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ユーロマネー日本語版2011年冬号 注目記事

Japan deals of the year

ジャパン・ディール・オブ・ザ・イヤー2010

2010年のディールから、ユーロマネー日本語版がベスト・ディールを決定する「ディール・オブ・ザ・イヤー」。受賞対象ディールは、金額規模や執行業務の鮮やかさ、資本市場に与えた影響、執行後のパフォーマンスといった点を基準に選考した。
(ユーロマネー日本語版編集部 ※データの出所:ディール・ロジック)

M&A部門

ベストM&Aディール(OUT-IN)

プルデンシャル・ファイナンシャルによるAIGスター生命とAIGエジソン生命の買収

 2010年は欧州危機の発生で、海外の事業会社やファンドが打撃を受けたため、外国企業による日本企業の大規模なM&Aは前年と比較して伸びなかった。そうした状況のなかで、買収金額が10億ドルを超えた唯一の案件が、米金融機関プルデンシャル・ファイナンシャルによる米AIGの生保子会社2社の買収であった。

 米国最大手の保険会社であるAIGは、サブプライムローン問題に起因するCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)の支払い義務が集中したことで深刻な経営危機に陥った。AIGはCDSを大量に発行しており、破綻すれば世界の金融市場に甚大な影響を与えるということで、米政府は巨額の公的資金を投入してAIGを救済した。

 AIGには経営再建と債務返済という重い課題が突きつけられた。AIGは日本市場において、AIGスター生命とAIGエジソン生命、アリコジャパンの生保3社を売却し、AIU保険およびアメリカンホーム保険の損保2社に集中することで、事業のスリム化と公的資金返済の財源獲得を目論んだ。

 AIGと同様に日本で生保事業を展開する米保険大手のプルデンシャル・ファイナンシャルにとっては、日本での事業を拡大するチャンスであった。両社の協議は長期間におよび、2009年秋にはいったん売却を取りやめたものの、2010年になって再び協議が進展。AIGは同年9月、AIGスター生命とAIGエジソン生命の全株式を売却することに合意した。売却は2011年第1四半期中に完了する予定だ。これにより、プルデンシャルの生保グループ5社の保険料等収入は国内大手5社に迫り、外資系生保会社としては国内最大手となる。

 AIGはアリコジャパンについても米メットライフへ売却することを決めており、国内の生保市場から完全に撤退する。

 当案件においては資産査定などのプロセスが比較的スムーズに進んだことも、42億ドルという大型案件が成立した要因の一つに数えていいだろう。

ベストM&Aディール(IN-OUT)

アステラス製薬によるOSIファーマシューティカルズの買収

 国内市場の低迷を受け、海外に活路を見出す企業が目立った2010年。円高も追い風となり、IN-OUTのM&Aの件数は482件と過去最高を記録した。

 2009年は飲料メーカーや製薬会社の案件が買収金額の上位を占めたが、2010年はNTT、住友商事、三井物産、資生堂など多様な事業会社が海外での大規模なM&Aに打って出た。そのなかでベストディールに選んだのは、国内第3位の製薬会社アステラス製薬による、米製薬会社OSIファーマシューティカルズの買収案件である。

 アステラスは2009年にも米国のバイオ企業、CVセラピューティクスに非友好的買収を仕掛けたが、失敗に終わっている。同年2月にTOB(株式公開買い付け)を実施したものの、米企業がアステラスの提示した買収額を上回る条件で友好的買収を仕掛けたため、アステラスのTOBは頓挫した。

 OSIの買収においても、当初は1株当たり52ドルというTOB価格が事業価値を正しく反映していないとの理由で、TOBを拒否された。しかしその後、両社が協議を重ね、最終的に買収金額を1株当たり57.5ドルとすることで合意。TOB発表から3カ月後の6月3日に買収が成立した。OSIはがんや糖尿病、肥満といった領域に強く、がん領域を重点事業と位置付けるアステラスにとって、米国におけるがん領域の創製から開発、商業化まで一貫した総合的な事業基盤を手に入れたことは意義が大きいといえる。

