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J-MONEY2011年夏号 注目記事

グローバルFXポール

ドイツ銀行が7年連続1位

世界の外国為替市場では、電子取引の重要性が増している。2011年ユーロマネーFX調査では、上位3行による外国為替市場の独占が第2集団の追随によって脅かされていることが明らかになった。競争は自社開発の取引プラットフォームに顧客を誘い入れる場面に限らない。顧客の要求が多岐にわたるなかで、マルチディーラー型プラットフォームが台頭しつつある。(トム・オズボーン)
ユーロマネー英語版2011年5月号より抄訳

トップ集団を脅かす第2集団のシェア伸びる

 ドイツ銀行は、グローバル市場シェアに基づくFX総合ランキングで7年連続首位を達成した。2位はバークレイズ・キャピタル(2010年3位)、3位はUBS(同2位)だった。先頭集団の3行とシティグループ、JPモルガン、HSBCからなる第2集団の差は縮小傾向にある。

 以前は一部の上位行だけが市場シェアを伸ばす傾向にあったが、その流れは2010年から変わり始め、4~6位の第2集団のシェアは2011年も伸びた。上位3行の2011年のグローバル市場シェアは36.98%で、前年の40.44%を下回った。第2集団のシェアは前年の20.55%から21.57%へと増えた。

 ちなみに、上位10行のシェアは合わせて約77%で、2010年とほぼ同じだった。6位から10位までに入った金融機関に限ってみると、合計シェアは22.54%から25.03%に伸びた。上位10行のなかで市場シェアを最も著しく増やしたところはHSBCで、2010年の4.55%から6.26%となった。それに続いたのが、7.69%から8.88%に増やしたシティグループだった。

 2011年FX調査への回答数は前年比11.4%増の1万3039件に達し、5年前の回答数6101件の2.1倍となった。回答数の増加は、ユーロマネーFX調査の重要性についての市場参加者の認識が高まっていることを示唆するものと思われる。

 電子取引のボリュームは前年比で25%も増加し、FX取引全体に占める割合は56%を超えた。ドイツ銀行、バークレイズ、UBSの上位3行の電子取引プラットフォームの合計シェアが58%から41%に大幅に減少したのに対して、4位から10位までの金融機関のシェアは27.62%から41.04%に激増した。電子取引で先行した金融機関の優位性は、市場の大方の見方に反して、それほど確固たるものではないことが明らかになった。

 11位以下の金融機関にも大きく躍進したところがある。引き続きシェアを伸ばしている野村證券は、4ランクアップして14位に入った。他の日本勢も同様の健闘を見せた。三菱UFJフィナンシャル・グループは3ランクアップ上昇して19位、みずほフィナンシャルグループは11ランクアップ躍進して23位となった。

 2010年調査で上位3行だったドイツ銀行、UBS、バークレイズ・キャピタルの市場シェアは、第2集団の3行であるシティ、JPモルガン、HSBCによる追い上げを受け、それぞれ縮小した。このシェアの変化は、前年から25%も増大した電子取引執行の利用の拡大と重なる。

 第2集団3行は、業界トップを行くドイツ銀行のAutobahn(アウトバーン)やバークレイズのBARX(バークス)に匹敵する電子執行プラットフォームの改良版を開発すると顧客に約束してきた。今回の調査結果はその約束が実行されつつあることを示している。

 注目すべき点はそれだけではない。まず上位6行のすべてが新たなプラットフォームを顧客に提供したわけではない。顧客はマルチディーラー型プラットフォーム(MDP)での取引をさらに好む傾向にある。取引量ではシングルディーラー型プラットフォームの方が依然としてマルチディーラー型プラットフォームを上回っている。

