに組み入れて利回りを上乗せする手法を推奨する。

 「当社には国内債券の金利上昇リスクが顕在化した局面で、機動的に債券のエクスポージャーを低下させることで損失を回避する『金利上昇シグナルヘッジ』という戦略のプロダクトもある」(由良氏)

 「どの投資対象が正解なのか見えにくい環境下こそベータよりアルファ」と力説するのはピムコジャパンリミテッドの城山氏だ。アクティブ運用によって超過収益を狙うアルファの場合、ファンドマネージャーの力量によってはマーケットの下落局面にも抵抗力がある。「アクティブ運用は資産を守る有効な手段にもなり得る。日本債券に加えて外国債券などを含むベンチマーク外の債券でも超過収益を狙う『日本債券コアプラス戦略』ならば、日本債券に代わる投資対象として違和感が少ないのでは」と城山氏は語る。

 もう1つのアクティブ運用のプロダクトとしては伝統的なベンチマークを用いずに超過収益の獲得を目指す「PIMCOアブソルート・リターン・ストラテジー(PARS)」がある。

 「債券や株式に代わる投資対象をポートフォリオに組み入れるのであれば、いかに相関性を少なくするかがポイントになる。朝はパン、昼はうどん、夜は白いご飯とメニューが違っていても、栄養素は同じ炭水化物。それではバランスが取れているとはいえない。投資においても債券や株式と相関性の低いPARSなどを組み入れる必要がある」(城山氏)

 相関性に着目するのはDIAMアセットマネジメントの由良氏も同じだ。国内外の株式や債券はグローバル化の進展などで相関性が高まっており、「アセットクラスの分散だけではなく、一歩踏み込んでより効果的な分散を実現するために、各アセットクラスのパフォーマンスに影響を及ぼすリスクファクターを散らす手法に注目している。当社の『グローバル・リスクファクター・パリティ戦略(GRiPS)』は資産価格の変動をもたらすリスクの源泉を最大限分散化するとともに、『ダウンサイド抑制戦略』に基づく機動的なヘッジ行動の導入によって突発的な相場変動に対応するのが大きな特徴だ」と胸を張る。

 一部の国内機関投資家の間では、これまで主流だった国内外の株式や国内債券離れが加速している。1つのアセットクラスへの過度な依存を回避する傾向が強まっていることから、伝統資産である株式や債券と相関性が低い、金利上昇リスクに抵抗力があるといった特色のあるさまざまなアセットクラス、運用手法を選別する動きが広まっていくのではないだろうか。