 国内の大手製薬会社は、時価総額で海外勢に大きく水を開けられている。アステラスにとっては事業規模拡大と新分野への進出の足掛かりとして、是が非でも成功させたかった案件であろう。9月には武田薬品工業が米国のOrexigen社と、肥満症治療薬の独占的開発・販売契約を締結している。今後も国内の製薬会社による積極的な海外戦略が繰り広げられるだろう。

ベストM&Aディール(IN-IN)

中央三井トラスト・ホールディングスと住友信託銀行の経営統合

 

 2010年に公表されたM&Aのうち、案件規模が最も大きかったのが中央三井トラスト・ホールディングスと住友信託銀行の経営統合だ。邦銀の統合としてはメガバンク3行の成立後では最大の案件であり、信託銀行に限れば史上最大の統合となる。

 両社は2009年11月、株式交換で経営統合を行う方針を固め、2010年8月に最終合意に至った。2011年に持ち株会社「中央三井トラスト・ホールディングス」を「三井住友トラスト・ホールディングス」に商号変更し、同社の株式1.49株を、住友信託銀行の株式1株に対して割り当てる。2012年4月には、持ち株会社傘下の中央三井信託銀行、中央三井アセット信託銀行、住友信託銀行の3行を合併し、新たに「三井住友信託銀行」を設立する予定だ。

 新信託銀行の資産運用残高や資産管理残高は三菱UFJ信託銀行を上回り、国内最大の「メガ信託」が誕生する。三菱UFJ信託やみずほ信託のようにメガバンクの傘下に入ることを選ばず、三井住友フィナンシャルグループとは一定の距離を取りながら、今後は信託銀行だけでなくメガバンクとも対峙していくこととなる。

 統合後は重複店舗の統廃合やシステムの集約化など業務の効率化を進め、2016年3月期の最終利益は2200億円を目指す。 三菱UFJ信託銀行の2010年3月期の最終利益は600億円台、邦銀4位のりそな銀行は900億円台であり、かなり強気な目標といえよう。

 懸念材料は、中央三井信託銀行に投入された2000億円の公的資金だ。返済のためには株価が400円を上回る必要があるが、2011年1月時点では350円前後にとどまっている。統合によるシナジー効果と、メガバンクにはない専門性によって、計画通り収益性を高めていけるかが注目される。

株式部門

ベストIPOディール

第一生命保険

 2009年に引き続き、2010年のIPO市場もふるわず、新規上場社数はわずか22社にとどまった。ITバブル期の2000年の203社に比べて約1/10と過去最低だ。

 株式市場全体も厳しいなかで、世紀のビックディールとして2010年をにぎわせたのが第一生命だ。1998年のNTTドコモ以来の1兆円規模の大型案件であり、かつ、国内最多株主数を誇るNTTを上回り、約137万人の株主を誕生させた。
 
 案件の規模だけでなく、相互会社から株式会社への組織転換という意義も大きい。国内市場が縮小するなか、新たな成長源を求めて海外でのM&Aなどを行うため、市場から直接、資金を調達できる体制を整えた。実際に第一生命は、2010年12月にオーストラリア中堅生命保険会社タワー・オーストラリア・グループの全株式を取得し、完全子会社化することを発表している。

 また、相互会社の株式会社化により、保険契約者ごとの利益への貢献度に合わせて新たに株式を割り当てることになり、消費刺激策になるとの期待も高く、低迷していた市場のなかで明るい話題となった。

 上場日には公開価格を14%強上回る16万円をつけるなど順調なすべり出しを見せた。しかしその後、ギリシャ・ショックにより世界同時株安の様相を呈し始めたため、日本株市場の下落とともに第一生命の株価も低迷。一時、10万円を割る株価まで落ち込んだ。ただ、2010年末から株式市場全体の上昇とともに株価も上昇し、2011年1月時点では公開価格を挟んだ値動きとなっている。

 上場後の株価下落が長く続いたため、IPOへの評価は二分されているが、案件の規模、低迷した市場のなかでの話題性、相互会社からの転換といった意義を考え、2010年のベストIPOディールとした。

 案件規模では第一生命に次ぐ第2位となった大塚ホールディングスへの市場からの期待は高く、ベストディールとの声もあったが、上場からの期間が短かったことから、第一生命とした。

ベスト株式公募・売り出しディール

国際石油開発帝石

 2010年の事業法人による公募増資案件のなかで国内最大の発行額となり、また国内事業法人の公募増資案件としても史上2番目の規模となる大型案件となったのが国際石油開発帝石だ。