 しかし、新たに検討されている市場規制に照らし合わせると、マルチディーラー型プラットフォームの方がスワップ注文執行ファシリティ(SEF)としてふさしいと判断される可能性が高いために、マルチディーラー型プラットフォームがより好まれそうだ。2011年の調査結果からは、マルチディーラー型プラットフォームの人気の高まりと、それを受けて銀行が顧客の要望に応じたプライシング提示の改善を進めていることがわかる。その結果、流動性が高まり、より競争力のあるプライシングの実現につながっている。

マルチディーラー型
プラットフォームのシェアは20%に

 アネロ・アセット・マネジメント(ロンドン)のパートナーであるマーク・ヒューレット氏は、マルチディーラー型プラットフォームを評価する1人で、次のように語った。

「マルチディーラー型プラットフォームと比べると、他のプラットフォームでは優れたプライシングを得ることはできない。『どんなご要望にも応じます』という(シングルディーラー型プラットフォームを扱う)銀行はいくつもあったが、約束を実行できた銀行にはお目にかかったことがない」

 それでもヒューレット氏は、マルチディーラー型プラットフォームにも落とし穴はあると付け加えた。例えば電話でのブローキングサービスがないため、価格のスリッページ(注文価格と取引成立価格の差)が起きうる。ただし、同氏によると、スリッページは米国市場の繁忙期や最も活発な取引時間帯には大きな問題にはならないという。ユーロマネーが他のバイサイド関係者たちに取材したところでは、現在ほとんどのプラットフォームは少数第5位までのプライシング提示を基準としている。

 HotspotFX(ロンドン)のセールス統括責任者デーブ・セラーズ氏は、マルチディーラー型プラットフォームでのプライシング提示は進化を続け、今では広範に及んでいるとして、次のように語った。

「以前、すべてのマルチディーラー型プラットフォームにプライシングを提示する銀行はなかった。せいぜい2つか3つを対象にしていた。その数が今では4つ、5つ、6つへと拡大している。これによって、銀行自身の取引の多様化が可能になった」

 一部の銀行にとっては、プライシング提示先の拡大は、既存のプラットフォームのアップグレードを図って、FX市場の上位陣のプラットフォームに対抗すると同時に、新たな流動性の源を確保するための戦術だった。

「顧客を別のプラットフォームに乗り換えらせるには、シングルディーラー型よりマルチディーラー型の方がてっとり早く、多くの顧客とのつながりも実現可能だ。顧客が電話してきて、例えば『そちらはどうしてHotspotFXを利用していないか』と言われれば、名前が挙がったプラットフォームに参加することになるだろう」(ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド=RBS=のFXセールスグローバル担当統括責任者クリス・ロイシュキー氏=取材当時、6月初めに退職)

 しかし、すべての銀行がRBSのように顧客優先というわけではないようだ。

「銀行によっては『うちと取引をしたいのであれば、我々のプラットフォームに接続してほしい』と言ってくるところがある」(ファンドマネジャー)

 2011年調査で、RBSは2010年の5位から7位に後退したが、総合市場シェアはほとんど変っていない。一方、RBSの電子取引シェアはこの1年で取扱高を倍増したため、10位から5位に躍進した。RBSのFXグローバル責任者ティム・キャリントン氏によると、マルチディーラー型プラットフォームは市場できわめて重要な役割を果たしているという。事実、取引量が大きく膨らむ日には、マルチディーラー型プラットフォームにおける最大出来高がシングルディーラー型プラットフォームのそれを上回るのが一般的になってきた「誰もが流動性を求め、その流動性が確実にあることを知りたがる。つまり、誰もが流動性を確保されるところで取引したいと考えているのだ」(キャリントン氏)

 2011年3月、バークレイズ・キャピタルが東日本大震災の後、円のプライシング提示を一時停止したことがあった。バークレイズ側は、単なる定期検査のための一時停止だと説明していたが、あるアセットマネジャーの言葉を借りれば、「そのようなことはマルチディーラー型プラットフォームではありえない」現象だということになる。

