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アセットアロケーションとは?

J-MONEY2011年秋号 注目記事

機関投資家のポートフォリオ戦略

次なる金融危機に備えたリスク量配分型
アセットアロケーションとは?

欧州債務問題に端を発した危機が起きるのではないかとの懸念があるなか、機関投資家にとっていかにダウンサイドリスクを抑えたポートフォリオを構築するかが喫緊の課題となっている。すべてのリスク資産が同時に下がる傾向にある状況で、果たして理想のポートフォリオはあるのか。分散効果を発揮できる新たなアセットクラスとは──。関係者に話を聞いた。(笠原崇寛)

金額ベースではなくリスク別の資産配分

 「オルタナティブ投資を含め12のアセットクラスに分散投資しても、リスクは株式的性質のものが6割で、債券的性質のものが4割。リスク分散しているようで、実際にはリスクが偏っているため、危機が起きれば分散効果が発揮できないポートフォリオになってしまっている」(ブラックロック・ジャパンの運用部門グローバル資産戦略運用部長、藤田明成氏)

 ダウンサイドリスクはできるだけ負いたくない。次なる危機に直面しても、2008年の金融危機の二の舞は避けたい。そこでオルタナティブ・アセットや新たな戦略を導入してきたが、いまひとつ分散効果が実感できない。そう悩む投資家は多いのではないか。

 その答えが図表1だ。伝統4資産(国内外の株式・債券)に投資を行っていた1980年に比べて、2010年のポートフォリオはアセットクラスの数は増えている(米国の例)。しかしリスクを分解してみると、1980年のポートフォリオと大きくは変わらない。リスクは大して分散されていなかったのだ。

 そこで今、アセットアロケーションの新潮流として注目されているのが「リスクプレミアム分散型のマルチアセット運用」だ。一見、従来のポートフォリオ戦略と変わらず、さまざまな資産に分散投資するバランス型運用と変わらない印象だが、資産配分の仕方が根本的に違う。金額ベースではなく、リスク量の分散を考えて配分比率を決定する。

 マルチアセット運用では、各資産ごとにリスクを分解する。例えば、マルチアセット運用を提供するシュローダー証券投信投資顧問では、図表2のように「流動性」「期間」「インフレ」「クレジット」「株式」などのリスクプレミアムを資産ごとにあてはめる。その上でこれらのリスクプレミアムが最適に分散されるような資産配分を考えたポートフォリオを構築する。すると従来の金額ベースのアセットアロケーションとはまったく異なるポートフォリオができる(図表3)。

 「アセットクラスの相関性が高まっており、2008年の金融危機の際には金(ゴールド)さえ一時急落した。ダウンサイドリスクを軽減するには、資産分散ではなくリスク分散したマルチアセットなポートフォリオが必要だ」とシュローダー証券投信投資顧問のプロダクト推進部株式・マルチアセット担当部長、福澤基哉氏は説明する。

 資産の相関性が高まっているだけでなく、不確実な市場環境が続き、期待リターンが予想しにくい。ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ(SSgA)の専務取締役でチーフ・インベストメント・オフィサーの高山秀樹氏は、「従来の資産配分は期待リターン、標準偏差、相関係数の3つの要素で行っていたが、昨今の市場で期待リターンと相関係数を正確に予想することは不可能に近い。このため当初想定した運用成果とは違った結果が出てしまう。不透明な市場で資産配分を行うには、標準偏差のみでリスクを計り、リスク量に応じた資産配分を行うのも1つの方法だ」と指摘する。SSgAでは、アセットクラスを「グローバル株式」「グローバル債券」「実物資産」の3つに分け、それぞれのリスク量が1:1:1になるような運用戦略を提供している。

 こうしたリスクに基づく資産配分戦略では、配分比率を固定化せず、市場環境によって機動的に配分を変えていくことも大きな特徴だ。従来の硬直的なアセットアロケーションでは乱高下する市場にうまく対応できず、リターンが少ないまま過度なリスクを取り過ぎるといったことになりかねない。

 運用成果は資産配分で9割が決まるとも言われている。しかしその配分の仕方がアセットクラス別の金額ベースで、かつ1年に1度のリバランスや配分の見直しでは分散効果は期待しにくい。まして一度危機が起きるとそれでポートフォリオが回復不能なまでに大きくやられてしまう。資産配分の方法論を根本的に転換する時代がやってきたといえそうだ。

 欧米ではこのようなリスクプレミアム分散型のマルチアセット運用にかなりの金額を託す投資家もいる。日本ではまだ一般的ではないが、不確実性の高まる市場環境下において、よりバランスよく市場のリスクプレミアムを獲得する手段として今後注目を浴びてゆくことが期待される。

流動性・透明性に優れたETFをポートフォリオに活用

 マルチアセット運用以外でダウンサイドリスクを減らすことが期待できる新たな商品がいくつかある。

 2008年のリーマン・ショックで大きな問題となったのは流動性リスクだ。マルチアセットでもさまざまな資産で流動性リスクがついて回る。流動性リスクが相対的に低く、透明性がある商品として注目されているのがETF(上場投資信託)だ。