 調達資金は、主にオーストラリアの液化天然ガス(LNG)プロジェクトの開発資金に充当予定とされ、今後7年間で総額約4兆円の開発投資を計画しているという。資金使途が明確と評価する声の半面、資金を使うのが当面先であることから、なぜこのタイミングでの公募増資なのかといった疑問の声も上がった。

 また、株式価値の希薄化懸念から、発行決議翌日に株価が12.8%下落するなど、市場からは厳しい見方もあった。ただ条件決定日にかけて買戻しの動きも顕著になった。公募増資による希薄化率35.5%に対し、決議日から条件決定日までの騰落率はマイナス9.6%にとどまっている。

 大型プロジェクト実施のための資金調達という中長期の成長ストーリーについて、きめ細かなマーケティングによって投資家の理解が促され、内外の優良機関投資家からの資金を獲得した。

 他の公募増資案件に比べ、規模の大きさや資金使途の明確さなどから、ベストディールとした。

ベスト株式リンク・ディール

日本電産のCB発行

 2010年9月は、日本電産とユニ・チャームが立て続けにユーロ円建てCBを発行した。いずれも世界で高い市場シェアを有するグローバル企業であり、積極的なM&A戦略によって成長している点も共通している。発行額も日本電産が1000億円、ユニ・チャームが805億円という大型案件だ。

 日本電産は同年8月に、米電機大手エマソン・エレクトリックのモーター事業の買収を発表している。今後もM&Aによる成長戦略の継続を明言しており、9月のCB発行も、さらなる成長を目的とした前向きな資金調達であると投資家は判断。申込額は、調達額の10倍に当たる1兆円に達したという。発行のタイミングをこの時期に決定した判断もすばらしい。欧州市場の金融不安がいくらか改善し、機関投資家の心理がポジティブに働いたことも、多くの投資家を集めた理由として挙げられよう。

 日本電産の株価は、9月から10月にかけてはやや落ち込んだものの、10月後半からは上昇に転じている。12月には三洋電機の小型モーター事業の買収を発表し、「攻め」の姿勢を強めている。

 発行額の大きさだけでなく、発行後の株価などのパフォーマンスの良さにより、日本電産をベストディールに選んだ。

債券部門

ベスト円建てディール

セブン&アイ・ホールディングス

 普通社債市場は、2009年には及ばないものの起債環境が比較的良好であったことから、発行総額は9兆5589億円と高水準となった。発行社数は2009年を36社上回り、180社となった。社債発行企業のすそ野も広く、大和ハウス工業や森ビルなど、初めて社債発行を行う企業や、低格付け企業の案件も目についた。

 総じて起債環境が良好であった2010年のなかで、欧州の財政問題の再燃を受けたやや軟調な環境での登場となったのがセブン&アイ・ホールディングスだ。株安、債券高が進行し、金利低下に伴う利益確定売りも多い募集環境で、5年債300億円、7年債200億円、10年債600億円の償還期限が異なる3本に分けることで多様な投資家の参加を促し、事業会社の機関投資家向け案件では、2010年で2番目に大きな発行額となる総額1100億円の起債を行った。

 国債利回りに対するスプレッドは0.14%、0.17%、0.18%となっており、ダブルAの格付けを持つ高い信用力を活かした低コストの資金調達を実現したが、タイトなスプレッドでありながらも、マーケットに即したプライシングを行ったことで、幅広い投資家に販売された。高格付けの小売業の普通社債発行は珍しく、10年債は生命保険会社が金額ベースで21.7%もの割合を占め、当初想定から発行額を大幅に上乗せした。

 調達した資金は、証券化している西武百貨店本店の買戻しに充てる。

ベスト・インターナショナル・ボンド・ディール

日本政策金融公庫(国際協力銀行)

 国際協力銀行は、2010年にグローバル・ドル債を計3回、総額50億ドルを発行した。2009年に発行したグローバル・ドル債の総額55億ドルには及ばないものの、発行総額は三菱東京UFJ銀行や三井住友銀行、野村ホールディングスといった国内金融機関を上回った。