 常に流動性が供給されるメリットはどれほど評価しても評価しすぎることはないが、FX市場の上位行は、シングルディーラー型プラットフォームの優位性として、常に顧客のニーズに応える複数のアセットクラスを網羅したコンテンツとプライシングの提示を挙げる。

「バークレイズのFX業務の取引先上位200社を見てみると、その75%は他の4つの商品についても我々と取引関係にある。

そのことは、バークレイズが総合力で優れていることを意味している」(バークレイズのFXセールスグローバル責任者ニック・ホワード氏)

 マルチディーラー型プラットフォームの市場シェアは2007年には7.8%だったが、2011年調査では20%に伸びた。しかし、シングルディーラー型プラットフォームの市場シェアはマルチディーラー型のそれを引き続き大きく上回っている。

 それは電子取引の多くを占める地域レベルの中小金融機関の存在に負うところが大きい。これら中小金融機関の取引量は全体の38%を占め、大規模なプラットフォームの実質的なパートナーとなっている。その多くは、終日、小口の注文執行を可能にする新世代型のアルゴリズムを利用する。これこそがマルチディーラー型プラットフォームが新たなターゲットとして定めている領域である。

 最大のマルチディーラー型プラットフォームであるFXallは、中小規模の金融機関に対して相手先ブランドでプラットフォームを提供するサービス(ホワイトラベル提供)を拡大させている。これらの中小金融機関には、ホワイトラベルを利用して、顧客へのサービス向上を図り、新たな流動性の供給源を確保する狙いがある。

 この1年で市場シェアを倍以上に伸ばしたHotspotFXは、「スポンサードアクセス(sponsoredaccess)」と呼ばれる新サービスの提供を開始した。これはHotspotFXの主要プライムブローカーのうち2社を通して、東欧とアジア地域の金融機関がHotspotFXに直接アクセスできるというものである。

「スポンサードアクセスはプラットフォームへのアクセスを可能にする手っ取り早い方法で、それを利用するプロセスも簡素化された。すでにいくつかの金融機関がスポンサードアクセスを利用しており、このプログラムはきわめてうまく機能している」(HotspotFXのディレクター、ウィリアム・グッドボディ・ジュニア氏)

取引コストの圧縮と取引処理の
効率化が重要な課題に

 しかしながら、大手のバイサイド顧客の一部は、注文執行技術が進歩すればするほどシングルディーラー型プラットフォームが有利になると予想している。

「シェルは、アルゴリズム取引では先行組の1社だと思う。

現在もアルゴリズム取引を増やしている」(シェルの取引執行責任者ポール・ダウニー氏)
 一般的に、アルゴリズム取引では、特定銀行のアルゴリズムから提供されるプライシングに依存して、注文も同じ銀行のプラットフォームで執行される。

 大口法人顧客にとって、アルゴリズム取引は銀行が提供しうる最も優れたサービスではあるものの、そのことでマルチディーラー型プラットフォームの重要性が軽減するわけではない。

「FX取引において、Currenexが重要なプラットフォームであることには変わりない。Currenexでは20の銀行がプライシングを提示している。しかし、当然のことながら、アルゴリズム取引を増大させると、Currenex離れが始まる。そこで、我々は両方を並立的に使いながら、我々の取引戦略を評価して、さまざまな取引環境に対してどちらが優れているのかを判断してみたい」(ダウニー氏)

 洗練されたバイサイド顧客には、メトリックス評価は最良の執行方法を見極めるうえで非常に重要であり、また取引コスト削減の一つの方法にもなる。

「大口プレーヤーにとって、アルゴリズム取引は絶対に価値がある。とくにボラティリティの高い通貨ペアの場合はそうである。しかし、アルゴリズム取引では一貫した取引が欠かせない。決済リポーティングが優れたものであれば、1000分の1秒単位で取引状況が示されるはずだ」(ダウニー氏)

