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J-MONEY2013年夏号 注目記事

グローバル・キャッシュ・マネジメント

「問題の顕在化」と「ニーズの見極め」が重要 中堅・中小企業向けのサービスに期待

グローバル・キャッシュ・マネジメント(GCM)への関心が高まっている。日本企業のGCMへの取り組みと課題、金融機関が提供するサービスの現状について、関係者に話を聞いた。(杉浦直洋)

国内のCMSサービスは利用
海外まで含めた利用は限定的

 日本企業の海外進出が活発化する中で、グループ全体での効率的な資金管理の実行は、企業にとって重要な経営課題のひとつだ。最近は新聞や雑誌でGCMに関する記事を目にする機会が増えており、GCMへの関心が高まっていることがうかがえる。

 しかし、実際にGCMの導入に至っている企業は多くはない。J-MONEYでは2013年4~5月にキャッシュ・マネジメント・サービス(CMS)の利用状況に関するアンケート調査を実施した。回答を得た92社のうち、国内でのCMSは約3分の2の企業がすでに導入しているが、海外でのCMSを利用している企業は限られている。

 調査では、国内のCMSではみずほ銀行のシステムが最もよく利用されているという結果が出た。主に国内のCMSに携わっているみずほ銀行の升水徳次氏は、同行が支持される理由として「国内での資金管理のニーズは10年以上前からあり、現在も企業にとって重要な経営課題だ。みずほ銀行は早くから専門のアドバイザリースタッフを付け、CMSを機能させるために社内体制の整備を支援するなど、顧客に対して一歩踏み込んだサービスを提供してきた」と説明する。

新興国への進出で多様なCMSニーズが高まる

 かつて外資系の事業会社で財務を担当していたデロイト トーマツ コンサルティングの伊藤薫氏は「海外でキャッシュプーリングを導入していないという結果の裏側で、海外でのプーリングに関する相談は増えている。海外事業の拡大に伴い、効率的なキャッシュ・マネジメントを検討しなくてはならない段階に来ているという印象だ」と話す。

 キャッシュプーリングとは、大きく分けてノーショナルとフィジカルがあり、基本的にはグループ内の資金余剰・不足をグループ間貸借にて流動性を外部に頼らず担保する仕組みである。日本を含めたそれぞれの国においてのプーリングは行われているものの、国境を越えてのプーリングとなると、規制、税務上の観点から、理想的な体系を構築するのは非常に困難な状況である。

 三菱東京UFJ銀行のトランザクションバンキング部長、石垣夢作氏は「日本企業のビジネスの領域は広がっており、ラオスやカンボジア、ミャンマーといった国にも進出している。高まるリスクヘッジのニーズに対して、銀行がヘッジスキームを提供するのは意義がある」と語る。

 海外進出が拡大する中、グループ企業間での取引も増加する。グループ企業間取引は対外取引とは違い、ネッティング等によりプロセスを簡略化し、リスクやコストを削減することを検討する余地があるとデロイトの伊藤氏は言う。「海外進出が進んだ現在、バラバラになっている商流・資金流を簡易化するための見直しの余地は多い」

求めている他社事例
導入前に基本的ルールづくり

 現状でGCMの導入が進まない原因として、先進国の低い金利が挙げられる。三菱東京UFJ銀行の石垣氏は「過剰な流動性により、日本の上場企業の約半数が実質無借金。低金利環境下では企業にとって資金効率化によるコスト削減効果が見込めない」と話す。

 リーマン・ショック直後の流動性が枯渇しているときは、目先の資金繰りが最優先事項のひとつだったため、キャッシュ・マネジメントの重要性は高かった。今もGCMに対する関心こそ高いものの、事業の拡大に伴う資金管理の効率化であり、GCMが必須というわけではないので、優先順位が低くなっているのが現状だ。

 みずほ銀行の松谷英明氏は「他社の事例を紹介してほしいという依頼を数多く受けている。海外子会社の資金管理に対して問題意識はあるものの、何から手をつけていいか迷っている企業が多いようだ。そうした企業と対話をしながら、問題の顕在化に取り組む事例が増えている」と企業の動向を説明する。

 国内外の金融機関がGCMのサービスを強化する中で、企業はサービスを見極める目を持つべきだと、デロイトの日置圭介氏は言う。「企業は自分たちのニーズがどこにあるかをきちんと分析し、取引する銀行に対してそのニーズに合ったソリューションを提案するように働きかけるべきである。他社が導入しているから自分もというような流行で銀行サービスやシステムを導入すると、不必要なサービスにコストを支払うことになる。自社にとってどんなサービスが必要かをきちんと見極めることが大切だ」

 デロイトの近藤泰彦氏はグローバル・ガバナンスの重要性を指摘する。「例えばグループ企業間の決済日を統一するなど、資金管理に関してグループ全体でポリシーを共有しなければ、どんなプロセスを導入しようとも機能しない。GCMを導入し有効に運用するためには、基本的なポリシーを共有する文化をつくる必要がある」

 みずほ銀行の高石功氏は「海外の子会社の資金流把握のため、まず本社による口座モニタリングから開始し、その後プーリング等の資金効率化を自動的に行える仕組みを導入した例がある」と過去の事例について説明する。企業ごとに課題や問題点はさまざまで、問題の解決策としてGCMのシステムが有効に働く場合がある。

身の丈に合ったGCM導入の検討

 海外展開する企業の業態、規模等により、導入すべきGCMは相違する。現状を分析し、費用対効果分析をしたうえで、オペレーション的にも無理のないGCMを構築することが望ましい。

 シティバンク銀行の副島弘行氏は、GCMへの関心がさまざまな企業に広がっている点を指摘する。「数十カ国で事業展開するような多国籍企業では、GCMの導入により年間で何十億円というコストを削減できる例もあり、GCM導入のメリットが大きい。最近では多国籍企業に加えて、数カ国程度で展開する企業もGCMに興味を持ち始めている。また、政府関係の機関や、今までになかった業種の企業など、GCMの利用のすそ野が広がってきている」

 金融機関やソフトウェアメーカーが提供するGCMのシステムを利用しているのは、ほとんどが大企業だ。デロイトの日置氏は「規模の小さい企業が海外へ積極的に進出するのに伴い、安く利用できるCMSへのニーズが高まりつつある。ニーズが今以上に高まってくれば、小規模の企業に向けたGCMシステムが実用化されるだろう」と、GCMがより多くの企業に広がることを期待している。