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J-MONEY2012年夏号 注目記事

東京海上アセットマネジメント投信 代表取締役社長 大場 昭義氏特別インタビュー

いかなるときも価値を生み出す投資対象を見つけてリターンを上げることが運用会社の使命

2008年のリーマン・ショック以降、資産運用ビジネスにとって厳しい環境が続いている。世界経済の構造はどのように変わったのか。成長期待がもてない時代の資産運用のあり方と運用哲学について、東京海上アセットマネジメント投信の大場昭義社長に聞いた。
(聞き手:堀田栄治/取材日:2012年7月5日)

世界の今を読み解く5つの「D」

──金融業界にとって厳しい環境が続いています。世界経済の構造はどう変化しましたか。
大場 世界の構図は5つの「D」で説明することができます。最も大きな変化をもたらしたのが「Demography(人口動態)」。20世紀は先進国を中心に人口が増える成長の世紀でした。現在は先進国の人口が減少し、世界全体では人口爆発という二極化が起きています。その震源地はアジア、中東、アフリカ、中南米。人口動態の変化がすべての構造変化を引き起こしているといっても過言ではありません。

 20世紀には、先進国の人口が減少するとは想定していなかった。従来のような成長を維持するために考え出されたのが金融の膨張でした。サブプライム・ローンなどで需要をつくり出し、成長を維持させようとしたが、無理があった。

 バブルが崩壊し、金融膨張とは逆の「De-leverage(負債圧縮)」の流れが起きています。それが、「Default(債務不履行)」を引き起こし、「Deflation(デフレーション)」の世界をつくりつつある。先進国はいずれも「Deficit(財政赤字)」の状態です。成長を持続させるには、相当大きく仕組みを変えていかないといけないでしょう。

── 5つの「D」に支配された世界で、中間層の減少を懸念されています。
大場 先進国では、生活保護を受けるような低所得層と富裕層へ二極化が進む「Squeezed Middle」(搾り取られる中間層の意味)の状態です。IT化とグローバル化がもたらした結果を放置すべきではないということで、バラク・オバマ大統領も野田佳彦首相も「分厚い中間層の復活」を掲げています。社会が分断されると資本主義や民主主義といった社会基盤が揺らぐからでしょう。

 一方、新興国では毎年、分厚い中間層が生まれつつあります。ある調査によると、インドでは毎年1500万世帯の中間層が生まれているそうです。英国の中間層と同じ数ということですが、グローバル企業にとっては、ここに新しいビジネスチャンスがあります。いずれにせよ、人口動態の変化が社会や資本主義に大きな影響を及ぼしているということです。そうした前提に立って、運用ビジネスも考えていかないといけない。

相場回復には10年以上の覚悟を

──金融膨張を是正するために、新たな金融規制が相次いで適用されます。
大場 金融機関の規制強化を目的として、バーゼルⅢやEUの資本増強規制、ドット・フランク法にもとづくボルカー・ルール(米国)、欧州の金融取引税といった、一連の規制が強化されつつあります。日本でも増資インサイダー取引やAIJによる年金資産消失事件、オリンパスの粉飾決算などを受けて、規制強化の方向に舵が切られています。間違いなく、金融業界は制約を受ける時代に変わりつつあります。

 歴史は繰り返します。米国は、パクス・アメリカーナといわれた1920年代の大成長の後、一転して大恐慌の時代を迎えます。このときも金融機関の行動を徹底して監視し、取り締まりを強化した歴史があります。1930年代には、ディスクローズを徹底させる証券法や銀証分離のグラス・スティーガル法が制定され、米国証券取引委員会(SEC)制度も創設されました。

 私たちに今起きていることは、歴史に学ばなくてはいけない局面でもあります。一つは、大恐慌からマーケットはいつ回復したのか。もう一つは、この時代に証券投資はどのように考えられていたのか。これら2つを考えることで、今なすべきことのヒントにつながります。

 1929年の大暴落から高値を取り戻したのは1954年です。日本は「失われた20年」ともいわれますが、大きなバブルがはじけると、そう簡単には戻らないことを示唆しています。今回の先進国が抱えた債務はあまりにも巨額です。これほど巨額化した債務が経済の不確実性を高めているのは経済史上も過去に例がないともいわれています。

失われた20年にも投資家にリターン

──資産運用ビジネスにとっては、当面、厳しい状況が続くということですか。
大場 必ずしも悲観的になることはありません。ブレイクスルーにはイノベーションが必要です。たとえばシェールガス(泥岩に含まれる天然ガス)をはじめとするエネルギー革命や発電、節電、蓄電などの分野でイノベーションが起こり、新たな産業が生まれる可能性があります。

 忘れてならないことは、失われた20年の間も投資家にリターンをもたらした企業が東証一部だけで約100社あるという事実です。こうした企業の特徴は、独自の技術やサービスをもち、価格競争に持ち込まれないビジネスを手がけていることがあげられます。私たちはそうした企業を選択していくために、今まで以上に研鑽を積まなくてはなりません。運用会社としての使命は、いかなるときも価値を生み出すところに投資してリターンを得ることですから。

── 一方の「この時代の証券投資」についてはいかがですか。
大場 ベンジャミン・グレアムの教訓が一つのヒントでもあります。株式投資には財務分析が必要であると説いた『証券分析』はその後、証券アナリスト制度の嚆矢(こうし)にもなっています。成長期待がないなか、株式投資で成果を上げるための条件を探ったわけです。こうした考え方もヒントを提供してくれているのではないでしょうか。

「メガソーラー」や「エンゲージメント」も

──メガソーラー(大規模太陽光発電所)ファンドの立ち上げが注目を集めています。
大場 成長を持続させることは20世紀よりもハードルが高いかもしれません。このような状況下でも投資家にリターンをもたらすには、運用会社も新しいチャレンジをしていかないといけない。メガソーラーファンドは投資対象の拡大という点で新たなチャレンジです。

 今年7月にはじまった「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」を活用し、年金基金や機関投資家向けに、全国10カ所以上の発電設備に分散投資し、IRR(内部収益率)=5%以上を目標とする投資商品です。日射量の変動や自然災害リスクはあるものの、景気動向に左右されない、まさしくオルタナティブ商品であり、投資対象の分散に役立てることを期待しています。

 今までインフラ投資といえば、海外への投資しかありませんでしたが、国内版のインフラ投資には為替リスクがありません。弊社では今回のメガソーラーファンドを第一歩に、多様な国内インフラ商品に取り組みたいと考えています。

── 従来型の資産クラスでは、日本株を対象にした「エンゲージメント・ファンド」も新しい試みといえそうです。
大場 投資先企業の経営陣との積極的な対話を通じて企業価値向上を目指すもので、国内の中小型企業を主な投資対象とし、集中投資を通じてさまざまな提言を行っていきます。国内の上場企業約3600社のうち、国内外のアナリストがカバーしている企業は800社程度です。誰も見ていない企業のなかにもきちんと調べれば、少し軌道修正するだけで、企業価値が向上する企業はたくさんあります。

 経営陣と対立するアクティビストではなく、日本的アプローチで対話を行い、経営者と「Win-Win」の関係を目指します。スウェーデンの公的年金からも資金を受託するなど、手応えを感じています。

 大切なことは原点に立ち返ること。歴史に学びながら、お客様のために新しい挑戦を継続することです。