顧客にとって、フロントシステムとバックオフィスの取引コストの圧縮と取引処理の効率化がますます重要な課題になってきた。リアルマネー系(機関投資家)にSWIFTネットワーク経由の直接決済を最初に可能にしたのはFXallだった。SWIFTネットワークにつながることで、リアルマネー系には、途切れることのない自動取引確認が可能となり、バックオフィスによる処理が必要なのは例外的な取引だけになった。

「FXallは我が社に非常に大きな結果をもたらしている。とくに、人手を介さずに発注から決済に至る全プロセスを処理するストレートスループロセッシングでそれは顕著だ。FXallのおかげで、決済リスクを減らしつつ、大口取引が可能になった。プライシングと注文執行も改善されている」(アクサ・インベストメント・マネジャーのFX、フィックストインカム執行責任者リー・サンダース氏)

 FXallは、独立系FXプラットフォーム部門で首位の座を守っている。その一方でブルームバーグの「FXトレーディング」は、2009年には10位から2010年には6位、そして2011年は3位へと猛烈な勢いで追い上げてきた。FXallは、2010年にシティグループからLavaFXを買収したため、市場シェアを30%近くまで伸ばした。バイサイド顧客からドイツの360TreasurySystemsがシェアを大幅に伸ばしているという指摘があったが、360Tの総合順位は5位のまま変わっていない。一方Currenexのシェアは半分以上減少した。HotspotFXは8位から7位に上昇した。

 マルチディーラー型プラットフォームでのスポット出来高は増大しており、バイサイド顧客の利用が増えている。さらに、マルチディーラー型プラットフォームには追い風が吹きつつある。それは、通貨オプションとNDF(ノン・デリバラブル・フォワード)のクリアリングと注文執行を義務づける市場規制の施行が近づいているためである。その影響はすでに現れている。FXallの2011年第1四半期の新興国通貨NDF取引量は、前年比で120%増加した。

 一方、新興国通貨の取引では、シングルディーラー型プラットフォームが依然として一歩先を進んでいる。2011年調査で1位のドイツ銀行と2位のバークレイズ・キャピタルとは、それぞれのシングルディーラー型プラットフォームであるAutobahnとBARXでオフショア人民元のスポット、フォワード、オプションのすべてについて取り扱いを開始した。当面は、有力銀行のシングルディーラー型プラットフォームは資金力の点からも競争優位を維持していくだろう。

 マルチディーラー型プラットフォームのいくつかは、NDFと通貨オプションのプライシングを提示するスワップ注文執行ファシリティ(SEF)になるべく、準備を進めている。これは新たに大きな機会を提供することになるだろう。というのも、銀行は将来、これら商品を自らのシングルディーラー型プラットフォームで取引したり、銀行間で取引したりすることができなくなるからである。

「SEFになるために必要となりそうな項目の多くにチェック印を入れているところだ。売買注文管理機能と、マーケットメーカーのプライシング提示の対象外になっている取引についての『リクエストフォークオート』(RFQ)を導入しているプラットフォームは少ない。FXallはその一つである。我々は、すでにNDFについてRFQを採用しているので、規制を先取りする形での売り込みをかけるにはよい位置にいると思う。通貨オプションについては、緊急な対応を迫られている顧客と銀行が、これらの問題の早期解決で我が社の協力を真剣に期待していることを認識している」(FXallの欧州統括責任者マーク・ウォームス氏)

 FX市場関係者は、この市場は規制されるべきではないと規制当局に強く申し入れてきた。しかし、金融市場のいたるところに拡散しつつあるマルチディーラー型プラットフォームの重要性が規制のおかげで増している事実を無視することはできない。

 FX市場はプライシング提示において、マルチディーラー型とシングルディーラー型に二分した状態をいつまで続けるのであろうか。Hotspotのグッドボディ氏は「市場が二分されたままでも問題はないかもしれないが、顧客サイド、特に一部の顧客は市場の一元化を望んでいる」と語る。

それには時間がかかるだろうが、アラジンは魔法のランプからすでに抜け出している。