 ETFのメリットは、①流動性が高い②透明性が高い③運用コストが低い④商品ラインナップが幅広い、といった点にある。2000年に登場して以来、右肩上がりで規模が拡大し、2011年8月現在の米国ETF市場は1兆3661億ドルに達し、銘柄数は2867本にのぼる。ETN(指数連動証券)などETFに似た関連商品も含めると約4000銘柄を超える。

 機関投資家はどのようにETFを活用すればよいのか。ブラックロック・ジャパンの営業部門ⅰシェアーズ事業部長、藤川克己氏は、「ETFをインデックスファンドとして、コアポートフォリオの構築に活用する方法もあれば、市場環境に合わせてETFを適宜取り入れ、ポートフォリオの機動的なリスク管理に利用するといった使い方もある。また運用会社がETFの流動性・多様性を活用し、運用商品組成のパーツとして使う方法もある」と語る。

 また、ポートフォリオのバランスを細かく調整する活用方法もある。「セクター別、国別など細かな分類で銘柄があるため、『石油だけをロングしたい』『金融関連株だけショートしたい』『中国だけロングしたい』といった希望にも沿うことができる」(藤川氏)

 日本では金ETFにとくに注目が集まっているが、目まぐるしく変わる市場環境に合わせてポートフォリオを調整する有効なツールとして他のETFもうまく活用できるとよいだろう。

株式と逆相関のVIX指数に注目集まる

 ETFに似た商品特性を持つETNが2011年から東京証券取引所に上場され、投資家の選択肢はさらに増えた。ETNはETFと違ってファンドでないため、裏付け資産を保有・運用する必要がない。

 発行体の信用リスクを負うが、ETFに比べて指数と基準価格とのトラッキングエラーが少なく、かつさまざまな商品が簡単に組成できることから米国などで近年、発行が相次いでいる。

 日本で人気となっているのは “恐怖指数”とも呼ばれるVIX(ボラティリティ・インデックス)指数のETNだ。投資家心理を表すため、株式市場が下がった際に上がる可能性が高く、株式と逆相関になる貴重な商品として投資家の関心を集まっている(図表5)。バークレイズ・キャピタル証券のマネージング・ディレクター、インベスター・ソリューション本部長、石橋泰寛氏によると、東証に上場されているETNを活用すればアジア時間でVIX先物指数連動商品を取引できることから、中国やシンガポールなどの投資家からの問い合わせも多いという。ダウンサイドリスクをヘッジするには最適な商品だが、指数のそのもののボラティリティもかなり高い。

 石橋氏は「VIX先物指数だけでなく、穀物先物指数のETNなど、コモディティ関連のETNはインフレリスクヘッジに最適な商品なのでぜひ活用いただきたい」と話す。

マーケットリスクから離れたリターン特性のあるPE

 ダウンサイドリスクを懸念するあまり、リスクも低いがリターンが低い商品ばかりでポートフォリオを形成すると、目標リターンに到底届かなくなる。市場の乱高下の影響が比較的少なく、高いリターンが期待できる商品として注目されているのがPE(プライベート・エクイティ)だ。

 PEにおいて中心的なバイアウトについては、最近ではリーマン・ショック後の淘汰を乗り越えたバイアウトファンドによる買収案件が増えている。

 このような環境下、PEの総合投資会社である中央三井キャピタルでは、エクイティリターンを狙うファンドオブファンズとリスクが抑えられたメザニンファンドなどの運営に取り組んでいる。

 バイアウトファンドが企業を買収する際、シニアローンに加えメザニンファイナンスを活用するケースがある。中央三井キャピタルでは、安定的なキャッシュフローに依拠した案件に対するメザニン投資に取り組んでいる。

 中央三井キャピタルの常務取締役、石井誠氏は「メザニンには、コベナンツの設計によりリスクをコントロールすることができる妙味がある。メザニンファンドの場合、利息・配当収入などのインカムゲインを獲得できることから、Jカーブ効果が発生しにくい点も特徴である。マーケットリスクから離れた投資で高いリターンを期待できる数少ないアセットクラスである。また、投資家がエクイティリターンを追求するファンドオブファンズとメザニンファンドを組み合わせて投資することも、PE投資においては有効である」と説明する。

新たなポートフォリオ戦略を

 2008年の金融危機の教訓は、投資資産を分散しているようでリスクは分散されておらず、相関性の高いアセットクラスにばかり投資していたことだった。市場の乱高下が激しく、リーマン・ショック、ギリシャ・ショック、欧州ソブリン危機、米国債危機など、多くの資産が同時下落する事態が多発しやすい環境の今、従来の方法とは違った資産配分の仕方、商品の活用を考えるべき時期ではないか。危機を想定外と捉えず、平時のうちに真のリスク分散を行える新たなアセットアロケーション戦略を検討した方がよさそうだ。