 3回の起債のうち、1月に発行された5年債はクーポンが2.875%、スプレッドはMS(ミッドスワップ)+28bpだった。一方、4月発行の2年2カ月債と、9月発行の5年債はいずれもクーポンが1%台となり、2年2カ月債のスプレッドはMS+17bp、5年債はMS+27bpで2月の5年債よりタイトなスプレッドでの起債に成功したため、4月と9月に発行された2件のグローバル・ドル債をベストディールとした。

 2010年4月の金融市場がギリシャ・ショックによる激しい振幅に見舞われるなかでの、非常に難しい環境だった。国際協力銀行は丁寧なマーケティングを実施したほか、対国債スプレッドを重視する投資家の需要に応える形で、年限を2年2カ月に設定することで良質な投資家の需要を幅広く喚起した。結果的に、ガイダンスの下限であるMS+17bpで条件が決定。欧州回避の流れを受け、アジアの投資家が約半数を占めたが、他方で国際協力銀行がアジアにおける信認を確率している証左といえよう。

 9月には金融不安が一段落したことと、米5年債の利回りが低下したこともあり、グローバル・ドル債の5年債としては過去最大となる15億ドルの起債に踏み切った。1月に発行した5年債より1bpタイトなスプレッドを提示したが、良質な投資家を集めることができ、ガイダンス通りの起債に成功した。

ベスト・サムライ債・ディール

メキシコ合衆国

 欧州危機の影響により欧州での資金調達環境が悪化し、ユーロやドルの信認が相対的に低下したことを受け、サムライ債市場は前年以上に大型の起債が相次いだ。500億円を超える案件の多くは欧州やオセアニアの金融機関による起債だったが、2010年は新興国の政府による起債も目立った。なかでも最大の発行額となったのが、メキシコ政府による私募のサムライ債だった。

 この案件の意義は、2010年4月に国際協力銀行(JBIC)が新たに設定した保証のフレームワーク「GATE」に基づく初の起債だった点である。市場の混乱が続くなかで、JBICは国内の投資家に多様な投資機会を提供するため、新興国によるサムライ債の発行を支援してきた。2009年にはコロンビアやインドネシア、メキシコの各政府が発行したサムライ債に保証を供与している。

 「GATE」はこうした施策をさらに発展させるものであり、今回のメキシコ政府による起債は、サムライ債市場のさらなる活性化に向けた第一歩といえる。

 機関投資家に限定された私募債ではあったが、今回の案件でJBIC保証債を初めて購入した投資家も多く、これまでサムライ債への投資に必ずしも積極的でなかった地銀の参加も目立った。JBICが掲げる「投資家の投資機会拡大」を大いに促進し、市場の拡大並びに市場参加者のすそ野の広がりが具現化した案件となった。

ストラクチャード・ファイナンス部門

ベスト・ストラクチャード・プロダクト

B-CAP1 信託受益権

 2010年の証券化市場で発行額が大きかった案件は、住宅金融公庫などが発行したRMBS(住宅ローン担保証券)、住友生命や日本生命による基金を裏付けとしたABS(資産担保証券)といった、裏付けとなる資産の安全性が比較的高いものに集中した。2010年の国内証券化市場は、金融危機のショックを引きずったままであった。

 厳しい環境のなかで数少ない明るい材料だったのが、リーマン・ショック以降では、リファイナンス目的の発行を除いては初めてとなるCMBS「B-CAP1」が発行されたことだ。背景となったのが、2010年3月の日本リテールファンド投資法人とラサールジャパン投資法人によるJ-REITの合併。このときに売却された不動産18物件を、ケネディクスが組成したファンドが買収する際に、資金調達の一部を、同物件のローン債権を裏付けとするCMBSによって行った。

 J-REITの合併や不動産の売却に絡んだファイナンスでCMBSが活用され、投資家がこれに応えたことは、不動産市場の活性化に向けた明るい兆しといえよう。

 およそ2年ぶりのCMBSということで、組成は慎重に行われた。これまでのCMBSの多くはデフォルトに関する取り決めが不十分であったが、この案件ではデフォルト後の債権回収の仕組みを整理するなど、投資家に配慮された内容となった。

 発行額は80億円と規模そのものは大きくないが、証券化市場や不動産市場にとって非常に意義深い内容だったため、本案件をベストディールに選んだ。